2010フェブラリーS


良血混成軍の破壊力

 JBCクラシックはヴァーミリアンとアドマイヤドンがそれぞれ3連覇を果たし、南部杯にもブルーコンコルドの3連覇があり、東京大賞典はアジュディミツオーが連覇していて、ダートの大レースは強い馬が独占的に活躍する傾向がある。大レースとしての歴史が浅いかしわ記念を別にすると、1頭が複数回勝ったことがない古馬のG1/Jpn1はフェブラリーSと帝王賞の2つだけ。このレースには、強くないと勝てないし、強いからといって勝てるとは限らない独特の厳しさがあるようだ。昨年はデピュティミニスターの血を受けたものが1〜3、5着を占め、それ以前にもストームキャット系などが他の大レースでは見られない活躍を示したり、血統的にも独特な偏りがある。そこで、過去10年の3着以内の馬について、配合種牡馬を3代遡ったのが表1、更に詳しく3代血統表中の出現頻度を示したのが表2になる。素材的にはサンデーサイレンス、ミスタープロスペクター、ノーザンダンサーという主流血脈が幅を利かせている点で他のレースとそれほど変わりはないが、北米テーストの強さがいくらか目立っている。


表1) フェブラリーS入着馬の血統(過去10年)
馬名性齢母の父祖母の父
2000ウイングアロー牡6アサティスUSAミスターシービーネヴァービートGB
ゴールドティアラUSA牝5Seeking the GoldChief's CrownRiva Ridge
ファストフレンド牝7アイネスフウジンノーザンテーストCANシルバーシャークIRE
2001ノボトゥルーUSA牡5Broad BrushNaskraLe Fabuleux
ウイングアロー牡6アサティスUSAミスターシービーネヴァービートGB
トゥザヴィクトリー牝5サンデーサイレンスUSANureyevSharpen Up
2002アグネスデジタルUSA牡5Crafty ProspectorChief's CrownAlleged
トーシンブリザード牡4デュラブUSAブレイヴェストローマンUSAテスコボーイGB
ノボトゥルーUSA牡6Broad BrushNaskraLe Fabuleux
2003
中山
1800
ゴールドアリュール牡4サンデーサイレンスUSANureyevHostage
ビワシンセイキ牡5フォーティナイナーUSANorthern DancerNew Providence
イーグルカフェUSA牡6GulchNureyevDamascus
2004アドマイヤドン牡5ティンバーカントリーUSAトニービンIRENorthern Dancer
サイレントディール牡4サンデーサイレンスUSANureyevSharpen Up
スターリングローズ牡7アフリートCANDanzigBuckpasser
2005メイショウボーラー牡4タイキシャトルUSAStorm CatSearch Tradition
シーキングザダイヤUSA牡4Storm CatSeeking the GoldSeattle Slew
ヒシアトラス牡5ティンバーカントリーUSAAlydarLt. Stevens
2006カネヒキリ牡4フジキセキDeputy MinisterMr. Prospector
シーキングザダイヤUSA牡5Storm CatSeeking the GoldSeattle Slew
ユートピア牡6フォーティナイナーUSAノーザンテーストCANDewan
2007サンライズバッカス牡5ヘネシーUSAリアルシャダイUSAサーペンフロGB
ブルーコンコルド牡7フサイチコンコルドブライアンズタイムUSAヴェンチアGB
ビッググラス牡6エルコンドルパサーUSAイブンベイGBリイフォーGB
2008ヴァーミリアン牡6エルコンドルパサーUSAサンデーサイレンスUSAノーザンテーストCAN
ブルーコンコルド牡8フサイチコンコルドブライアンズタイムUSAヴェンチアGB
ワイルドワンダー牡6ブライアンズタイムUSAサンデーサイレンスUSAMr. Prospector
2009サクセスブロッケン牡4シンボリクリスエスUSAサンデーサイレンスUSADeputy Minister
カジノドライヴUSA牡4MineshaftDeputy MinisterBlushing Groom
カネヒキリ牡7フジキセキDeputy MinisterMr. Prospector
太字は4回以上現れる種牡馬

表2)フェブラリーSの重要血脈
過去10年の3着以内馬の3代血統表中にのべ
3回以上現れた種牡馬。太字は今回の出走馬
3代以内に現れるもの
順位種牡馬回数
Mr. Prospector16
Northern Dancer14
Halo
サンデーサイレンスUSA
Raise a Native
Roberto
Deputy Minister
Hail to Reason
Le Fabuleux
Nureyev
Sadler's Wells
Storm Bird
Storm Cat
14ノーザンテーストCAN
14ブライアンズタイムUSA
14Caerleon
14Danzig
14Graustark
14Seattle Slew
14Seeking the Gold
14Topsider
14Understanding
14Vice Regent

 スーニUSAは血統表の3代目にデピュティミニスター、クラフティプロスペクター(その父ミスタープロスペクター)が並び、ディキシーランドバンドもノーザンダンサー直仔のパワフルな血脈で、“重要血脈”を3本揃えた。残るひとつプレザントコロニーもリボー系の名馬で、リボー系の血はブライアンズタイムUSAの母の父グロースターク、ノボトゥルーUSAの父の母の父ホイストザフラッグ、アグネスデジタルUSAの祖母の父アレッジドなど、血統表中に潜んで重要な役割を果たしている。父は2歳時にケンタッキージョッキークラブSG2に勝ち、3歳時にはウエストヴァージニアダービーG3をレコード勝ちという、競走馬としてはそれなり、種牡馬としては貧弱な競走成績を残した。母の父はカリフォルニアンSG1をサンデーサイレンスの翌年に制したが、これも種牡馬としては2頭の重賞勝ち馬を出したのみ。牝系は3代母まで遡ってようやく、産駒にソロリティSG1のファンシーナスクラ、ジョンA.モーリスHG1のロージズキャンティナ、孫にフューチュリティSG1のモントリオールレッドが出ている。そのような血統だけに、遠い偉大な祖先の良さがうまい具合に出て、ここまでの実績を残してきたと考えられる。しかも、4代母の娘のファンシミンUSAは日本に輸入されて多くの活躍馬を送り、ラインクラフトやソングオブウインドの牝祖となった。父の名も曹洞宗に因んだものらしく、いわれてみれば日本向きという要素が満載だったわけ。

 エスポワールシチーの父は中山1800mで行われた03年の勝ち馬だが、同じサンデーサイレンスUSA×ヌレエフのトゥザヴィクトリーが01年に3着、サイレントディールが04年に2着しているように、東京だから割り引く必要はない。母の父ブライアンズタイムUSAも“重要血脈”リストに名前があり、祖母の父ブレイヴェストローマンUSAもダート血統として名高い。このレースでも娘の仔トーシンブリザードの2着がある。ブライアンズタイムUSA×ブレイヴェストローマンUSAという母の配合は菊花賞馬スリーロールスの母と共通するもので、汎用性に富んだパワーを提供する組み合わせ。

 同じ父の▲オーロマイスターは母の父リアファンがロベルト直仔、祖母の父クラフティプロスペクターがミスタープロスペクター直仔だから、“重要血脈”リストに照らすとフルマーク。ロベルト×ミスタープロスペクターも大レース向きのニックスとして定評がある。

 サクセスブロッケンは母がサンデーサイレンスUSA×デピュティミニスターで、父はロベルト直仔×シアトルスルー直仔。3代母の父もリボー系プレザントコロニーだから、ミスタープロスペクター以外の装備は全て揃っている。4歳になってからは半期に一度の大パフォーマンスという形になっているが、父シンボリクリスエスUSAも3歳秋以降は1走おきの大パフォーマンスだった。このあたりの符合がどうなのか。

 リーチザクラウンは父がサンデーサイレンス直仔で、母がシアトルスルー×ミスタープロスペクターだから、だいたい3/4を“重要血脈”が占める。牝系もチーフズクラウンやウイニングカラーズ、タップダンスシチーと同じ名門。3/4くらいの確率でダートもこなせるのではないだろうか。

 レッドスパーダはメイショウボーラーと同じタイキシャトルUSA×ストームキャット。初ダートでも安心して見ていられるのはこちら。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2010.2.21
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