2008NHKマイルC


生粋の馬力血統

 このレースの過去12年は外国産馬が活躍した前期、内国産馬中心の争いとなった後期の2つに分けられる。後期はクラシック級の出走の有無によって更に2つに分かれる。それが外見上の違いで、それぞれレベルのバラつきも大きいように見える。しかし、エルコンドルパサーなど1番人気に応えて勝った名馬4頭や桜花賞馬ラインクラフトといった特別な存在を取り除いてみると、基礎となるレベルは意外に毎年同じようなもの。後年G1勝ち級、重賞級、条件級が入り交じって上位を形成している。これは普通にいうとレベルが低いということになるのだが、見方を変えると、この時期の3歳馬にとって東京1600mには特殊な何かがあって、ここでの好走が他の舞台でも同様に能力を発揮できる保証にならないということかもしれない。下表に見る通り、同一種牡馬の産駒による1、2着と2、3着が多く、サンデーレンス以外でこういったことが起こるのは珍しい。これも馬場状態や展開によって血統的な向き不向きが極端に出ることを示している。

 で、今回、どういう血統がいいのか……そんなことね、私も分かりませんわ。それでも、大雑把にいうと、シアトルダンサーやガルチといった、どちらかといえば日本の芝競馬向きではない、器用さに欠ける血統が成功している。勝ち馬の2頭が後にJCダートに勝ち、3着馬からフェブラリーS勝ち馬が出ているのも理由は同じだろう。なら、不器用で小技は利かないが圧倒的に力強いのを探せばいいわけだ。ダンツキッスイの父シンボリクリスエスは秋の天皇賞をレコード勝ちし引退戦の有馬記念ではレース史上最大の9馬身差で圧勝、母の父タイキシャトルは不良馬場の安田記念を圧勝して直線1600mのジャックルマロワ賞も力任せに押し切った。祖母の父がダンシングブレーヴというのも一発がありそうでいい。祖母の産駒にダービー3着のアタラクシア、5代母の産駒にプリークネスS勝ち馬で1965年の米最優秀3歳馬トムロルフがいる牝系も上質。

 先週末に行われた英2000ギニーはキングマンボ産駒のヘンリーザナヴィゲーター、英1000ギニーはディヴァインライト産駒(ということはサンデーサイレンスの孫)のナタゴラが勝った。マイル・クラシックつながりでいえば、ファリダットは最も旬の血統。父はこのレースでも2頭の勝ち馬を出しているし、母の父も祖母の父も下表に2度登場するVIP血脈。母は全10勝を1200mだけで挙げ、1400m以上では〔0.0.4.4〕という純スプリンターだが、1600mでデビュー勝ちして長い距離も経験しているぶんだけ息子は融通が利くだろう。

 ストームキャット系は欧米での実績の割には日本への普及が遅れている代表的な父系。それでも、母の父としてはファレノプシスやメイショウボーラーを送り、父系祖父としてもサンライズバッカスがフェブラリーSに勝ち、徐々に勢力を広げつつはある。器用さに欠けるので日本に向かない部分があるが、それを逆手に取ることができるのがこのレース。▲エーシンフォワードはこの系統でも特にスピードに優れた父の産駒。同じ牝系に名馬シガーの連勝を16で止めたデアアンドゴーもいて、大物食いの雰囲気はある。

 ディープスカイは2年連続クラシック馬を送り、今年は現在リーディングの首位にも立っているアグネスタキオンの産駒。初年度世代のロジックもこのレースに勝っている。ウイニングカラーズやタップダンスシチーと同じ牝系で、祖母の父が大レースに強いリボー系キートゥザミント。相手強化がこたえない底力を秘める。

 同一種牡馬の産駒2頭がつるむ傾向を踏まえると、ここまでと全然関係ない馬券だが、アグネスデジタル×トニービン、3代母イットーのエイムアットビップを起点にして、同じ父のドリームシグナルへ、同じ牝系(4代母イットー)のサダムイダテンへ、同じ母の父トニービンのスプリングソングへという流しが成り立つ。ワイドで狙ってみるのも面白いかも。


NHKマイルC 過去の上位馬の血統とその後
年度
勝ち馬
母の父 その後の成績 主な勝ち鞍ほか
1996 タイキフォーチュンUSA m シアトルダンサーIIUSA Miswaki 0.0.0.8 97京王杯スプリングC4着
ツクバシンフォニーGB m デインヒルUSA Top Ville 2.4.4.10 98エプソムC
ゼネラリストGB m デインヒルUSA Conquistador Cielo 2.0.1.4 97金鯱賞
97 シーキングザパールUSA f Seeking the Gold Seattle Slew 2.3.2.8 98モーリスドギース賞G1
ブレーブテンダーUSA m Gulch Northern Dancer 5.8.7.43 98都大路S2着
ショウナンナンバー 14 m ジェイドロバリーUSA タケシバオー 1.2.0.17 99伊良湖特別900万下
98 エルコンドルパサーUSA m Kingmambo Sadler's Wells 3.3.0.0 98ジャパンCG1
シンコウエドワードUSA m Lear Fan Storm Bird 1.3.2.18 00ダービー卿CT2着
スギノキューティーUSA f Majestic Light Raja Baba 0.0.3.15 98阪神牝馬特別3着
99 シンボリインディUSA m A.P. Indy Danzig 1.1.0.8 00京成杯オータムH
ザカリヤGB m Zafonic Sadler's Wells 0.1.2.19 02ダービー卿CT3着
レッドチリペッパーUSA f Unbridled Dr. Carter 2.0.1.10 99富士S
2000 イーグルカフェUSA m Gulch Nureyev 2.2.3.31 02ジャパンCダート
トーヨーデヘアUSA m デヒアUSA Cyane 5.9.2.25 01エプソムC2着
マチカネホクシンUSA m Runaway Groom Cherokee Colony 0.3.3.26 00オーロC2着
01 クロフネUSA m フレンチデピュティUSA Classic Go Go 2.0.1.1 01ジャパンCダート
グラスエイコウオーUSA 13 m フレンチデピュティUSA Explodent 1.4.1.18 03アメリカJCC2着
サマーキャンドル 12 f シアトルダンサーIIUSA Gulch 1.2.0.4 02平場500万下
02 テレグノシス m トニービンIRE ノーザンテーストCAN 2.3.5.20 04毎日王冠G2
アグネスソニックUSA m Unbridled's Song Nureyev 1.2.2.4 03函館スプリントS2着
タニノギムレット m ブライアンズタイムUSA クリスタルパレスFR 1.0.0.0 02日本ダービー
03 ウインクリューガー m タイキシャトルUSA Be My Guest 1.0.2.23 05スワンS3着
エイシンツルギザン m サクラバクシンオー Fappiano 0.3.0.10 07淀短距離S2着
マイネルモルゲン m Mr. Livermore Seeking the Gold 4.1.2.18 04ダービー卿CT
04 キングカメハメハ m Kingmambo ラストタイクーンIRE 2.0.0.0 04日本ダービー
コスモサンビーム m ザグレブUSA Rainbow Quest 1.0.0.5 05スワンS
メイショウボーラー m タイキシャトルUSA Storm Cat 3.3.1.14 05フェブラリーS
05 ラインクラフト f エンドスウィープUSA サンデーサイレンスUSA 1.3.1.2 06阪神牝馬S
デアリングハート 10 f サンデーサイレンスUSA Danzig 3.1.2.12 06クイーンS
アイルラヴァゲイン m エルコンドルパサーUSA Meadowlake 2.1.4.9 07オーシャンS
06 ロジック m アグネスタキオン サクラユタカオー 0.0.0.12 06日本ダービー5着
ファイングレイン m フジキセキ Polish Precedent 3.0.0.6 08高松宮記念G1
キンシャサノキセキAUS m フジキセキ Pleasant Colony 3.1.1.6 08高松宮記念G12着
07 ピンクカメオ 17 f フレンチデピュティUSA Silver Hawk 0.0.0.8 08オークス5着
ローレルゲレイロ m キングヘイロー テンビーGB 2.0.0.6 08東京新聞杯
ムラマサノヨートー 18 m キングヘイロー ヘクタープロテクターUSA 1.0.1.5 07外房特別1000万下
※種牡馬の太字は重複するもの。その後の成績には地方、海外、障害を含む。主な勝ち鞍の太字はG1級レース

競馬ブック増刊号「血統をよむ」2008.5.11
©Keiba Book