2010ジャパンCダート


Mr.プロスペクターの反撃

 海外からの招待馬がいないのは2006年以来。阪神に移ってからの3年で出走数は2→1→0となった。過去10年の招待馬は米19頭(うち取消1、故障回避1)、英4、独3、仏1、港1の合計28頭。その成績はというと[1.0.1.24]。馬券に絡んだ2頭と掲示板に載ったもう1頭はいずれも米国馬で、さすがといえばさすがなのだが、全体でこれだけ凡走の山を築いては、何のための招待かともいえる。その理由については右回りのせいだとかジャパンCG1と離れた日程だとか、日本側の問題が議論されることが多いが、根本にあるのは米国競馬に元気がなくなったということではないだろうか。生産界は冷え込み、名門競馬場にさえ身売り話が湧いては消えという状況がここ何年も続いている。たとえば欧州にシーザスターズのような名馬が現れれば、昔なら大生産者がシンジケートを組んで米国に連れてきたところだが、そんなこともなくなって久しい。そうやって元気がなくなると、高額賞金がかかって、しかも円高という状況でも、リスクを冒してそれを狙うという気にならないのではないか。対照的に日本競馬が海外遠征に積極的なのは、発展途上ゆえのエネルギーがあるからだ。
 そうはいっても現代の日本のダート競馬を支えているのは米国血統で、下表に示したように、今年の重賞勝ち馬の血統はサンデーサイレンスUSA、ブライアンズタイムUSA、ミスタープロスペクターの3大血脈でほとんど塗りつぶされる。完全な欧州系はトニービンIREくらいだ。今年も半分近くの重賞をサンデーサイレンスUSAの血をひくものが制したわけだが、その中でも特に目立ったのは上半期のエスポワールシチーの無敵の活躍と、南部杯でそれを負かしたオーロマイスター、さらにそれをJBCクラシックで問題にしなかったスマートファルコンがいずれもゴールドアリュール産駒だったということ。このようなゴールドアリュール快進撃という流れで思い出さなければいけないのが2002年、中山で行われたこのレースだ。勝ったのはイーグルカフェUSA。その年は七夕賞に勝ったりフランス遠征したりという芝馬の一撃だった。芝馬といっても父はガルチ。ミスタープロスペクター直系のこのレース最初の勝利でもある。


2010年ここまでのダートグレード競走
日付レース距離勝ち馬母の父
1/20TCK女王杯Jpn31800ユキチャンクロフネUSAサンデーサイレンスUSA
1/24平安SG31800ロールオブザダイストワイニングUSAサンデーサイレンスUSA
1/27川崎記念Jpn12100ヴァーミリアンエルコンドルパサーUSAサンデーサイレンスUSA
1/31根岸SG31400グロリアスノアプリサイスエンドUSAジェイドロバリーUSA
2/11佐賀記念Jpn32000ラッシュストリートマーベラスサンデーノーザンテーストCAN
2/21フェブラリーSG11600エスポワールシチーゴールドアリュールブライアンズタイムUSA
2/24エンプレス杯Jpn22100ブラボーデイジークロフネUSAサンデーサイレンスUSA
3/10ダイオライト記念Jpn22500フサイチセブンFusaichi PegasusVice Regent
3/17名古屋大賞典Jpn31900ラヴェリータUSAUnbridled's SongGone West
3/22黒船賞Jpn31400スーニUSASotoRoanoke
3/28マーチSG31800マコトスパルビエロブライアンズタイムUSAリンドシェーバーUSA
4/7東京スプリントJpn31200スーニUSASotoRoanoke
4/14マリーンCJpn31600トーホウドルチェサウスヴィグラスUSAブライアンズタイムUSA
4/25アンタレスSG31800ダイシンオレンジアグネスデジタルUSAラシアンルーブルUSA
5/3かきつばた記念Jpn31400スマートファルコンゴールドアリュールミシシッピアンUSA
5/4兵庫チャンピオンシップJpn21870バーディバーディブライアンズタイムUSASeeking the Gold
5/5かしわ記念Jpn11600エスポワールシチーゴールドアリュールブライアンズタイムUSA
5/23東海SG21900シルクメビウスステイゴールドポリッシュネイビーUSA
5/26さきたま杯Jpn31400スマートファルコンゴールドアリュールミシシッピアンUSA
6/6ユニコーンSG31600バーディバーディブライアンズタイムUSASeeking the Gold
6/16関東オークスJpn22100シンメイフジフジキセキティンバーカントリーUSA
6/17北海道スプリントCJpn31200ミリオンディスクアフリートCANトニービンIRE
6/30帝王賞Jpn12000フリオーソブライアンズタイムUSAMr. Prospector
7/7スパーキングレディーCJpn31600ラヴェリータUSAUnbridled's SongGone West
7/11プロキオンSG31400ケイアイガーベラSmarty JonesDanzig
7/14ジャパンダートダービーJpn12000マグニフィカゼンノロブロイRahy
7/19マーキュリーCJpn32000カネヒキリフジキセキDeputy Minister
8/12ブリーダーズゴールドCJpn22000シルクメビウスステイゴールドポリッシュネイビーUSA
8/16クラスターCJpn31200サマーウインドタイキシャトルUSAウエスタンウインドUSA
8/18サマーチャンピオンJpn31400セレスハントコロナドズクエストUSABlushing Groom
9/20エルムSG31700クリールパッションワイルドラッシュUSAトニービンIRE
9/23日本テレビ杯Jpn21800フリオーソブライアンズタイムUSAMr. Prospector
10/2シリウスSG32000キングスエンブレムウォーエンブレムUSAサンデーサイレンスUSA
10/5白山大賞典Jpn32100パワーストラグルシンボリクリスエスUSAアフリートCAN
10/6東京杯Jpn21200サマーウインドタイキシャトルUSAウエスタンウインドUSA
10/11マイルChp.南部杯Jpn11600オーロマイスターゴールドアリュールLear Fan
11/3JBCスプリントJpn11000サマーウインドタイキシャトルUSAウエスタンウインドUSA
11/3JBCクラシックJpn11800スマートファルコンゴールドアリュールミシシッピアンUSA
11/7みやこSG31800トランセンドワイルドラッシュUSAトニービンIRE
11/14武蔵野SG31600グロリアスノアプリサイスエンドUSAジェイドロバリーUSA
11/24浦和記念Jpn22000スマートファルコンゴールドアリュールミシシッピアンUSA
はサンデーサイレンス系、はブライアンズタイム系、はミスタープロスペクター系

 そこで、サンデーサイレンスUSAとミスタープロスペクターの対立が今回もキーワードになるのではないかと考え、出走馬について、サンデーサイレンスUSA血脈とミスタープロスペクター血脈の有無を分けて示したのが下表


 サンデーサイレンスUSA
ありなし











ヴァーミリアン
オーロマイスター
キングスエンブレム
マカニビスティー
マルカシェンク
グロリアスノア
ダイショウジェット
ダイシンオレンジ
トーセンブライト
バーディバーディ
ラヴェリータUSA

アドマイヤスバル
アリゼオ
シルクメビウス
クリールパッション
トランセンド

 ジャパンCG1を制したローズキングダムは父キングカメハメハ、母の父サンデーサイレンスUSAであるように、現代日本の主流となりつつあるのが「あり・あり」のパターン。実際に阪神に移ってからの勝ち馬ヴァーミリアンとカネヒキリはいずれも「あり・あり」だった。昨年のエスポワールシチーはサンデーサイレンスUSAのみ「あり」。ここに2002年の流れを重ねると、今回はミスタープロスペクターの、それも純度の高いものによる大反撃があるのではないだろうか。そこでラヴェリータUSA。大レース向きアンブライドルドと、何が出るか分からないゴーンウエストというミスタープロスペクター系の大物同士の配合で、ミスタープロスペクターの近交馬でも特にリスキーだが当たれば大きい。これまでの実績と、0.5キロ重いハンデでキングスエンブレムに0秒1しか負けていないシリウスSG3の内容を見れば、これは「当たり」と考えていい。父アンブライドルズソングの2006年生まれの産駒にはBCジュヴェナイルG1のミッドシップマン、短距離G1・3勝のゼンセーショナル、そして記憶に新しいBCレディーズクラシックG1勝ち馬アンライヴァルドベルなどがいて豊作の世代。3代母クラッシーンスマートの産駒にカナダ三冠とBCディスタフを制した名牝ダンススマートリー、名種牡馬スマートストライク(03年勝ち馬フリートストリートダンサーUSAや米年度代表馬カーリンの父)がいる牝系も大レースでこそ真価を発揮する。

 グロリアスノアもミスタープロスペクターの4×3。ラヴェリータUSAには米国的なスケールの大きさがあるのに対し、こちらはエンドスウィープUSAとジェイドロバリーUSAという日本で実績を残すもの同士の配合になっているのが強み。

 バーディバーディはロベルト×ミスタープロスペクターのニックス。さらにグロースターク×ヒズマジェスティというリボー直仔の全兄弟の血をひき、3代母は名牝。大駆けの魅力あり。

 キングスエンブレムは名門“スカーレット一族”ダート部門の正統後継者といった感じ。父はケンタッキーダービーG1など米2冠。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2010.12.5
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