2010天皇賞・春


2004年世代の重唱

 テイエムオペラオーが2000年、2001年と連覇、2007年はメイショウサムソンが勝ち、オペラハウスGBは産駒がこの10年で3勝を挙げている。サンデーサイレンスUSAでさえ10年で3勝、それ以前に遡ってもスペシャルウィークを加えた通算4勝に止まる。延べ出走頭数はオペラハウスGB産駒が7頭、サンデーサイレンスUSA産駒が37頭なので、それを考えればオペラハウスGBが現代の天皇賞(春)における圧倒的に重要な血脈ということができる。
 1986年の愛オークスを楽勝したカラースピンに種牡馬入り3年目のサドラーズウェルズが配合されて生まれたオペラハウスGB。その現役時代をごく簡単にまとめると、デビュー戦圧勝で素質を示した2歳時、故障から秋に復帰して3戦1勝のみで終えた3歳時、順調に力をつけていった4歳時、キングジョージVI世&クイーンエリザベスSまでG1・3連勝でピークに達した5歳時ということになる。クラシックから古馬G1まで活躍したテイエムオペラオーやメイショウサムソンといった代表産駒を見ると、2歳秋の故障がなく順調に成長していれば、大物過ぎて種牡馬としての来日はなかったかもしれない。その後の活躍は下表にまとめた通りだが、テイエムオペラオーからメイショウサムソンの間にブランクを挟んで、前期と後期ともいうべき波がある。しかも、前期は母系から軽いナスルーラ血脈を導入して成功する傾向が強かったのに、後期はノーザンダンサーの近交を柱にした重厚な配合が成功している。メイショウサムソンに代表される2003年世代の退場を待って登場してきた2004年世代は父に輪をかけた晩成型。テイエムオペラオー出現直後の1997年生まれのような今イチ世代に止まるか、壁を突き破って後期黄金世代と呼ばれるかは十分に勢いのある今回が正念場ともいえそうだ。トーセンクラウンは2歳秋の未勝利勝ちがコースレコード、続く東スポ杯2歳Sでは4着になって、当時の合同フリーハンデでは102のレーティングがついている。その後は低迷といえず、上昇ともいえないような時期が長く続いて、6歳の今年、中山記念G2でようやく重賞勝ちを果たした。素質の片鱗を示し→停滞を経て→一線級への脱皮という過程は、おおむね父に似ている。特にこの世代の牡馬には、ウオッカ、ダイワスカーレットといった同世代の荒波をやり過ごしてから浮上した方が効率がいいといえる面もある。母の父は80年代最強馬とされるダンシングブレーヴUSAで、この組み合わせはメイショウサムソンと同じ。祖母はサンデーサイレンスUSAの3頭いる全妹のうちの1頭。あとの2頭は1990年生まれのサンデーズシスUSAと1995年のフラワーCで5着になったマイライフスタイルUSAで、いずれもこれまでの繁殖成績は期待を大きく裏切るものといわざるをえないが、こういったケースでは、あるレベルを超えれば、さすがサンデーサイレンスUSAの全妹という底力を発揮するものだ。


オペラハウスGB産駒の平地重賞勝ち鞍
生年馬名母の父重賞勝ち鞍
1995ニホンピロジュピタブレイヴェストローマンUSA1999南部杯、1999エルムS
1996テイエムオペラオーBlushing Groom2000ジャパンCG1、2000天皇賞(春)、2000天皇賞(秋)、2001天皇賞(春)、2000有馬記念、2000宝塚記念、1999皐月賞、2000阪神大賞典、2000京都大賞典、2000京都記念、2001京都大賞典、1999毎日杯
1996オペラハットブレイヴェストローマンUSA1999東京王冠賞
1997アクティブバイオシンボリルドルフ2003アルゼンチン共和国杯、2002日経賞
1997ミラクルオペラダンサーズイメージUSA2001白山大賞典、2001マーキュリーC
1997カリスマサンオペラテスコボーイGB2001中山金杯
2001オペラシチーブレイヴェストローマンUSA2005目黒記念
2003メイショウサムソンダンシングブレーヴUSA2007天皇賞(秋)G1、2007天皇賞(春)G1、2006東京優駿、2006皐月賞、2007大阪杯G2、2006スプリングS
2003ヤマトマリオンアンバーシャダイ2008東海SG2、2006フローラS、2009TCK女王盃、2008クイーン賞
2003ミヤビランベリホリスキー2009アルゼンチン共和国杯G2、2009目黒記念G2、2009七夕賞G3、2008七夕賞G3
2004テイエムアンコールブライアンズタイムUSA2010大阪杯G2
2004トーセンクラウンダンシングブレーヴUSA2010中山記念G2
太字はG1級勝ち馬

 テイエムアンコールもトーセンクラウン同様にノーザンダンサー3×4、ヘイルトゥリーズン5×4という近交になっていて、配列は違うがよく似た血統。大レースでの強さに定評のある母の父ブライアンズタイムUSAは、菊花賞馬スリーロールス、ダート王エスポワールシチーを出すなど、いい流れが昨年から続いている。3代母はかつての名種牡馬スティールハートIREの全妹。その父ハビタットと父系祖父サドラーズウェルズの組み合わせからは英2000ギニー馬キングオブキングスIREをはじめ、多くの名マイラーが出ている。このあたりは軽い瞬発力勝負にも対応できる裏付けと考えていいのではないだろうか。

 ▲ジャミールは母の父がサドラーズウェルズ。半兄のアルジャーリフという馬はアイルランドの田舎でデビューした翌年、ドイツに移籍し、そこから更にイギリス、フランス、スロバキアにオーストリアとあちこち飛び回って17勝を挙げた。最大のタイトルがフランスのオールウェザーの準重賞だから全然大したことはないが、2900mでも勝ち鞍があるように長距離は得意だったようだ。祖母は12FのリブルスデールS英G2、3代母が14Fの愛セントレジャーG1勝ちだから、欧州型のスタミナに富んだボトムライン。ステイゴールド産駒の大物が抜けた穴を埋めたのは、なんだやっぱりステイゴールド産駒だったという結果があるかもしれない。

 マイネルキッツは父チーフベアハートCANがカナダの12F最強馬で、母の父がナリタトップロードやヒシミラクルで長距離実績のあるサッカーボーイ。それだけなら昨年でも印をつけられたのだが、祖母の父がクリムゾンサタンという点で引っ掛かった。アメリカ的なスピードの塊で、母系に潜んでもかなり頑固に影響を及ぼすことはスカーレット一族を見れば分かる。まあ、ダイワスカーレットが有馬記念G1を楽勝するくらいだから、個体によって、配合によっては距離も大丈夫と考えるのがいいようだ。

 フォゲッタブルは母エアグルーヴがオークスと天皇賞(秋)に勝ってジャパンCG1・2着2回の女傑で、姉アドマイヤグルーヴがエリザベス女王杯2勝、祖母ダイナカールはオークス馬という名門女系家族に現れた牡馬。分家筋では高松宮記念のオレハマッテルゼのように牡馬の大物も出ているが、立場はちょっと微妙なものがあるかもしれない。

 2006年の種付けを最後に英国に買い戻された名馬ラムタラUSA。その産駒ゴールデンメインは京都で勝ったことがないが、母フェイヴァーワンは全6勝の半分を京都で挙げ、オープンの陽春Sは13番人気で勝った。3代母の父は大種牡馬ヒンドスタンGB。3200m時代に春2勝、秋3勝を挙げた天皇賞血統でもある。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2010.5.2
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