2008宝塚記念


フレンチの☆☆☆

 この上半期を簡単にまとめると(1)アグネスタキオンの3歳牡馬3大レース独占、(2)フジキセキの健闘、(3)フレンチデピュティの大活躍(順不同)。特にフレンチデピュティはエイシンデピュティの京都金杯に始まり、重賞全般での活躍が目立った。「種牡馬成績」(下表)の「重賞賞金(重賞での収得賞金)」はここまでで既に昨年1年かけて稼いだ金額と大差ないレベルに到達。前年同時期の「重賞賞金」は270,583,000円だから、上級馬が倍のペースで稼いでいることになる。マル外として入ったクロフネの登場時(種牡馬成績表では01年)、それは平均的フレンチデピュティ産駒像からはみ出した特殊な例と片づけられることが多かった。誰だってクロフネ級がゴロゴロ出現するとは思わないだろう。実際、日本に輸入されて04年に“新種牡馬”として再デビューを果たすと、平均的産駒像を越える大物の出現もなかったのだが、ここにきて様相は変わってきた。昨年でも新潟大賞典の1、2着とか、エプソムC1〜3着独占というG3レベルでの小さな快挙は目についたが、今年は一気にスケールアップし、桜花賞と天皇賞(春)という倍も違う距離で頂点に立った。遅まきながら、これはフレンチデピュティ観を改めなければなりません。そこで、エイシンデピュティ。現6歳の輸入後初年度世代で、条件馬時代が長く、その意味では早熟なフレンチデピュティ産駒らしくない面を示していたわけだが、ピークが後ろに来たぶん、それがより高くなったと考えることもできる。祖母がパンアメリカンH、ビヴァリーヒルズSなどの米G1で2着があり、3代母が米G1サンタバーバラH勝ち馬、4代母スタイルの子孫に米G1アラバマSのスピットカールやオールカマーのホオキパウェーブがいて、遡ればマルゼンスキーも出る上質な牝系。母の父ウッドマンはノーザンダンサー系種牡馬との組み合わせで力強い一流馬を出すケースが多い。現在の世界最強馬カーリンは父がミスタープロスペクター直仔で母の父がデピュティミニスターだから、これをさかさまにしたパターンになる。


フレンチデピュティUSA産駒の大活躍
月日 レース 距離 勝ち馬 母の父
1/5 京都金杯G3 芝1600m エイシンデピュティ Woodman
2/2 ロバートB.ルイスSG2 ダ8.5F リフレクトタイムズ Seeking the Gold
3/16 フィリーズレビュー 芝1400m レジネッタ サンデーサイレンスUSA
3/23 阪神大賞典G2 芝3000m アドマイヤジュピタ リアルシャダイUSA
4/6 大阪杯G2 芝2000m エイシンデピュティ Woodman
4/6 ダービー卿チャレンジTG3 芝1600m サイレントプライド サンデーサイレンスUSA
4/13 桜花賞 芝1600m レジネッタ サンデーサイレンスUSA
5/4 天皇賞・春G1 芝3200m アドマイヤジュピタ リアルシャダイUSA
5/4 スイートピーS 芝1800m アロマキャンドル サンデーサイレンスUSA
5/25 オークス 芝2400m レジネッタ サンデーサイレンスUSA
5/31 金鯱賞G2 芝2000m エイシンデピュティ Woodman
6/18 関東オークス ダ2100m プロヴィナージュ サンデーサイレンスUSA

フレンチデピュティUSAの種牡馬成績 (平地のみ、6月24日現在、JBIS発表)
年度 出走
頭数
出走
回数
勝馬
頭数
勝鞍
回数
重賞
勝馬
重賞
勝馬
1着賞金 重賞賞金 収得賞金  AEI  重賞AEI
1999 1 5 1 1 0 0 5,100,000 15,130,000 26,724,000 6.27 1.54
2000 6 26 4 6 0 0 57,185,000 19,152,000 86,347,000 3.39 0.51
01 8 60 6 15 2 10 625,139,000 652,375,000 740,323,000 22.60 22.40
02 10 54 6 9 1 1 102,009,000 71,785,000 200,064,000 5.21 3.79
03 13 67 7 10 1 1 89,700,000 97,208,000 178,038,000 3.63 5.20
04 76 268 27 32 1 1 212,728,000 123,399,000 442,834,000 1.56 0.93
05 180 867 97 138 2 3 690,710,000 162,694,000 1,169,370,000 1.77 0.89
06 224 1299 115 187 1 1 947,204,000 142,503,000 1,589,451,000 1.86 0.55
07 224 1333 102 168 6 8 1,205,752,000 595,077,000 2,071,348,000 2.38 2.81
08 179 731 62 85 4 6 801,128,000 573,974,000 1,172,734,000 2.72 4.47
合計 386 4710 271 651 14 31 4,736,655,000 2,453,297,000 7,677,233,000 2.01 2.42
※輸入後の産駒は04年2歳デビュー

 カワカミプリンセスの回避は残念だが、メイショウサムソンにとってはこれで風向き一変、秘かに快哉を叫んでいることだろう。3歳秋以降、牝馬と一緒に走るとどういうわけか勝てないのだから、牝馬がいるのといないのとでは大違い。在来の名門フロリースカップ系は昨春メイショウサムソンが天皇賞(春)、ウオッカがダービーと、古馬と3歳の上半期最大のレースに勝った。この春も好調で、レッドアゲートがフローラS、オースミグラスワンが新潟大賞典に勝ち、ブラックシェルはダービー3着に終わったものの、ウオッカが安田記念制覇。勢いに乗って総大将がここを勝てば、昨年並みかそれ以上の成果といえる。

 母がオークス2着馬、全妹エアメサイアは秋華賞に勝ち、叔父エアシャカールは2冠馬という良血▲エアシェイディも牝馬がいるとダメらしい。これは東京都在住の文筆業かなざわいっせい氏の研究によって明らかになった。では、安田記念に牝馬がいなければ突き抜けていたのだろうか……と、それは分からないが、ここにきてようやくG1レベルの良血が目覚めつつあるのは確かなようだ。サンデーサイレンス直仔が最後にG1に勝ったのはマツリダゴッホの有馬記念。産駒が残り少ないのだから、以前のようにG1に勝てなくなるのは当然だが、そのぶん人気薄で1頭という今回のようなケースでは怖さが増す。母の父としてのノーザンテーストは00年のジョービッグバン、06年のナリタセンチュリーと波乱を演出している。

 父としては第一線を退いたサンデーサイレンスも、昨年は勝ち馬と3着馬の母の父として存在感を示した。SSの娘の子サクラメガワンダーは、父が99年のこのレースの勝ち馬。まだ達成されていない父子制覇を目指す。先週マーメイドSに勝ったトーホウシャインがスペシャルウィーク×シルヴァーホークの配合で、この馬同様ヘイローとロベルトを経由したヘイルトゥリーズンの4×4。強敵相手に大駆けする可能性を秘めた配合といえるかもしれない。祖母の産駒に天皇賞(秋)のサクラチトセオー、エリザベス女王杯のサクラキャンドルが出る牝系も一流。

 04年生まれ(4歳)世代の牝馬上位の傾向は今年も続き、ウオッカが安田記念を圧勝したのに対して、牡馬はダート路線でフリオーソがやっと帝王賞に勝ったのみ。米国のカーリンがベルモントSで牝馬に敗れた後、その汚名を雪いで盛大にお釣りまでつけたのとは対照的といわざるを得ない。我が4歳牡馬はいつまで沈黙を続けるのでしょうか。そんな今イチ信頼し切れない4歳トリオからピックアップするとすればアサクサキングス。父は大駆け種牡馬ホワイトマズルで母の父が実績あるサンデーサイレンス。菊花賞時にできた序列がそのままという気もする。


競馬ブック増刊号「血統をよむ」2008.6.29
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