2010マイルチャンピオンシップ


父仔2代の春秋マイル王

 11月6日に行われたブリーダーズCマイルG1ではフランスの5歳牝馬ゴルディコヴァが史上初の3連覇を達成した。これまでも1987、88年のミエスク、1992、93年のルアーと2連覇の例が2つあり、ダホスは1996、98年と隔年で2勝を挙げた。このように27回を数えるブリーダーズCシリーズの中でも連続勝利が起きやすいレースなのだが、ゴルディコヴァが2008、09年に同じサンタアニタ競馬場で勝ったケースを除くと、連覇といってもそれぞれ競馬場が違う。しかも、どんな馬でも走れる条件であって競争は激しくなるはずのカテゴリーなのに、強い馬がずっとその地位を確保できる不思議な面がある。マイルチャンピオンシップも連覇の多いレースで、ニホンピロウイナー、ダイタクヘリオス、タイキシャトルUSA、デュランダル、ダイワメジャーと、その頻度は同じ年に創設されたブリーダーズCマイルG1を超えている。したがって、連覇を狙う強い馬がいれば、基本的にそれに従えばいいわけだが、残念ながら今年は該当馬なし。簡単にはいかない。しかし、馬場の形態はともかく気候も芝の具合も違う北米の主要競馬場持ち回りのブリーダーズCマイルG1で、それだけ連覇があるということは、春と秋、東京と京都の違いという点には、実はそれほどこだわらなくていいのではないか。そういうわけで、安田記念とマイルチャンピオンシップの歴代勝ち馬を並べてみる(下表)。同じレースの春・秋バージョンと考えるわけだ。そうすると、縦の連覇以上に横(春→秋)、斜め(秋→春)の“連覇”が多いことが分かる。
 横の“連覇”ならショウワモダンが有資格者。父のエアジハードは1999年に安田記念とマイルチャンピオンシップの両方に勝った。秋は休み明けの天皇賞3着を経て1番人気で快勝という、息子とは随分違う臨戦過程だが、息子にはトニービンIREが入っているだけに、少々やんちゃな面があると考えることはできる。サクラユタカオーを経てテスコボーイGBに至る父系、アスワンの出る牝系にナスルーラ5×5、ハイペリオン5×5という配合は昭和を感じさせるもので、最新の要素は母の父のトニービンIREがギリギリで平成の種牡馬といえるくらいだが、このレースでも長く続いたサンデーサイレンスUSA支配が昨年で崩れたとすると、リバイバル血統の出番といえるのではないだろうか。また父の持つノーザンテーストCAN(祖母の父)はデュランダルやダイワメジャー、カンパニーの母の父として、母の父トニービンIREはカンパニーの父系祖父として、このレースに実績を残している。春の連勝モードとは対照的なこの秋の連敗モードだが、前走は直線これからというときに不利。着順は悪くても立ち直りつつある。


安田記念とマイルチャンピオンシップの勝ち馬
年度安田記念性齢マイルチャンピオンシップ性齢
1984第34回ハッピープログレス牡6第1回ニホンピロウイナー牡4
85第35回ニホンピロウイナー牡5第2回ニホンピロウイナー牡5
86第36回ギャロップダイナ牡6第3回タカラスチール牝4
87第37回フレッシュボイス牡4第4回ニッポーテイオー牡4
88第38回ニッポーテイオー牡5第5回サッカーボーイ牡3
89第39回バンブーメモリー牡4第6回オグリキャップ牡4
90第40回オグリキャップ牡5第7回パッシングショット牝5
91第41回ダイイチルビー牝4第8回ダイタクヘリオス牡4
92第42回ヤマニンゼファー牡4第9回ダイタクヘリオス牡5
93第43回ヤマニンゼファー牡5第10回シンコウラブリイIRE牝4
94第44回ノースフライト牝4第11回ノースフライト牝4
95第45回ハートレイクGB牡4第12回トロットサンダー牡6
96第46回トロットサンダー牡7第13回ジェニュイン牡4
97第47回タイキブリザードUSA牡6第14回タイキシャトルUSA牡3
98第48回タイキシャトルUSA牡4第15回タイキシャトルUSA牡4
99第49回エアジハード牡4第16回エアジハード牡4
2000第50回フェアリーキングプローンAUSg5第17回アグネスデジタルUSA牡3
01第51回ブラックホーク牡7第18回ゼンノエルシドIRE牡4
02第52回アドマイヤコジーン牡6第19回トウカイポイントg6
03第53回アグネスデジタルUSA牡6第20回デュランダル牡4
04第54回ツルマルボーイ牡6第21回デュランダル牡5
05第55回アサクサデンエンGB牡6第22回ハットトリック牡4
06第56回ブリッシュラックUSAg7第23回ダイワメジャー牡5
07第57回ダイワメジャー牡6第24回ダイワメジャー牡6
08第58回ウオッカ牝4第25回ブルーメンブラット牝5
09第59回ウオッカ牝5第26回カンパニー牡8
10第60回ショウワモダン牡6第27回   ? 
網掛けは春秋、または秋春連勝馬

 昨年3着のサプレザUSAは6月のアスコットで生涯初の大凡走をしたせいで夏場を立て直しにあて、結果として昨年より余力のある状態での来日となった。セントウルSG2のグリーンバーディーNZ、スプリンターズSG1のウルトラファンタジーAUS、そしてエリザベス女王杯G1のスノーフェアリーIREと強い外国馬がちゃんと力を示しているこの秋の流れを見ると逆らえない感じもする。父サームは名牝サルサビル(英1000ギニーG1、英オークスG1、愛ダービーG1制覇)産駒の唯一の牡馬ということでG2勝ちひとつで種牡馬になった。スノーフェアリーIREの祖母の父マルジュはサルサビルの半弟なので、サルサビル関係血脈がちょっとしたブームとなりつつあるのかもしれない。牝系は特に見るべきものがないが、母の父からリボー血脈が入るのは大きな強調点。

 キンシャサノキセキは2008年の京都金杯G3以来2年10カ月ぶりの1600m。4年前のこのレースでダイワメジャーから0秒5差の5着という実績もある。2003年生まれのフジキセキ産駒はオーストラリアでこの馬と南アの名牝サンクラシークが、日本でファイングレイン、コイウタ、グレイスティアラが現れたヴィンテージ世代。3代母レディベリーは仏版菊花賞のロイヤルオーク賞G1(3100m)に勝った名牝で、そこに良血ばかりを重ねた5代アウトの配合は奥が深い。7歳秋の奇跡があるかもしれない。

 テイエムオーロラの祖母ケイシーGBは牝馬版セントレジャー・パークヒルSG2(14F132yds.)勝ち馬。牝系に蓄積されたスタミナ血脈というのは大レースになると距離の長短に関わらずものをいうケースが多い。エリザベス女王杯G1で本命にしてブービーに敗れたアーヴェイGBの祖母もパークヒルSG3勝ち馬なので、お互い関係はないが、今回はそのリベンジにも期待したい。

 トゥザグローリーは菊花賞G1・2着のローズキングダムと同じキングカメハメハ×サンデーサイレンスUSAの配合。大まかにいえば今後主流となっていくであろうミスタープロスペクターとサンデーサイレンスUSAの組み合わせで、SS牝馬としても最高クラスの一頭トゥザヴィクトリーが母。一発の魅力あり。

 ゴールスキーは上り調子のネオユニヴァース産駒。父のよくできた産駒は春のクラシックに向けて一気に急上昇を示すものが多いが、こちらは春にモタついたのが幸いし、秋を迎えてゆっくりと、より高いピークに到達する可能性がある。こちらもゴールドアリュールの半弟という良血。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2010.11.21
©Keiba Book