2009ジャパンC


王冠に手を伸ばせ

 今年の芝競馬は欧州に3歳のシーザスターズという久々の大スターが現れ、マイル路線は前年に続いて名牝ゴルディコヴァが君臨した。北米でもジオポンティがG1に4連勝して芝の久々の大物となり、オールウェザーに挑んだブリーダーズCクラシックG1でもゼニヤッタの2着と健闘。そのようになかなかの充実を示した北半球の芝戦線から長距離戦を抜き出したのが下表。シーザスターズ不在のキングジョージVI世&クイーンエリザベスSG1とブリーダーズCターフG1の2つに勝ったコンデュイットIREの活躍が光る。父のダラハニは03年の凱旋門賞G1勝ち馬なので、父仔で芝3大レース制覇と見ることもできる。凱旋門賞G1はアーバンシーUSA=シーザスターズという母仔制覇だったし、親子G1制覇の流れは日本だけではなかったようだ。下表でもうひとつ気付くのがジャパンC卒業生の種牡馬としての活躍。シングスピールIRE、モンジューIREがこの路線で複数のG1勝ち馬を送り出し、今年3月に世を去ったアーバンシーUSAも93年のこのレースを走っている(8着)。何だかんだといわれながらも、ジャパンCが2400m血統の揺籃として立派に機能していることが分かる。今回の出走馬の父のうち、ジャパンC卒業生はスペシャルウィーク(99年1着)、ジャングルポケット(01年1着)、ファンタスティックライトUSA(00年3着)、チーフベアハートCAN(98年4着)、ホワイトマズルGB(93年13着)の5頭。そのあたりから勝ち馬は出るのではないだろうか。


2009年 北半球の芝長距離戦(2200〜2400m)
日付レース名競馬場距離条件勝ち馬(父)着差2着馬着差3着馬
3-28ドバイシーマクラシックナドアルシバ2400m3歳上イースタンアンセム(シングスピールIRE)noスパニッシュムーンshdパープルムーンIRE
5-24優駿牝馬東京2400m3歳牝ブエナビスタ(スペシャルウィーク)noレッドディザイアジェルミナル
5-31東京優駿東京2400m3歳牡牝ロジユニヴァース(ネオユニヴァース)リーチザクラウンhdアントニオバローズ
6-5オークスエプソム12F10y3歳牝サリスカ(ピヴォタル)hdミッドデイ2.5ハイヒールド
6-5コロンーションCエプソム12F10y4歳上アスク(サドラーズウェルズ)noユームザインnoルックヒア
6-6ダービーエプソム12F10y3歳牡牝シーザスターズ(ケープクロス)1.75フェームアンドグローリーnkマスターオブザホース
6-14ミラノ大賞サンシーロ2400m3歳上キハノ(アカテナンゴ)エージオブリーズンhdヴワライシ
6-28愛ダービーカラ12F3歳牡牝フェームアンドグローリー(モンジューIRE)ゴールデンソードムーラヤン
6-28サンクルー大賞サンクルー2400m4歳上スパニッシュムーン(エルプラド)1.5アルピーヌローズ1.5ユームザイン
6-28宝塚記念阪神2200m3歳上ドリームジャーニー(ステイゴールド)1.75サクラメガワンダーnkディープスカイ
7-4ユナイティドネーションズSモンマス11F3歳上プレシャスパッション(ロイヤルアンセム)ローロ4.5ブラスハット
7-5独ダービーハンブルク2400m3歳牡牝ヴィーナーヴァルツァー(ダイナフォーマー)1.25ゾルディノnkタフネスダノン
7-11マンノウォーSベルモント12F3歳上ジオポンティ(テールオブキャット)1.75マスケティア0.5キハノ
7-12愛オークスカラ12F3歳牝サリスカ(ピヴォタル)ロージズフォーザレティ4.5ミッドデイ
7-14パリ大賞ロンシャン2400m3歳牡牝キャヴァルリマン(ホーリング)1.5エージオブアクエリアスマスタリー
7-19ドイツ賞デュッセルドルフ2400m3歳上ゲッタウェイ(モンズーン)0.75フラミンゴファンタジーnoアペルオメトル
7-25KジョージVI世&QESアスコット12F3歳上コンデュイットIRE(ダラハニ)1.75タータンベアラーhdアスク
8-2独オークスデュッセルドルフ2200m3歳牝ナイトマジック(ショーロホフ)4.5ゾベラニア0.5アンドレア
8-15ソードダンサー招待Sサラトガ12F3歳上テリング(エーピーインディ)ベタートークナウUSAブラスハット
8-16ラインラントポカルケルン2400m3歳上ヴィーナーヴァルツァー(ダイナフォーマー)shdゲッタウェイ2.5イースタンアンセム
8-20ヨークシャーオークスヨーク12F3歳上牝ダーレミ(シングスピールIRE)0.75サリスカ1.5ローマンエンプレス
9-6バーデン大賞バーデンバーデン2400m3歳上ゲッタウェイ(モンズーン)イースタンアンセム0.5ユームザイン
9-13ヴェルメーユ賞ロンシャン2400m3歳上牝(snk)スタチェリータ(モンズーン)1.5プルマニアshdボードミーティング
9-20ノーザンダンサーターフSウッドバイン12F3歳上(0.5)ジャストアズウェルUSA(エーピーインディ)0.5キハノhdシャンゼリゼ
9-27ヨーロッパ賞ケルン2400m3歳上ジュークボックスジュアリー(モンジューIRE)noイースタンアンセム2.5エリオット
10-3JHターフクラシック招待Sベルモント12F3歳上インターパテイションUSA(ラングフール)1.75ジオポンティ1.75+0.5グランクチュリエ
10-4凱旋門賞ロンシャン2400m3歳上牡牝シーザスターズ(ケープクロス)ユームザインhdキャヴァルリマン
10-17カナディアン国際Sウッドバイン12F3歳上シャンゼリゼ(デインヒルUSA)0.5ジュークボックスジュアリーブチェラティ
10-18ジョッキークラブ大賞サンシーロ2400m3歳上スキャパレッリ(モンズーン)1.75サンタントニオ0.5ヴワライシ
11-7BCターフサンタアニタ12F3歳上コンデュイットIRE(ダラハニ)0.5プレシャスパッション1.25ダーレミ
11-15エリザベス女王杯京都2200m3歳上牝クィーンスプマンテ(ジャングルポケット)1.5テイエムプリキュアnkブエナビスタ
太字は今回の出走馬、父の太字はJC卒業生

 スペシャルウィークの三冠(3)(1)(2)に比べると、リーチザクラウンの(13)(2)(5)は波の大きな成績。これはシアトルスルー×ミスタープロスペクター×セクレタリアトという米国血脈によってもたらされたパワーとスピードが仇となった。父が日本的な「柔」なら、こちらは米国的な「剛」。いずれの傾向もサンデーサイレンス血脈によって増幅されるが、それが悪いほうに出たのがクラシックでの不振につながった。力を持て余してしまったわけだ。しかし、ジャパンCでは、フィジカルな力の絶対値を競うような争いになりやすい。そこで今度は2頭の米三冠馬が入る母クラウンピースの血が生きてくる。祖母クラシッククラウンUSAがフリゼットSG1、ガゼルHG1に勝った名牝で、ミスカーミーに遡る牝系は昨年の2着馬ディープスカイ、03年に歴史的大勝を果たしたタップダンスシチーUSAと同じ。

 ファンタスティックライトUSAは00年と01年の2年連続ワールドレーシング・チャンピオンシップ(99〜05年に施行)の王座に就いた名馬だが、00年のジャパンCではテイエムオペラオー、メイショウドトウIREに続く3着、01年のドバイシーマクラシック(当時G2)では決勝線上でステイゴールドの強襲に屈した。なかなかの親日家といえよう。その産駒シンティロGBは大敗を続けての来日。G1での力量不足もほぼはっきりしていて、常識的には狙い辛い。ただ、母は仏1000ギニーG1、フォレ賞G1に勝った名牝で、半兄ジャンバジュキバもアイルランドで休みなく走って、いつの間にか重賞4勝を挙げている。血統だけで穴を狙うとすると、これではないか。

 コンデュイットIREは完全欧州仕様の配合で、一見、日本でのスピード不足が懸念されるところだが、4代母はサニーヴァリー。皐月賞馬アンライバルドの3代母であり、カンパニーの父ミラクルアドマイヤの3代母であり、そして、やはり完全な欧州型血統の日本ダービー馬フサイチコンコルドの3代母。日本にも合う欧州血統というよりも、普遍的な強さを秘めた名門ファミリーなのだと思う。

 コンデュイットIREのスタウト師は96年にシングスピールIRE、97年に今回と同じ勝負服のピルサドスキーIREでこのレースを連覇。2着にはそれぞれファビラスラフインFR、エアグルーヴと牝馬を連れてきた。コンデュイットから狙う場合、過去の例からは相手にウオッカかレッドディザイアを取るのが正しいことになる。レッドディザイアは母がカーリアン×サドラーズウェルズのフサイチコンコルド配合。3代母の産駒ベルメッツUSAは90年のキングジョージVI世&クイーンエリザベスSに勝ち、ジャパンCでは1番人気で7着に敗れた(勝ち馬ベタールースンアップAUS)。ファミリーとしては19年ぶりの雪辱がかかった一戦でもある。ウオッカは名門フロリースカップGB系ワカシラオキの分枝にダンディルートFR、トウショウボーイとトウショウ牧場の典型的ともいえる配合を施された日本的なボトムライン。崩れても何度も立ち直る渋太さはそのあたりに由来しているのだろう。巻き返しがあって当然。


競馬ブック増刊号「血統をよむ」2009.11.29
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