2008ジャパンC


ガリレオ、ガリレオ

 今年これまで週刊競馬ブックの「海外競馬ニュース」を眺めてきて目に付いたのはガリレオ産駒の活躍。英ダービー馬ニューアプローチ、コロネーションS勝ち馬ラッシュラッシズといった牡牝の3歳馬の大活躍が特に印象に残るが、調べてみると合計で欧州グループレース23勝を挙げていた(レッドロックスの米G1マンノウォーSを加えると24)=下表参照=。2歳戦で勝ちまくったデインヒルダンサー産駒が15勝だから、グループレース勝ち数での首位は間違いのないところ。日本以外では上の層が厚ければそのままサイアーランキングでも上位を占める傾向がより強いので、実際、ガリレオはこのまま初の英愛リーディングサイアーの座に就く可能性が高い。現役時のガリレオは英・愛ダービー、キングジョージVI世&クイーンエリザベスSのいわゆる近代三冠を制している。ただ、これも、ニジンスキーの時代はともかく、ジェネラスIREのころを迎えると名馬の証明にはなっても名種牡馬としての保証はしかねるタイトルになった。それだけ2400m路線の斜陽化が進んだわけだ。そこで、秋のガリレオは現代的スピードを証明すべく10Fの愛チャンピオンS、そしてダート10FのブリーダーズCクラシックを戦うわけだが、それぞれ2、6着と敗れてしまう。しかし、結果としてはブリーダーズCで負けたことが良かったのかもしれない。欧州の芝長距離に専門を絞ることで、デインヒルUSAの死亡、サドラーズウェルズの引退で空いたポストにちょうど収まることができた。

 そのガリレオが種牡馬として最初に大きな存在感を示したのは06年のセントレジャー。1着シックスティーズアイコンGB、2着ザラストドロップ、3着レッドロックス(その年のブリーダーズCターフに快勝)と全てガリレオ産駒が占めた。その後のシックスティーズアイコンGBは成績表にある通り、G3では楽勝、G1では大敗という分かりやすい結果を残している。所詮セントレジャーに勝つステイヤーは時代遅れで、活躍の場を求めるなら超長距離戦か弱メンのG1、あるいはG3に限られる。ところが、今年はブリーダーズCターフを最新のセントレジャー馬コンデュイトが、展開の助けはあったにせよ、BCターフの史上最速タイム(2:23.42)で勝ってしまった。これはコンデュイトがセントレジャーの水準を超える強い馬である可能性と、世界の芝2400mの水準がセントレジャー馬が楽勝するようなレベルにある可能性の両方を示しているのではないだろうか。ザルカヴァという名牝がいなければ、凱旋門賞はお寒いレースだったに違いないし、“キングジョージ”でペイパルブルGBをやっと抑えたデュークオブマーマレードは本来10Fの馬だ。そういうネガティヴ思考を進めていくと、この秋の天皇賞もカンパニー、エアシェイディ、サクラメガワンダーやオースミグラスワンといったところから時計的には僅かな差しかないところで演じられた“名勝負”だった。それなら、お呼びでないはずのセントレジャー馬にもチャンスはあるのではないだろうか。シックスティーズアイコンの母は00年の英オークス馬で、3代母の産駒に英チャンピオンSのリーガルケースがいる。遡ればファンタスティックライトUSAやスウェインといった世界を股にかけて活躍した名馬が出る名門プリティポリー系シスターセーラの分枝。

 同じ父のパープルムーンIREはノーザンダンサー、スペシャル、レイズアネイティヴといった血脈の近交を重ねた点で、98年の勝ち馬エルコンドルパサーUSAに似ている。エルコンドルパサーUSAの配合は、世界中に多くの模倣者が現れ、しかもその中から多くのG1勝ち馬が出ている優れたものだが、これもその凝ったバリエーションのひとつといえなくもない。06年ニューマーケットの平地→障害転向セリで44万ギニー(当時なら1億円超か)でトレードされたり、重賞未勝利のままメルボルンCでオーストラリアの名馬エフィシェントから1/2馬身差の2着になったりと、ただ者ではない経歴も不気味。

 ▲ディープスカイは03年の勝ち馬タップダンスシチーUSAと同じ牝系。タップダンスシチーUSAはリボー系×ノーザンダンサー×ボールドルーラーという配合だったが、こちらはリボー、ノーザンダンサー、ボールドルーラーまで同じで、更にサンデーサイレンスUSAが加わっている。日本の名門イコマエイカン系と米国の名門ミスカーミー系の融合が成立するのも、サンデーサイレンスのお陰といえる。

 ウオッカは3歳秋の停滞を脱して、より強さを増した。ブライアンズタイムUSA直仔のクラシック級の多くが、一気に強くなったあと萎んでしまったのとは傾向を異にしている。タニノギムレットUSA産駒としてもレアケースといえるだけに、このあたりフロリースカップGB系ワカシラオキの分枝という在来の名門出身ならではの渋太い成長力なのかもしれない。

 オウケンブルースリの4代母ゴールドディガーは大種牡馬Mr.プロスペクターの母。米三冠馬シアトルスルーもこの牝系から出た。この父なら東京も向くだろう。


欧州種牡馬界の頂点に向かうガリレオ 〜重賞勝ち産駒一覧〜
年度※ 馬名 (生年、性、レース名、格、距離)
2006
10
(5)
ギャラティー Galatee (2003、牝、ブルーウィンドSG3・10F)、ナイタイム Nightime (2003、牝、愛1000ギニーG1・8F)、アレグレット Allegretto (2003、牝、ランカシャーオークスG2・11F200yds.)、シックスティーズアイコン Sixties Icon (2003、牡、ゴードンSG3・12F、英セントレジャーG1・13F197yds.)、テオフィロ Teofilo (2004、牡、愛フューチュリティSG2・7F、ナショナルSG1・7F、デューハーストSG1・7F)、ヴァンダンジュール Vendangeur (2003、牡、ショードネ賞G2・3000m)、レッドロックス Red Rocks (2003、牡、ブリーダーズCターフG1・米12F)
2007
14
(4)
ソルジャーオブフォーチュン Soldier of Fortune (2004、牡、ノアイユ賞G2・2100m、チェスターヴァーズG3・12F66yds.、愛ダービーG1・12F、ニエル賞G2・2400m)、レッドロックス Red Rocks (2003、牡、ゴードンリチャーズSG3・10F70yds.)、シックスティーズアイコン Sixties Icon (2003、牡、ジョッキークラブSG2・12F)、マーラー Mahler (2004、牡、クイーンズヴァーズG3・16F)、アレグレット Allegretto (2003、牝、ヘンリーU世SG2・16F78yds.、グッドウッドCG2・16F、ロイヤルオーク賞G1・3100m)、ニューアプローチ New Approach (2005、牡、タイロSG3・7F、愛フューチュリティSG2・7F、ナショナルSG1・7F、デューハーストSG1・7F)
2008
24
(9)
リオズスターレット Leo's Starlet (2005、牝、クレオパトル賞G3・2100m)、プリマルーチェ Prima Luce (2005、牝、アサシSG3・7F)、ツィーマデトリオンフェ Cima de Triomphe (2005、牡、伊ダービーG1・2200m)、アドアード Adored (2005、牝、ブルーウィンドSG3・10F)、ラッシュラッシズ Lush Lashes (2005、牝、ミュージドラSG3・10F88yds.、コロネーションSG1・8F、ヨークシャーオークスG1・12F、愛メートロンSG1・8F)、サブローズ Sub Rose (2005、牝、ロワイヨモン賞G3・2400m)、クースガール Cuis Ghaire (2006、牝、ソードルズタウンスプリントSG3・6F、アルバニーSG3・6F)、ソルジャーオブフォーチュン Soldier of Fortune (2004、牡、コロネーションCG1・12F10yds.)、ニューアプローチ New Approach (2005、牡、英ダービーG1・12F10yds.、愛チャンピオンSG1・10F、英チャンピオンSG1・10F)、レッドロックス Red Rocks (2003、牡、マンノウォーSG1・米11F)、インカントドリーム Incanto Dream (2004、牡、モーリスドニエル賞G2・2800m)、リップヴァンウィンクル Rip Van Winkle (2006、牡、タイロSG3・7F)、グラヴィテーション Gravitation (2005、牝、リリーラングトリーSG3・14F)、シックスティーズアイコン Sixties Icon (2003、牡、グローリアスSG3・12F、ジェフリーフリーアSG3・13F61yds.、カンバーランドロッジSG3・12F)、アレグレット Allegretto (2003、牝、パークヒルSG2・14F132yds.)、カイトウッド Kite Wood (2006、牡、オータムSG3・8F)
南半球

(1)
ギャラントテス Gallant Tess (2003、牝、2008.3.1 ブリーダーズクラシックG2・豪1200m、2008.9.9 チェルムズフォードSG2・豪1600m)、アルヴァロ Alvaro (2004、セン、2008.5.25 ウィンタークラシックG3・南ア1800m)、スーザ Sousa (2005、牡、2008.9.17 スプリングSG3・豪1600m、2008.10.4 スプリングチャンピオンSG1・豪2000m)
※年度、重賞勝ち数、( )内はGT勝ち数

競馬ブック増刊号「血統をよむ」2008.11.30
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