2008ヴィクトリアマイル


第三の女は灰色

 3月29日のドバイデューティフリーで4着だったウオッカ。父娘2代続けてお酒の名前なので、さすがにイスラム国家では派手な振る舞いを慎んだという見方ができるが、4着で十分に価値のある強力なメンバーでもあった。国内の牝馬限定戦でダイワスカーレットがいない今回は、普通に力を出せば3馬身ほどち切って勝って不思議ない。焦点はドバイからの帰国第一戦で果たしてどうなのかという部分に絞られるので、過去の日本からのドバイ遠征馬をまとめてみた(下表)。長旅と激戦のダメージでボロボロになって戦意喪失というケースが多いのかと思ったら、意外にみんな普通に復帰を果たしているようだ。レース後しばらくドバイに滞在して完全に回復してから香港に向かうクイーンエリザベス2世C組を別にすると、帰国後最短期間で結果を出したのはポップロック。ドバイシーマクラシック6着の57日後(ややこしいので時差なしとして)、目黒記念に勝った。今回のウオッカは前走から50日後なので1週間早い。同じ厩舎でノウハウはバッチリ、わずか7日の違いくらい……と思うでしょう。しかし、締め切りギリギリの7日というのは普通の7日とは違う。子供のころを思い出して下さい。夏休み序盤のゆっくり流れた1週間と、宿題山積の最後の1週間では全然長さが違うでしょう。今回はそういった点に厳しくこだわってとしてみた。

 ローブデコルテはオークス制覇後が不完全燃焼。里帰りとなったアメリカンオークスでは鼻出血、秋はインフルエンザ禍の影響でローズSに使えず、結局そのリズムの狂いを修正できなかった。ただ、そういった調子の波の大きさはグレイソヴリン系にはつねについて回るものだし、この春は牡馬相手の阪急杯で3着するなど復調気配。父のコジーンも3歳秋から4歳夏まで不振に陥り5戦して未勝利、その後、芝に転じて開眼、5歳秋にはブリーダーズCマイルを勝つまでになっている。その産駒には、BCクラシックでシガーを破ったアルファベットスープ、BCターフで大本命パラダイスクリークを差し切ったティッカネンといった大物食いがいて、日本での代表産駒アドマイヤコジーンも7番人気で安田記念に勝った。生真面目に走る反面、大レースでの穴血統という側面もある。牝系は祖母の産駒に朝日CC3着のキョウワアリシバ、孫に三冠牝馬スティルインラブ、曾孫に米G1パーソナルエンスンHのサマーコロニー、3代母の産駒に米G1オークリーフSのワンオブアクラインがいる。ノーザンダンサー、シーキングザゴールドという最高級種牡馬を重ねられた母の配合も奥が深い。復活の大駆けは十分。

 ▲エイジアンウインズはこの春大活躍したフジキセキ産駒。サンクラシークのドバイシーマクラシック圧勝、ファイングレインとキンシャサノキセキによる高松宮記念の1、2着独占に続いて自身も重賞初制覇を果たした。そのフジキセキの勢いはまだ持続しているのだろうかと疑問も生じる時期だが、昨年も同じような流れでコイウタがこのレースに勝った。3代母の産駒アーキペンコはドバイデューティフリー3着を経て香港でクイーンエリザベス2世Cを勝っているので、父系の失速を牝系の勢いでバックアップしている面もある。母の父としても大レースで力を発揮するデインヒルの存在は大きいし、祖母の父フォーティナイナーを経由して取り込まれたミスタープロスペクター血脈は、カネヒキリ、コイウタといった父の産駒の大物に通じる。

 トウカイオスカーは02年のマイルチャンピオンシップを11番人気で勝ったトウカイポイントと同じトウカイテイオー×リアルシャダイの配合。トウカイテイオー産駒はそのトウカイポイントのほか、阪神ジュベナイルフィリーズのヤマニンシュクル、かしわ記念のストロングブラッドと産駒のG1級勝利がいずれも1600m。リアルシャダイはこの春の天皇賞でアドマイヤジュピタの母の父として久々にその存在感を示した。いずれも名馬量産型ではないが、ここ一番で大仕事をするので印象に残りやすいのだろう。

 皐月賞のキャプテントゥーレ、NHKマイルCのディープスカイと、アグネスタキオンが3歳世代で大物量産体制をとりつつあるようだ。4歳世代の女王ダイワスカーレットは今回あいにく不在だが、それでもニシノマナムスメ、マイネカンナと2頭が調子を上げてここに挑む。ニシノマナムスメは皐月賞馬×桜花賞馬、父の母も桜花賞馬という豪華な血統で、この距離がベストなのは明らか。マイネカンナは母の父サッカーボーイがノーザンテースト血脈を持っていて、祖母の父がクリムゾンサタンなので、ダイワスカーレットとは血統的共通パーツが多い。ひょっとするとウオッカ・キラーはこれかも知れない。


ドバイ遠征馬の次走成績
年度 レー

馬名 次走
1996 WC ライブリマウント 6/30 札幌記念 13
1997 WC ホクトベガ      
1998 WC キョウトシチー 8/20 ブリーダーズゴールドC
2000 GM タガノサイレンス 6/25 レインボーS
SC ゴーイングスズカ 8/15 ブリーダーズゴールドC 10
WC ワールドクリーク 9/20 日本テレビ盃
2001 GM ノボトゥルーUSA 5/30 かしわ記念
SC ステイゴールド 6/24 宝塚記念G1
DF イーグルカフェUSA 6/10 エプソムC
WC トゥザヴィクトリー 11/11 エリザベス女王杯
WC レギュラーメンバー 7/27 マリーンS
2002 GS ブロードアピールUSA   引退  
SC ホットシークレット 5/18 目黒記念 16
WC アグネスデジタルUSA 4/21 クイーンエリザベスII世CG1
WC 11 トゥザヴィクトリー   引退  
2004 GS マイネルセレクト 9/8 さきたま杯
WC アドマイヤドン 6/30 帝王賞
WC リージェントブラフ   引退  
WC 12 サイレントディール 6/27 宝塚記念G1
2005 WC アジュディミツオー 9/23 日本テレビ盃
2006 GM ユートピア 07/5/2 ウエストチェスターHG3
UD フラムドパシオン      
UD ガブリンAUS 5/21 1600万下特別
GS アグネスジェダイ 5/14 栗東S 12
SC ハーツクライ 7/29 キングジョージVI世&クイーンエリザベスSG1
DF 12 ハットトリック 6/4 安田記念G1 13
DF 15 アサクサデンエンGB 6/4 安田記念G1
WC カネヒキリ 6/28 帝王賞
WC スターキングマンUSA 7/17 マーキュリーC
2007 UD ビクトリーテツニーUSA 6/24 1000万下特別 15
GM フサイチリシャール 5/12 京王杯スプリングCG2
GS 10 アグネスジェダイ 5/30 さきたま杯
GS 11 シーキングザベストIRE 10/27 武蔵野SG3 11
SC ポップロック 5/27 目黒記念
DF アドマイヤムーン 4/29 クイーンエリザベスII世CG1
DF ダイワメジャー 6/3 安田記念G1
WC ヴァーミリアン 10/31 JBCクラシック
※レース名略号……WC=ドバイワールドC(98年よりG1)、DF=ドバイデューティフリー(00年G3、01年G2、02年よりG1)、SC=ドバイシーマクラシック(00年G3、01年G2、02年よりG1)、GS=ドバイゴールデンシャヒーン(01年G3、02よりG1)、GM=ゴドルフィンマイル(01年G3、02年よりG2)、UD=UAEダービー(01年G3、02年よりG2)

競馬ブック増刊号「血統をよむ」2008.5.18
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