2009フェブラリーS


高速ダートを突っ走れ

 レジネッタの桜花賞に始まってアドマイヤジュピタの天皇賞・春、エイシンデピュティの宝塚記念と昨年の上半期はフレンチデピュティUSA産駒が大活躍した。秋になるとそれらは失速してしまったが、代わってスプリンターズSをクロフネUSA産駒のスリープレスナイトが勝ち、日本では不振の底に沈んでいたデヒアUSA産駒からも京阪杯のウエスタンダンサーが現れ、暮れにはデヒアUSAの孫スーニUSAが2歳ダートチャンピオンになった。これまで日本では、ダートなど限られた条件下での活躍か、例外的な大物の出現に頼っていたデピュティミニスター系は、昨年一気にブレークスルーを果たした(下表参照)。こういったことは、たとえば今では当たり前のように一流馬を出すミスタープロスペクター系にもいえて、硬いとか重いとか、当初はいろいろ日本の競馬に合わない部分があっても、生産・育成・調教のそれぞれの段階でうまく軌道修正することで、素質を発揮できるようになるのだと考えられる。
 デピュティミニスターは米国で97年と98年の2度リーディングサイアー(デイリーレーシングフォーム誌)の座に就いたが、その原動力となった1頭がフェラーリピサUSAの父タッチゴールド。シルバーチャームUSAの三冠達成を寸前で阻んだベルモントS(12F)勝ち馬。その後、夏のハスケル招待H(9F)にも勝ってG1・2勝で種牡馬となり、これまでにG1勝ちの産駒は4頭。そのうちミダスアイズとマスメディアの2頭が7FのフォアゴーS勝ち馬だから、北米の一流種牡馬に不可欠な優れたスピードを伝えていることが分かる。むしろ、ベルモントSの看板が自身の稼業の邪魔になっているとさえいえるくらいだ。一方の母はボールドルーラーの5×4を含めてナスルーラ血脈が6本入っており、ノーザンダンサー3×3でナスルーラを持たない父とは好対照をなす。また、父の持つバックパサーと母の持つシアトルスルーを通じて入る名牝ラトロワンヌの血が大レース向きの底力を支えるのではないだろうか。


勢力を拡大するデピュティミニスター系
〜日本での重賞勝ち馬〜
Deputy Minister デピュティミニスター(牡、79年生、黒鹿毛、カナダ産、父Vice Regent)
      加米で2〜4歳時22戦12勝、ローレルフューチュリティG1、ヤングアメリカSG1、ドン
      HG2、トムフールSG2、米最優秀2歳牡馬、加最優秀2歳牡馬、加年度代表馬
  Silver Deputy シルヴァーデピュティ(牡、85年、鹿、カナダ産)加で2歳時2戦2勝
   | ディバインシルバーUSA(牡、98年、栗、米国産)クラスターC、黒船賞、
   |     北海道スプリントC、全日本サラブレッドC
   | アタゴタイショウUSA(牡、00年、黒鹿、米国産)函館2歳S
  デヒアUSA Dehere(牡、91年、鹿、米国産)米で2、3歳時9戦6勝、シャンペンSG1、
   |     ホープフルSG1、ファウンテンオブユースSG2、サラトガスペシャルG2、サン
   |     フォードSG3、米最優秀2歳牡馬
   | Soto ソト(牡、00年、栗、米国産)米で2、3歳時6戦5勝、ジョッキークラブSG2、
   |  |   ウエストヴァージニアダービーG3
   |  | スーニUSA(牡、06年、鹿、米国産)全日本2歳優駿、兵庫ジュニアグランプリ
   | ケイアイガード(牡、01年、鹿)ラジオたんぱ賞
   | ウエスタンダンサー(牝、04年、鹿)京阪杯G3
  フレンチデピュティUSA French Deputy(牡、92年、栗、米国産)米で2、3歳時6戦4勝、
   |     ジェロームHG2
   | ノボジャックUSA(牡、97年、栗、米国産)JBCスプリント、東京杯、黒船賞×2、群馬
   |     記念×2、北海道スプリントC
   | クロフネUSA(牡、98年、芦、米国産)2、3歳時10戦6勝、ジャパンCダート、NHKマイ
   |  |   ルC、武蔵野SG3、毎日杯
   |  | フサイチリシャール(牡、03年、芦)朝日杯フューチュリティS、阪神C、東スポ杯2歳
   |  |   S
   |  | スリープレスナイト(牝、04年、鹿)スプリンターズSG1、CBC賞G3、北九州記念
   |  | ホワイトメロディー(牝、04年、芦)関東オークス、クイーン賞
   |  | オディール(牝、05年、芦)ファンタジーS
   |  | ユキチャン(牝、05年、白)関東オークス
   | エイシンデピュティ(牡、02年、栗)宝塚記念G1、金鯱賞G2、京都金杯G3、エプソムC
   |     G3
   | サンアディユ(牝、02年、鹿)セントウルSG2、京阪杯G3、アイビスサマーダッシュ
   | ライラプス(牝、02年、栗)クイーンC
   | ブライトトゥモロー(牡、02年、鹿)新潟大賞典
   | アンブロワーズ(牝、02年、鹿)函館2歳S
   | アドマイヤジュピタ(牡、03年、栗)天皇賞・春G1、阪神大賞典G2、アルゼンチン共和
   |     国杯
   | フレンドシップ(牡、03年、鹿)ジャパンダートダービー
   | サイレントプライド(牡、03年、栗)富士SG3、ダービー卿チャレンジTG3
   | アルーリングボイス(牝、03年、鹿)ファンタジーS、小倉2歳S
   | ピンクカメオ(牝、04年、鹿)NHKマイルC
   | レジネッタ(牝、05年、鹿)桜花賞
  トーヨーシアトルUSA(牡、93年、栃栗、米国産)東京大賞典、東海菊花賞、平安S
  トーヨーレインボーUSA(牡、94年、鹿、米国産)シリウスS、中京記念
  Touch Gold タッチゴールド(牡、94年、鹿、米国産)加米で2〜4歳時15戦6勝、ベルモント
        SG1、ハスケル招待HG1、レキシントンSG2
    フェラーリピサUSA(牡、04年、鹿)根岸SG3、兵庫チャンピオンシップ、エルムS
子孫の太字は日本でのGI/JpnI勝ち馬

 カジノドライヴUSAは母の父がデピュティミニスターで、父系がシアトルスルーだから、フェラーリピサUSAを天地逆にした配合。兄姉はベルモントSに勝ったジャジル、ラグズトゥリッチズで、牝系はエルグランセニョールからフサイチパンドラまで、尽きることなく一流馬を送り出すベストインショウ系。父のマインシャフトは3歳時欧州で走って芽が出ず、4歳で米国に戻ると11戦9勝2着2回、ジョッキークラブGCなどG1・4勝のほぼパーフェクトな成績で03年の米最優秀古馬に選ばれている。晩成型という血統でもないが、そういう父であれば、子も4歳になってひと皮むける可能性は高い。

 ▲カネヒキリも母の父がデピュティミニスター。この父でもダート専門になるあたりは、母系に入っていかに強い影響を与えているかが分かる。この母は不出走ながらシルヴァーデピュティ(オウケンブルースリの母の父でもある)の全妹で、祖母の父として入るMr.プロスペクターの血が、フジキセキとの配合で生きているよう。それにしても、屈腱炎による長いブランクを克服して能力を取り戻すあたりはサンデーサイレンスUSAの影響なんでしょうね。

 サクセスブロッケンは祖母の父がデピュティミニスター。母はフィリーズレビューに勝った快足で、3代母コロニアルウォーターズは2歳から6歳まで一線級で走ってG1ジョンA.モリスHなど6勝を挙げた。先週のダイヤモンドSは父の産駒モンテクリスエスが制したが、これは早い時期に素質を示し、その後しばらく条件級でのモタつきを経て本格化して重賞制覇。こういった成長の仕方は父の産駒に多いのではないだろうか。そう考えると、秋の不振は古馬の壁だけではなく、自身停滞期にあったよう。4歳を迎えて反攻に転じても不思議はない。

 エスポワールシチーはミニ・ゴールドアリュールといった雰囲気で、走り方もよく似ている。父は中山施行時の勝ち馬。母の父ブライアンズタイムUSAのダートでの代表馬ブルーコンコルドはこのレースに4回出走して(5)(4)(2)(2)と微妙にズレはあるが、6代母ヒロイチはオークス馬だし、ダービー馬メリーナイスも出るチップトップUSA系。東京の大レースには強いかも。


競馬ブック増刊号「血統をよむ」2009.2.22
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