2008マイルチャンピオンシップ


SS残党の決起


 初年度産駒フジキセキの朝日杯から14年間続いたサンデーサイレンスUSA産駒の連続G1(級)勝ち記録も、いよいよ今年ここまでくると崖っぷちまで追い込まれたといわざるを得ない。産駒の収得賞金はピークの2005年92億7483万7000円から2007年39億8508万8000円、そして今年(11月18日現在)16億2296万7000円まで下がってきた。そのペースで進むとすると、この偉大な記録が途切れるのも自然の流れではあると思う。ただ、この記録が途絶えかけた97年には晩成の初年度産駒マーベラスサンデーが宝塚記念に勝ち、世代別でも最大のピンチだった3年目94年生まれの産駒からはサイレンススズカ、ステイゴールドといった異才が出現した。サンデーサイレンスUSAの逆境での強さを考えると、絶望的な態勢からの大逆転もあるのではないだろうか。特にこのレースは過去5年連続して産駒が勝っている。遡って96年にはジェニュインも勝った。同じ距離でも安田記念は1勝に過ぎないのに比べると、特異な得意レースといえる。には5歳のマルカシェンクを選んだ。エリザベス女王杯を繰り上がりで手に入れたフサイチパンドラ、昨年の有馬記念を9番人気で制したマツリダゴッホなど03年生まれのSS最終世代は、土壇場での勝負強さに格別のものがある。母は伊1000ギニー勝ち、仏1000ギニー4着のマイラーで、その父は英2000ギニー馬。名牝ザルカヴァの父として知られるザミンダーはその全弟だ。祖母もイタリアのG3勝ち馬。他にそれほど活躍馬もいなくて一流半程度の牝系ではあるが、ミスタープロスペクター系×バックパサー系という母の血統構成は父との相性の良さ、G1級の底力を感じさせるものだ。

サンデーサイレンスUSA産駒のG1級コレクション
年度 レース(勝ち馬 生年) 収得賞金
1994 朝日杯3歳S(フジキセキ 1992) \496,339,000
1995 皐月賞(ジェニュイン 1992)、優駿牝馬(ダンスパートナー 1992)、東京優駿(タヤスツヨシ 1992)、朝日杯3歳S(バブルガムフェロー 1993) \2,517,179,000
1996 皐月賞(イシノサンデー 1993)、天皇賞(秋)(バブルガムフェロー 1993)、菊花賞(ダンスインザダーク 1993)、エリザベス女王杯(ダンスパートナー 1992)、マイルチャンピオンシップ(ジェニュイン 1992) \3,643,941,000
1997 宝塚記念(マーベラスサンデー 1992) \3,670,063,000
1998 東京優駿(スペシャルウィーク 1995)、宝塚記念(サイレンススズカ 1994)、阪神3歳牝馬S(スティンガー 1996) \4,431,433,500
1999 天皇賞(春)(スペシャルウィーク 1995)、東京優駿(アドマイヤベガ 1996)、天皇賞(秋)(スペシャルウィーク 1995)、)、ジャパンカップG1(スペシャルウィーク 1995) \5,217,870,000
2000 桜花賞(チアズグレイス 1997)、皐月賞(エアシャカール 1997)、東京優駿(アグネスフライト 1997)、菊花賞(エアシャカール 1997)、朝日杯3歳S(メジロベイリー 1998) \5,883,395,400
2001 皐月賞(アグネスタキオン 1998)、菊花賞(マンハッタンカフェ 1998)、エリザベス女王杯(トゥザヴィクトリー 1996)、香港ヴァーズG1(ステイゴールド 1994)、有馬記念(マンハッタンカフェ 1998) \6,640,900,000
2002 天皇賞(春)(マンハッタンカフェ 1998)、ジャパンダートダービー(ゴールドアリュール 1999)、ダービーグランプリ(ゴールドアリュール 1999)、スプリンターズS(ビリーヴ 1998)、阪神ジュベナイルフィリーズ(ピースオブワールド 2000)、東京大賞典(ゴールドアリュール 1999) \6,716,918,000
2003 フェブラリーS(ゴールドアリュール 1999)、高松宮記念(ビリーヴ 1998)、桜花賞(スティルインラブ 2000)、皐月賞(ネオユニヴァース 2000)、オーストラリアンオークスG1(サンデージョイ Sunday Joy 1999)、優駿牝馬(スティルインラブ 2000)、東京優駿(ネオユニヴァース 2000)、スプリンターズS(デュランダル 1999)、秋華賞(スティルインラブ 2000)、エリザベス女王杯(アドマイヤグルーヴ 2000)、マイルチャンピオンシップ(デュランダル 1999) \8,210,782,000
2004 桜花賞(ダンスインザムード 2001)、皐月賞(ダイワメジャー 2001)、優駿牝馬(ダイワエルシエーロ 2001)、天皇賞(秋)(ゼンノロブロイ 2000)、エリザベス女王杯(アドマイヤグルーヴ 2000)、マイルチャンピオンシップ(デュランダル 1999)、ジャパンカップG1(ゼンノロブロイ 2000)、阪神ジュベナイルフィリーズ(ショウナンパントル 2002)、有馬記念(ゼンノロブロイ 2000) \9,008,549,000
2005 高松宮記念(アドマイヤマックス 1999)、天皇賞(春)(スズカマンボ 2001)、皐月賞(ディープインパクト 2002)、東京優駿(ディープインパクト 2002)、秋華賞(エアメサイア 2002)、菊花賞(ディープインパクト 2002)、天皇賞(秋)(ヘヴンリーロマンス 2000)、マイルチャンピオンシップG1(ハットトリック 2001)、香港マイルG1(ハットトリック 2001)、有馬記念(ハーツクライ 2001) \9,274,837,000
2006 ドバイシーマクラシックG1(ハーツクライ 2001)、高松宮記念(オレハマッテルゼ 2000)、天皇賞(春)(ディープインパクト 2002)、ヴィクトリアマイル(ダンスインザムード 2001)、宝塚記念G1(ディープインパクト 2002)、天皇賞(秋)(ダイワメジャー 2001)、エリザベス女王杯(フサイチパンドラ 2003)、マイルチャンピオンシップG1(ダイワメジャー 2001)、ジャパンカップG1(ディープインパクト 2002)、有馬記念(ディープインパクト 2002) \7,840,816,000
2007 高松宮記念G1(スズカフェニックス 2002)、安田記念G1(ダイワメジャー 2001)、マイルチャンピオンシップG1(ダイワメジャー 2001)、有馬記念G1(マツリダゴッホ 2003) \3,985,088,000


 サンデーサイレンスUSA直仔のスプリンターというと、ビリーヴやデュランダルは一度タイトルを手に入れてからも活躍を続けたが、アドマイヤマックスやオレハマッテルゼは何となく不振という状態に陥ったまま抜け出せずに終わった。素質はマイラーなのに能力の違いでスプリントのカテゴリーでも結果を出したタイプには、何らかの無理がかかっていて、立ち直るのに時間がかかるのかもしれない。スズカフェニックスの高松宮記念後もそのようなはっきり不振ともいえない不振が続いている。ただ、母は英ダービー馬ドクターデヴィアスIREや6歳で高松宮杯に勝ったシンコウキングIREの半妹という良血。特徴的なノーザンダンサー2×3のインブリードがタフさにつながるなら、煮え切らないレースを続けつつも、ここ一番でサンデーサイレンスUSAの決定力がものをいうケースはあり得る。ダイワメジャーやウオッカがいるわけでもないので、相手関係からしても復活のチャンスではある。

 ▲スーパーホーネットの父ロドリゴデトリアーノUSAは3歳時に英2000ギニー、愛2000ギニー、インターナショナルS、チャンピオンSとマイルから10FのG1に4勝を挙げた名馬。エルグランセニョールの貴重な後継種牡馬でもある。これまでのところ2年目の産駒エリモエクセルのオークス勝ちが唯一大きなタイトル。オーストラリア、ニュージーランドへシャトルに送られたり、下総、那須、そして今年から九州で供用されて流浪の種牡馬生活を送っているが、小気味の良い決め手を伝えるなかなかの名種牡馬。母の父、祖母の父ともに地味だが、祖母の産駒に豪G1ドンカスターHのベルゼヴィア、3代母の孫に輸入種牡馬モーニングフローリックUSAの出る牝系はニジンスキーやザミンストレルの出たカナダの名門。おおまかにいえばノーザンダンサー系×レイズアネイティヴ系の定番配合であり、その中でハビタットやクリムゾンサタン、ギャラントマンといった強烈なスピードにつながる異系血脈がスパイスとしての役割を果たしている。

 エイシンドーバーUSAは安田記念でウオッカ、アルマダNZに続く3着。今回のメンバーでは最先着なのだから、これは値打ちがある。父がミスタープロスペクター系、母がロベルト系という大レース向きのニックスを踏襲した配合。父がリアルクワイエトの三冠を阻止したように、大物食いがあるかも。

 ファイングレインの母の全姉ピュアグレインGBは愛オークス、ヨークシャーオークスに勝った名牝で、全妹オールグレインはこれはG3だがランカシャーオークスで3着。3代母キーラインは牝馬版セントレジャーのG2パークヒルS勝ち馬。牝系はむしろ長距離志向。もともとNHKマイルC2着があるわけだし、この距離で人気を落としているなら逆に狙い目。


競馬ブック増刊号「血統をよむ」2008.11.23
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