2010ジャパンC


バック・イン・1999

 かなり多くの人が気付いているのかも知れないが、ブエナビスタの成績はその父スペシャルウィークに似ている。もちろん、牡牝の違い、時代の違いなどがあるので、似ているというよりも、もともと違う2つの像が重なってじんわりとひとつの像に見えるようになってきたというのが適当だろう。しかし、15戦目の天皇賞(秋)で2つの像の輪郭はぴたりと合致したのではないだろうか。どちらも圧倒的な強さで連勝することがあるかと思えば、能力に疑問が生じない程度の取りこぼしも少なくなく、それでも、深刻な不振や故障休養とは無縁で、結果としてクラシックから古馬戦線まで長期間にわたってトップの地位を守っている。


父と娘の似ているといえば似ている競走成績
スペシャルウィーク着順人気騎手距離ブエナビスタ着順人気騎手距離
97.11.29新馬11武 豊160008.10.26新馬31安藤勝1800
98.1.6白梅賞21武 豊160011.15未勝利11安藤勝1600
2.8きさらぎ賞11武 豊180012.14阪神JF11安藤勝1600
3.8弥生賞12武 豊200009.3.7チューリップ賞11安藤勝1600
4.19皐月賞31武 豊20004.12桜花賞11安藤勝1600
6.7東京優駿11武 豊24005.24優駿牝馬11安藤勝2400
10.18京都新聞杯11武 豊22008.23札幌記念G221安藤勝2000
11.8菊花賞21武 豊300010.18秋華賞G131安藤勝2000
11.29ジャパンカップG131岡部幸240011.15エリザベス女王杯G131安藤勝2200
99.1.24アメリカJCC       11ペリエ220012.27有馬記念G121横山典2500
3.21阪神大賞典12武 豊300010.2.20京都記念G211横山典2200
5.2天皇賞(春)11武 豊32003.27ドバイシーマクラシックG12 ペリエ2410
7.11宝塚記念21武 豊22005.16ヴィクトリアマイルG111横山典1600
10.1京都大賞典71武 豊24006.27宝塚記念G121横山典2200
10.31天皇賞(秋)14武 豊200010.31天皇賞(秋)G111スミヨン2000
11.28ジャパンカップG112武 豊2400
12.26有馬記念22武 豊2500

 スペシャルウィークとグラスワンダーUSAが国内の覇権争いを演じた1999年、3強の一角を占めたエルコンドルパサーUSAはフランスへの長期遠征を敢行し、サンクルー大賞G1、フォワ賞G2に勝って大目標の凱旋門賞G1に挑み、3.5Kgの斤量差がある3歳の仏・愛ダービー馬モンジューIREに1/2馬身及ばず2着に敗れた。それから11年後のこの秋、ナカヤマフェスタは3歳の英ダービー馬ワークフォースにアタマ差届かなかった。春には安田記念G1を1999年の勝ち馬エアジハードの仔ショウワモダンが勝ったように、どうも今年はあっちでもこっちでも1999年の競馬がリメークされているようだ。


5回東京  11月28日  晴・良
  8ノ11R   
第19回ジャパンC(G1)  (芝)左2400m
サラ4歳以上,(指定),(国際),定量
13スペシャルウィーク57武 豊2.25.51010963.4
7インディジェナスIRE57ホワイト 25.71 1/2233683.9
12ハイライズIRE57デットーリ〃 ハナ7766 20.1
14モンジューIRE55キネーン 25.83/41313119 2.7
6ラスカルスズカ55柴田善 26.5789910.6
10ステイゴールド57熊 沢 26.61/2455213.9
8スエヒロコマンダー57藤 田〃 クビ11141311103.5
15ボルジアGER55ペリエ 26.7クビ1312111116.0
11フルーツオブラヴUSA57ロバーツ〃 アタマ12862 20.7
1タイガーヒルIRE57ヘリヤー 26.91 1/244327.1
3アンブラスモア57須 貝 27.13/4111144.4
2ウメノファイバー53蛯 名 28.19111314 20.6
5オースミブライト55武 幸 28.66681396.1
4スティンガー53横山典 29.53222 27.2
9アルボラーダGB55ダフィールド左寛跛行のため出走取消
枠連4-7 1510 単 340 複 160 1580 600
馬連7-13 23190
ハロン12.13 前半36.3−48.3 上り49.0−36.7
ラップタイム 12.9-11.2-12.2-12.0-11.9-12.2-12.0-12.1-12.3-12.7-11.2-12.8
11ブリンカー着用

 そこで、今回のメンバーを第19回ジャパンCG1の出走馬にキャスティングしてみた。スペシャルウィーク役はブエナビスタで文句のないところ。父の蹄跡を忠実に辿るとするなら、ここも危な気なく抜け出しそうだ。2着インディジェナスIREは……、後回し。3着ハイライズIREは前年の英ダービー馬だが、今年の日本ダービー馬エイシンフラッシュに務めてもらおう。キングズベスト産駒の“ダービー馬”なので仮想ワークフォースとしてナカヤマフェスタにとっては凱旋門賞G1のリベンジの対象ともなる。4着モンジューIRE役にはその息子ジョシュアツリーIRE。偉大な父に比べるとまだまだ力不足といわざるを得ないが、こういう年に来日したのも何かの縁といえるだろう。5着ラスカルスズカは菊花賞3着の余勢を駆っての挑戦だったので、これには菊花賞G1・2着のローズキングダム。6着ステイゴールドは自動的に息子のナカヤマフェスタとなるわけだが、凱旋門賞G1・2着ということでエルコンドルパサーUSA役にもなれるし、宝塚記念G1勝ち馬だからグラスワンダーUSA役かもしれない。第19回ジャパンCG1にそれらが出ていればどうなったかを想像するのも楽しい。あと、取り消した英国の名牝アルボラーダGB役はもちろんスノーフェアリーIREですね。

 さて、後回しにした2着インディジェナスIRE。これを誰がやるのかが最大の焦点。インディジェナスIREはアイルランドでデビューして香港に移籍、長距離で実績を残していたが、直前に大敗していたこともあって招待馬の中では最低人気。そもそも当時は香港の馬が前年の安田記念でオリエンタルエクスプレスIREが穴を開けた程度で、今ほど遠征実績がなかった。ジャガーメイルは香港での出走歴があって、ホワイト騎手が騎乗したことがあって、しかも前走大敗。それらの点でインディジェナスIRE役の資格は備えている。天皇賞(春)に勝っているが、ジャングルポケット産駒でもあり、元来ベストは東京の2400mだろう。ただ、それなりに人気になるのは確実だし、インディジェナスIREのような無視された謎の男という雰囲気に欠ける。インディジェナスIREは6歳セン馬で当時37戦目。血統は父がラストタイクーン産駒のマルジュ、母の父がスプリンター・シングシング直仔のマイラー・アヴェロフだった。モアズウェルズGBは6歳牡馬で今回が34戦目。アイルランドでデビューした若いころはクラシックにも挑んだが、5歳でフランスに移籍するとだんだんとG3クラスに落ち着いて、その地位も怪しくなった今年の秋、スウェーデン、カナダへの遠征で持ち直してきた。レベルとしては凱旋門賞G1・2着馬、ドバイシーマクラシックG1・2着馬、日本ダービー馬、天皇賞馬が並ぶ舞台ではどうにもならないと思えるが、血統的にはなかなか面白い。父は長年欧州中長距離界を支配したサドラーズウェルズ。母は16F45ydsのクイーンズヴァーズ英G3勝ち馬で、名スプリンター・ウォーニングGBが3頭だけ出した3000m超級の重賞勝ち馬の1頭。祖母も母と同じ距離のサガロS英G3で4着となったステイヤーで、3代母はチェシャーオークス英G3勝ち馬。その子孫からは2003年の愛2000ギニー馬インディアンヘーヴンや昨年の英セントレジャーG1・2着馬カイトウッドが出ていて、現在まで活気のあるファミリー。サドラーズウェルズ、ウォーニングGB、シャーリーハイツという互いに相性が良く実績もある英愛血脈が組み合わされている点には一発の魅力が潜み、1999年回帰という今回のテーマにふさわしい懐古趣味も漂う。

 1999年のリメークといっても、競馬のことだから結果が当時に沿うものになるとは限らない。配当面を優先して絞るとこうなる。

 ◎モアズウェルズGB
 ○ブエナビスタ
 ▲エイシンフラッシュ
 △ナカヤマフェスタ
 △ジャガーメイル
 △ジョシュアツリーIRE


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2010.11.28
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