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ネオユニヴァース産駒のアンライバルドが皐月賞で、ロジユニヴァースが東京優駿でそれぞれ父子制覇を達成し、牝馬はスペシャルウィーク産駒のブエナビスタが2冠を獲得。この春のクラシックはクラシック馬の産駒が占めることになった。他にもキングヘイロー→ローレルゲレイロのG1高松宮記念父子制覇もあって、要するにチーフベアハートCAN産駒マイネルキッツのG1天皇賞(春)以外は全て日本の大レース勝ち馬の2代目が勝ったことになる(下表)。これは肯定的に見れば日本馬のレベルアップによる結果であるし、逆にいえば強力な新規輸入血統がなかったことによる。88年に29頭あった種牡馬の輸入は04年には3頭に、97年に453頭あった輸入競走馬は08年には167頭へと減少している。もっとも、繁殖牝馬の輸入は同じ水準で推移していて、種牡馬や競走馬はいいものを精選して輸入すればいいので、血統の更新が停滞しているわけではないが、やはり、分母が小さくなった以上、第二のサンデーサイレンスUSA、第二のグラスワンダーUSAが発掘される確率は低くなった。一方で、日本馬のレベルアップという見方に立てば、従来の超輸入超過型を脱して、一人前の競馬国へと向かう健全な流れにあると考えることもできる。 |
| 2009年のG1/Jpn1勝ち馬 太字は父子制覇 | |||
| 月日 | レース | 勝ち馬 | 父 |
| 1/28 | 川崎記念 | カネヒキリ | フジキセキ |
| 2/22 | フェブラリーSG1 | サクセスブロッケン | シンボリクリスエスUSA |
| 3/29 | 高松宮記念G1 | ローレルゲレイロ | キングヘイロー |
| 4/12 | 桜花賞 | ブエナビスタ | スペシャルウィーク |
| 4/19 | 皐月賞 | アンライバルド | ネオユニヴァース |
| 5/3 | 天皇賞(春)G1 | マイネルキッツ | チーフベアハートCAN |
| 5/5 | かしわ記念 | エスポワールシチー | ゴールドアリュール |
| 5/10 | NHKマイルCG1 | ジョーカプチーノ | マンハッタンカフェ |
| 5/17 | ヴィクトリアマイルG1 | ウオッカ | タニノギムレット |
| 5/24 | 優駿牝馬 | ブエナビスタ | スペシャルウィーク |
| 5/31 | 東京優駿 | ロジユニヴァース | ネオユニヴァース |
| 6/7 | 安田記念G1 | ウオッカ | タニノギムレット |
| 6/24 | 帝王賞 | ヴァーミリアン | エルコンドルパサーUSA |
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これまでその例のないG1宝塚記念も、今年の傾向に沿えば父子制覇が実現しそうだ。99年の勝ち馬グラスワンダーUSAは昨年の秋にスクリーンヒーローがG1ジャパンCに勝ち、セイウンワンダーが朝日杯フューチュリティSを制した。それぞれ最優秀古牡馬、最優秀2歳牡馬に選ばれて一気に2頭のチャンピオンの父となり、G2レベルまでは行ってもその先に壁があるという、それまでのイメージを払拭してみせた。◎スクリーンヒーローは母の父がブルードメアサイアー・ランキングの首位を独走するサンデーサイレンスUSA。13日には娘の子フロレンティーノ(ラインクラフトの半弟)が米G2ジェファーソンカップSを逃げ切っており、その影響力は日本にとどまらない。セイウンワンダーもサクラメガワンダーもこの父との組み合わせだから信頼性が高いだけでなく、不振からの立ち直りが早いことも推察され、前走の大敗が尾を引くことはなさそうだ。祖母のダイナアクトレスはノーザンテーストCANの代表産駒の一頭で、G1級の勝ち鞍こそないものの、ジャパンC3着や宿敵ニッポーテイオーとの死闘の数々によって鮮烈な印象を残し、87年と88年の2度にわたって最優秀古牝馬に選ばれている。デビューから3連勝した早熟な才気と、牡馬相手に戦ったことで実力に見合うタイトルを得たとはいえない点で、同じノーザンテースト産駒で先輩格の名牝ダイナカールに似ており、それを追うように名門牝系の祖としても成功の道を歩んでいる。3代母モデルスポートはクラシック不出走ながら、3歳(旧4歳)秋に牝馬東タイ杯とダービー卿CTを連勝し、クラシック組を抑えて最優秀4歳牝馬に選ばれている。スクリーンヒーローもG1ジャパンCの長打一発で最優秀古馬に選ばれたように、ここ一番で成果を挙げるのがファミリーの伝統。その点でもグランプリマスター・グラスワンダーUSAとの相性はピッタリ。 グラスワンダーUSAの血統をおおまかに腑分けすると、父系ヘイルトゥリーズン、母の父ダンチヒ、祖母の父リボー系となる。○ディープスカイも父系ヘイルトゥリーズン系、母の父ダンチヒ系、祖母の父リボー系だから、骨組みは似ている。グラスワンダーUSAをアグネスタキオナイズしたものと考えれば、大変な破壊力を備えていそうなことは想像できる。また、同じ名門ミスカーミー系から出た04年の勝ち馬タップダンスシチーUSAは、ミスカーミーにボールドルーラー系種牡馬、ノーザンダンサー、リボー系種牡馬を配合されていたので、ミスカーミーにボールドルーラー系種牡馬、リボー系種牡馬、ノーザンダンサー系種牡馬を重ねられたディープスカイの母アビGBと似た構成。宝塚記念向きかどうかは分からないが、縁の深い血統であるのは確か。ボールドルーラー血脈を3本持ち、1600mの後でもあるので、いつもより前に行って押し切る形も取れるのではないか。 ▲アルナスラインはヘイルトゥリーズン系×ノーザンダンサー系×リボー系×レイズアネイティヴという配合だから、これもグラスワンダーUSA・パターン。しかも、亡きダービー馬アドマイヤベガ、全欧3歳チャンピオン・エルグランセニョールといずれも希少性が高く、血統表の2代目、3代目と隙間なく名血が並ぶあたりには、いつ大仕事をしても驚けない奥の深さが感じられる。 △マイネルキッツの父チーフベアハートCANは、タイテエム牝馬との配合で朝日杯のマイネルレコルトを出し、サクラユタカオー牝馬からニュージーランドTに勝ち先週福島で単勝4550円の大穴をあけたトーホウレーサーを出している。日本の血統と不思議な和合性を示すようで、その最大の成功例がサッカーボーイ牝馬との配合によって現れた。サッカーボーイの血は03年に直仔ヒシミラクルが勝ったほかにも、娘の産駒ツルマルボーイの2着、全妹の産駒ステイゴールドの2着、3着、全妹の孫バランスオブゲームの3着と、人気薄で何度も馬券圏内に食い込んだ実績がある。ヒシミラクルのような意外な連勝があっても意外とはいえない。 ドリームジャーニーの父ステイゴールドは、98年にサイレンススズカから3/4馬身差の2着、翌年はグラスワンダーUSA、スペシャルウィークに続く3着、00年にはテイエムオペラオーから0秒3差の4着、01年はメイショウドトウIREから0秒4差4着。4回の宝塚記念出走で1億1240万円とほぼ1着賞金に近い額を稼いだ。母の父メジロマックイーンは91年にメジロライアンの2着、93年に優勝していて、この2頭の経験値を合わせればグラスワンダーUSAを軽く凌ぐ。 スマートギアの父は97年の勝ち馬。父子制覇の多い今年でも、同一騎手によるものは初めて。 |
競馬ブック増刊号「血統をよむ」2009.6.28
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