2011天皇賞・春


サドラーズウェルズ王国の残照

 1990年代から2000年代はじめにかけて欧州の生産界に君臨した大種牡馬サドラーズウェルズが4月26日に世を去った。サドラーズウェルズは1990年、1992年から2004年まで英愛チャンピオンサイアーとなること14回。デインヒルUSAにその座を譲った2005年からは母の父として現在までランキングの首位を守っている。わが国でも娘の産駒の活躍によって高いアーニングインデックスを誇り、ブルードメアサイアーランキングでは2005年7位、2009年7位、2010年8位(JBIS発表、サラ総合)と数の劣勢をはね返してベスト10入りしている。そのサドラーズウェルズの娘の産駒のG1勝ち馬一覧が下表。活躍の場は幅広いが、マイルのクラシックでの強さ、2400mでの強さが目立つ。いずれも欧州競馬の根幹といえるカテゴリーで、そこでの好成績は基礎的な走力に優れていることを示している。超長距離でもカドラン賞G1のリーフスケープ、セントレジャーG1のコンデュイットIRE、そして先週豪州でシドニーCG1を制したスタンドトゥゲインまで3頭のG1勝ち馬が出た。意外に少ないようでもあるが、超長距離戦そのものが少ないし、この分野ではガリレオ産駒などサドラーズウェルズ直系が強いという状況もある。十分な実績を残していると考えていいだろう。


サドラーズウェルズ(1981〜2011)母の父としての偉業
馬名産地生年G1級勝ち鞍
フサイチコンコルド1993mCaerleon東京優駿
Medaalyメダーリー1994mHighest HonorレーシングポストT
Helloハロー1994hLycius伊グランクリテリウム
Dark Moondancerダークムーンダンサー1995mAnshanガネー賞、ミラノ大賞
エルコンドルパサーUSAEl Condor Pasa1995mKingmamboジャパンC、サンクルー大賞、NHKマイルC
Silicシリック1995mSilleryブリーダーズCマイル
ディクタットGBDiktat1995mウォーニングGBスプリントC、モーリスドギース賞
Sumatiズマティ1996hウォーニングGBジョッキークラブ大賞
Sakheeサキー1997mBahri凱旋門賞、インターナショナルS
メイボールGBMay Ball1997fCadeaux Genereuxモーリスドギース賞
Morshdiモルシュディ1998hSlip Anchorバーデン大賞、伊ダービー
Musical Chimesミュージカルチャイムズ2000fIn Excess仏1000ギニー、ジョンC.マビーH
ヘヴンリーロマンス2000fサンデーサイレンスUSA天皇賞(秋)
American Postアメリカンポスト2001mBering仏2000ギニー、J-L.ラガルデール賞、レーシングポストT
Reefscapeリーフスケープ2001hLinamixカドラン賞
Whipperウィッパー2001mMiesque's Sonジャックルマロワ賞、モーリスドギース賞、モルニ賞
Verbena Rakヴェルベナラク2001fMubarakエンリケアセバル大賞
Divine Proportionsディヴァインプロポーションズ2002fKingmamboアスタルテ賞、仏オークス、仏1000ギニーなど5勝
Virginia Watersヴァージニアウォーターズ2002fKingmambo英1000ギニー、愛1000ギニー
Laverockラヴァロック2002mOctagonalイスパーン賞、ジョッキークラブ大賞
Bad Girl Runsバッドガールランズ2002fWestern Winter喜望峰フィリーズギニー、喜望峰パドックS
Serenade Roseセレナーデローズ2002fストラヴィンスキーUSAAJCオークス、VRCオークス、アローフィールドスタッドS
シーザリオCesario2002fスペシャルウィークアメリカンオークス、優駿牝馬
Grand Couturierグランクチュリエ2003mGrand Lodgeソードダンサー招待S2回、J.H.ターフクラシック招待S
Youmzainユームザイン2003mSinndarサンクルー大賞、ヨーロッパ賞
Horatio Nelsonホレーショネルソン2003mデインヒルUSAジャンリュックラガルデール賞
Passage of Timeパシッジオブタイム2004fDansiliクリテリウムドサンクルー
Creachadoirクラカドー2004mKing's BestロッキンジS
Peeping Fawnピーピングフォーン2004fデインヒルUSAヨークシャーオークス、ナッソーS、愛オークスなど4勝
Music Noteミュージックノート2005fA.P. IndyベルデームS、バレリーナS、CCAオークスなど5勝
コンデュイットIREConduit2005mDalakhani“キングジョージ”、BCターフ2回、英セントレジャー
Chinese Whiteチャイニーズホワイト2005fDalakhaniプリティポリーS
Ibn Khaldunイブンハルドゥーン2005mDubai DestinationレーシングポストT
Henrythnavigatorヘンリーザナヴィゲーター2005mKingmamboサセックスS、英2000ギニー、愛2000ギニーなど4勝
Campanologistキャンパノロジスト2005mKingmamboドイツ賞、ラインラントポカル
Thewayyouareザウェイユーアー2005mKingmamboクリテリウムアンテルナシオナル
Midshipsミッドシップス2005mMizzen MastC.ウィッティングハム記念H
Stand to Gainスタンドトゥゲイン2006hHawk WingシドニーC
アンライバルド2006mネオユニヴァース皐月賞
Workforceワークフォース2007mKing's Best凱旋門賞、英ダービー
Beethovenベートーヴェン2007mOratorioデューハーストS
Pathforkパスフォーク2008mDistorted Humor愛ナショナルS

 今回、サドラーズウェルズの娘の産駒は2頭が出走。ジャミールは父が先週の皐月賞G1とフローラSG2を制して勢いに乗るステイゴールド。3歳世代がこれまでのステイゴールド産駒の常識を覆す大活躍を収めているのと対照的に、こちらは5歳を迎えて重賞未勝利と、むしろ父の蹄跡により忠実だといえる。祖母は12FのリブルスデールS英G2で3着、祖母の父は1969年のアスコットゴールドCと凱旋門賞の勝ち馬、3代母は14Fの愛セントレジャーG1に勝っているから、長距離適性の高さは間違いのないところ。

 キングズベスト×サドラーズウェルズのコスモメドウIREはより欧州的な血統で、マイルのG1勝ち馬クラカドー、昨年の凱旋門賞G1でナカヤマフェスタを封じたワークフォースがこのパターン。これはエルコンドルパサーUSA以降続々と現れたキングマンボ×サドラーズウェルズの配合の発展形と考えていい。伯父のミレナリーは2000年の英セントレジャー馬で、3代母の曾孫にはコンデュイットIREがいて長距離に実績があり、更に遡れば名牝サンプリンセス、その子孫のフサイチコンコルドやアンライバルドが出る名門サニーヴァレー系。

 キングマンボとサドラーズウェルズの相性の良さを考えると、キングカメハメハもサドラーズウェルズとの配合で成功しそうだが、今のところ大成功しているのはサンデーサイレンスUSA牝馬との配合。▲トゥザグローリーは母がドバイワールドCG1で2着しエリザベス女王杯に勝った名牝トゥザヴィクトリー。2001年の有馬記念ではマンハッタンカフェとアメリカンボスに最後に交わされたが、ゴール直前まで粘ったのはスタミナの裏付けがあればこそ。息子も初距離を不安視する必要はなさそうだ。

 同じ父と母の父のローズキングダムは4歳世代の菊花賞G1最先着馬。朝日杯FSG1の後、G1では実は一度も先頭でゴールしていない。そのあたりを“バラ一族”の呪縛ととるか、それでもジャパンCのタイトルを手に入れたのだから呪縛からは解放されたととるか微妙なところではある。

 ジャングルポケット産駒はオウケンブルースリの菊花賞に加え、昨年のこのレースの勝ち馬ジャガーメイル、エリザベス女王杯G1のクィーンスプマンテなど京都の大レースで強い。復活があるかも。

 ジェントゥーFRはリアルシャダイUSAやブライアンズタイムUSAと同じロベルト系で日本の長距離戦に合う父系。牝系は4代母の孫に1996年の勝ち馬サクラローレルがいる。1990年代回顧型の配合といえる。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2011.5.1
©Keiba Book