2010NHKマイルC


キングマンボ・キングマイル

 英2000ギニーG1と英ダービーG1の連勝は1989年のナシュワン以降長く途絶えていて、近年は2000ギニー馬がダービーに出ることさえまれだった。トリプルクラウンどころかダブルも今どきもうはやらないのかというところに、昨年はシーザスターズが両レースを連勝。やはり、それなりの資質を備えた者がいれば、1600mと2400mの頂点は踏破を挑む価値のある高峰といえるのだろう。NHKマイルCと日本ダービーにもそういった価値は認められていて、予告ホームラン的にこれに挑んだ松田国師がクロフネUSA、タニノギムレットのニアミスを経て、キングカメハメハによって初めての成功をみた。その後は一昨年のディープスカイも成功し、皐月賞→ダービーとは別の路線が確立したようだ。ということは、次にダービーに勝ちそうな馬を選ぶのがこのレース攻略の近道となるわけだが、実際にはダービー直前でもどれが勝つか分からないのだから、近道のようで近道ではない。いえることは、勝ち馬がその後ダービーやジャパンC、ジャパンCダートに勝つ例はあっても、同じ舞台の安田記念に勝った例はないということ。これが3歳のこの時期の東京1600mの特異性といえるかもしれない。要するに、ちょっと長目の距離適性、軽いスピードよりも馬力にシフトした血統を狙うのが良い。
 そこで浮上するのがダイワバーバリアン。父マンハッタンカフェは菊花賞馬でありながら、中距離を中心に短距離から長距離まで産駒の傾向は多様。実際に昨年の勝ち馬ジョーカプチーノも父の産駒で、代表産駒レッドディザイアは1600mから2400mまで対応するだけでなく、日本馬として初めてオールウェザーの重賞にも勝つという順応性の高さを示した。基本的にスピードがあって、能力の高い者は距離延長にも耐えるという種牡馬としては理想的な資質を備える。母の父キングマンボはエルコンドルパサーUSA、キングカメハメハという2頭の勝ち馬の父であり、母の父としての実績も下表に示した通り。13番人気で天皇賞(春)を制したスズカマンボを筆頭に、ライブコンサートIRE(京都金杯G3、5人気1着)、ストロングガルーダ(ラジオNIKKEI賞G3、5人気1着)などが示すように母の父となってもその長打力は健在。同じ父のアントニオバローズも昨年のダービーでは8番人気で3着に食い込んだ。このパターンは、父マンハッタンカフェの母の父ローソサイエティとキングマンボ〜ミエスク母仔がいずれもギリシャの大富豪で大馬主ニアルコス氏の持ち馬だったこともあり、リボーやプリンスキロといった底力はあるが難しい面もある血をうまくまとめてミスタープロスペクターやノーザンダンサーといった主流血脈に混ぜ込むことに成功している。祖母の父オジジアンUSAは日本ではダート・短距離のイメージが強く、それはそれでいいとして、ダマスクス直仔だけに母系に潜むと良い働きをする血脈。3代母トリッキーゲームにはキングマンボとの間の産駒にキングクガートがいて、これはG1勝ちこそないが、アーリントンクラシックG2など米国の芝で大活躍し、この牝系とキングマンボの相性の良さを示した。4代母コンゲームは何といっても名種牡馬シーキングザゴールドの母として名高い。シーキングザゴールドは1997年の勝ち馬シーキングザパールUSAの父、2003年の3着馬マイネルモルゲンの母の父であり、このレースには浅からぬ縁がある。


母の父キングマンボ Kingmambo の主な活躍馬
馬名産地生年主な成績
Ocean Silk2000fDynaformer2003 ヨークシャーオークスG1
Myth to Reality
スズカマンボ2001mサンデーサイレンスUSA2005 天皇賞(春)
スプリングマンボGB
Maids Causeway2002fGiant's Causeway2005 コロネーションSG1
Vallee des Reves
Just Mambo2003hDanehill Dancer2007 STCファーラップSG2
Royal Subject
Danzon2003fロイヤルアカデミーIIUSA2007 ウッドフォードリザーヴターフクラシックSG1
Zappeuse
Nasheej2003fSwain2006 英1000ギニーG1
El Nafis
Duke of Marmalade2004mデインヒルUSA2008 キングジョージVI世&クイーンエリザベスSG1
Love Me True
ライブコンサートIRE2004hシングスピールIRE2010 京都金杯G3
Dance Lively
Regal Parade2004hPivotal2009 スプリントCG1
Model Queen
Red Giant2004mGiant's Causeway2008 クレメント.L.ハーシュ記念ターフ選手権G1
Beyond the Sun
Sagara2004hSadler's Wells2007 凱旋門賞G1
ラングーンルビーUSA
Gallica2005fRedoute's Choice2009 オーストラレシアンオークスG1
Swing Queen
Ready's Echo2005mMore Than Ready2008 ブリーダーズCダートマイルG1
Menekineko
Wiener Walzer2006mDynaformer2009 ドイツダービーG1
Walzerkoenigin
Gozzip Girl2006fDynaformer2009 アメリカンオークスG1
Temperence Gift
ストロングガルーダ2006mダンスインザダーク2009 ラジオNIKKEI賞G3
フェニックスバード
Miss World2006fBernstein2009 ガーデンシティSG1
Moonstar
Midday2006fOasis Dream2009 ブリーダーズCフィリー&メアターフG1
Midsummer
アントニオバローズ2006mマンハッタンカフェ2009 東京優駿
リトルアローUSA
Odds On2006mRoi Normand2009 アルゼンチンダービーG1
Ilha Bella

 ダノンシャンティは父フジキセキが朝日杯勝ち馬で、母の父マークオブエスティームが英2000ギニー馬。どちらも、可能性としてはそれ以上の幅で活躍することもできたのだろうが、結果としてマイルで最大の成果を上げた。祖母グローリアスソングは4つのG1を含む17勝、カナダの年度代表馬、米・加最優秀古牝馬となったヘイローの牝馬の代表産駒。牡の代表であるサンデーサイレンスUSAとの組み合わせはヘイロー最良の近親交配3×3となる。良血だけを集めて端正な美しさを備えた配合は、種牡馬としての可能性の大きさも感じさせる。

 アグネスタキオン産駒は過去に2勝。ロジックが最初のG1級勝利でもあったのだから、種牡馬としての原点がここにあるということさえできる。▲リルダヴァルは母の父がサンダーガルチUSA。その父ガルチは直仔イーグルカフェUSAが2000年に勝ち、ブレーヴテンダーUSAが1997年2着、母の父として2001年にサマーキャンドルが3着と、初期には大活躍だった。全体的には叔父のディープインパクトをアメリカ的なスピードと馬力の方にシフトした形。サンライズプリンスは母の父ワイルドアゲインが第1回ブリーダーズCクラシックG1勝ち馬で、祖母の父ロードアットウォーがアルゼンチン生まれの名馬、3代母の父はエルバジェ直仔のグレイドーンと母系に異系血脈ばかりを並べた。こういった血統がここまで強くなると、更にとてつもなく強くなる可能性も秘めている。

 エイシンアポロンUSAの母シルクアンドスカーレットは2歳時に愛で6Fの準重賞シルヴァーフラッシュSと7FのG2デビュターントSに勝った。3歳時は英オークスG1で5着となっているが、やはり本質はマイラーだった。そういった意味では息子も距離短縮が好結果につながるかもしれない。

 キングレオポルドは母系3代連続重賞勝ち馬。母の父ヌレエフもこのレースの隠れた重要血脈。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2010.5.9
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