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いわゆる「小岩井農場の基礎輸入牝馬」の1頭である英国産のフロリースカップGBに発した牝系は、1939年生まれのミナミホマレに始まって、マツミドリ、コダマ、カツラノハイセイコ、スペシャルウィーク、メイショウサムソン、ウオッカと7頭の日本ダービー馬が輩出する古くからの名門。これまで100年にわたって多くの活躍馬をコンスタントに送り出してきたが、特に2006年のダービー馬メイショウサムソン、翌年のウオッカ、2008年のダービー3着馬ブラックシェルらの大活躍に象徴されるここ4年間の大攻勢は目をみはるものだった。それも先日のウオッカ引退で一段落ついたように見えるが、本当にそうなのだろうか。エネルギーが大きかっただけに、余勢とか余波とか、そういうのがあると考えても深追いにはならないのではないか。 下表はその大ファミリーからローズトウショウの分枝を抜粋したもの。ウオッカを中心に、桜花賞馬シスタートウショウや菊花賞馬マチカネフクキタル、スプリント重賞に勝ちまくったシーイズトウショウもいてなかなか豪華。◎トウショウカレッジはウオッカの3代母の孫にあたる。フロリースカップGBブームよりひと足先にトウショウ牧場で生まれているだけに、ウオッカよりむしろこちらが本家の跡取りというべきだが、競馬は実力の世界なので、8歳を迎えて重賞勝ちのない現状では、女王ウオッカの親戚のおじさんという地位に甘んじざるを得ない。しかし、桜花賞馬の父をトウショウボーイから同じテスコボーイGB系スプリンターに置き換え、更に世界的大種牡馬ラストタイクーンIREを重ねた血統は短距離G1によく似合う。サクラバクシンオーは2002年のこのレースの勝ち馬ショウナンカンプの父であり、中京1200mの最重要血脈。父はデインヒルUSA登場前夜に南北両半球で大成功を収めた。種牡馬としては万能といえるが、自身の現役時はキングズスタンドSG1、スプリント選手権G1と英国のスプリントG1に2勝し、余勢を駆って挑んだブリーダーズCマイルG1で辛勝。マイルもこなせるスプリンターという成績だった。リース供用された日本では、海外で示したような目覚ましい成功を収めるには至らなかったものの、桜花賞馬アローキャリーを出した底力はさすがといえるだろう。ドバイに挑んだローレルゲレイロとの比較でいえば、一昨年の香港スプリントG1で短頭差、昨年のこのレースでは0秒3差まで追い込んでいる。今年のメンバーなら何とかなるのではないだろうか。 |
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フロリースカップGB系ワカシラオキ 〜ローズトウショウ分枝の活躍馬 |
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フロリースカップGB Florrie's Cup (牝、1904、父Florizel)─第四フロリースカップ (牝、1912、インタグリオーGB)─フロリスト(牝、1919、ガロンGB)─スターカップ(牝、 1930、シアンモアGB)─第弐スターカップ(牝、1937、ダイオライトGB)─シラオキ(牝、 1946、プリメロGB)─ワカシラオキ(牝、1960、ソロナウェーIRE)─ ローズトウショウ(牝、1965、テューダーペリオッドGB) シルバートウショウ(牝、1970、フィダルゴGB) | リンドンシチー(牡、1977、ドンITY)3着:小倉大賞典 トウショウロック(牡、1971、チャイナロックGB)ステイヤーズS、ダイヤモンドS、 | 2着:目黒記念、3着:東京新聞杯 グレイトウショウ(牝、1974、シルバーシャークIRE) | アテナトウショウ(牝、1981、トウショウボーイ)3着:クイーンC | アサクサキャノン(牡、1987、ノーザンディクテイターUSA)2着:セントライト | | 記念 | マチカネフクキタル(牡、1994、クリスタルグリッターズUSA)菊花賞、神戸 | 新聞杯、京都新聞杯、2着:京都記念、2着:大阪杯 コーニストウショウ(牝、1977、ダンディルートFR) エナジートウショウ(牝、1987、トウショウボーイ) | タニノシスター(牝、1993、ルションUSA) | | ウオッカ(牝、2004、タニノギムレット)ジャパンCG1、天皇賞(秋)G1、 | | 安田記念G1×2、ヴィクトリアマイルG1、東京優駿、阪神ジュ | | ベナイルフィリーズ、チューリップ賞、2着:桜花賞、2着:ヴィクト | | リアマイル、2着:毎日王冠G2×2、3着:ジャパンCG1、3着:天皇 | | 賞(秋)G1、3着:秋華賞 | スカイアンドリュウ(牡、1997、ポリッシュパトリオットUSA)2着:京王杯ス | プリングC | スリーアベニュー(牡、2002、アフリートCAN)ガーネットSG3、2着:ガー | ネットSG3、2着:カペラS、現役 シスタートウショウ(牝、1988、トウショウボーイ)桜花賞、2 | 着:優駿牝馬、2着:中山記念 トウショウオリオン(牡、1993、トウショウボーイ)北九州記念 ジェーントウショウ(牝、1996、トウショウフリート) | シーイズトウショウ(牝、2000、サクラバクシンオー)CBC賞×2、セント | ウルS、函館スプリントS×2、2着:桜花賞、2着:ファンタジーS、 | 2着:阪急杯、2着:函館スプリントS、2着:キーンランドC、3着:高 | 松宮記念、3着:CBC賞 ロゼトウショウ(牝、1997、サクラバクシンオー) トウショウカレッジ(牡、2002、ラストタイクーンIRE)米子S、テレビ愛知オー プン、バレンタインS、2着:京王杯スプリングCG2、2着:函館スプリ ントS、3着:富士SG3 |
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フジキセキは7歳のファイングレイン、南半球産なので6.5歳のキンシャサノキセキAUS、6歳のアルティマトゥーレと3世代(?)3頭の産駒を送り込んできた。ファイングレインの同期にはヴィクトリアマイルのコイウタがいて、キンシャサノキセキにはドバイシーマクラシックG1のサンクラシーク、アルティマトゥーレにはヴィクトリアマイルのエイジアンウインズがいる。現8歳のカネヒキリからこのあたりまでが種牡馬としてのフジキセキの全盛期と見てよさそうだ。これら3頭の比較では○アルティマトゥーレが最もスピード型の血統。母エアトゥーレは1600mの阪神牝馬Sに勝った後、2002年の海外遠征でシンガポールのクリスフライヤースプリントG3(1200m)3着、モーリスドギース賞G1(1300m)2着、スプリントCG1(1200m)11着の成績を残した。このレースにも2度出走し、2002年10着、2003年は不利もあって16着となって現役を終えている。母と同じ引退戦で母のリベンジがなれば、劇的ではある。▲キンシャサノキセキはステイヤーと出ても不思議のない血統で、祖母フェザーヒルの子孫にはグルームダンサーUSAやファルコといったフランスのクラシック馬がいて、3代母レディベリーは菊花賞相当のロイヤルオーク賞G1(3100m)に勝った名牝。その子孫にもパリ大賞G1のルネンジョーン、ヴェルメーユ賞G1のインディアンローズ、ガネー賞G1のヴェールタマンドFRといった仏G1勝ち馬がいる。母の父プレザントコロニーはリボー系の大種牡馬で底力があり、大レースでこそ真価を発揮する血脈。△ファイングレインは母ミルグレインの全姉ピュアグレインGBが愛オークスG1、ヨークシャーオークスG1に勝った名牝。3代母キーラインはパークヒルSG2(14F)に勝っているから、こちらもステイヤー色が強い。このようにスタミナ豊富な母に、父から優れたスピードを注入するやり方は、サクラバクシンオーがアンバーシャダイの全妹にサクラユタカオー、ニホンピロウイナーがキタノカチドキ(ステイヤーと見るかどうかは微妙だが)の半妹にスティールハートIREという配合だったことを見ても、一流スプリンターを生む数少ないセオリーのひとつとはいえる。ところで「キンシャサの奇跡(1974年アリ対フォアマン戦)」の例を今回に当てはめると、ピークを過ぎたと見られているファイングレインが連勝中のキンシャサノキセキを破るということになると思うが、どうだろう。 サンカルロは祖母ミスセレクトUSAが伊1000ギニーに勝った以外に目立つところのない牝系だが、ロベルト系×ミスタープロスペクター系の大レースに強いニックス。底力を問われる流れなら台頭可能。ピサノパテックはこのレースの勝ち馬を過去4頭送り出したサンデーサイレンスUSAの産駒。一発があるかも。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2010.3.28
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