2008天皇賞・春


日曜の次はまた日曜

 昨年サンデーサイレンスは父馬として、そして母の父馬として両方でチャンピオンの座に就いた。これは92年度のノーザンテースト以来の快挙。今年はアグネスタキオンやフジキセキといった二世の躍進によって、チャンピオンサイアーのタイトルには黄信号が灯っているが、ブルードメアサイアーとしては昨年以上のペースで驀進中だ(表1)。ランキングの数値以上に質的な充実度が分かるのが娘の子の重賞勝ち(表2)で、02年生、03年生、05年生からはそれぞれ国際G1勝ち馬が出現している。ひょっとすると天皇賞の半日前には母の父SSのケンタッキーダービー馬誕生という可能性もある(テールオブエカティ)。


表1) サンデーサイレンスUSAのブルードメアサイアー累年成績
年度順位出走勝利入着重賞勝A E I収得賞金
回数頭数回数頭数回数頭数回数頭数全般重賞全般重賞
199990230521420.32\6,938,000
200019412521128184001.220.09\112,511,000\1,700,000
20011092925028196212001.020.13\216,011,000\3,750,000
20023259399754010722321.341.72\525,119,000\98,889,000
2003101,2601791448724734221.681.25\1,166,718,000\199,946,000
200451,74627119811734754971.892.06\1,972,152,000\577,758,000
200522,3273522561614498817122.322.85\3,095,537,000\1,245,722,000
200623,38247536721766710615112.232.19\4,182,277,000\1,496,365,000
200714,15858746427289113723162.513.10\5,900,654,500\2,496,322,000
200811,59946416912332911810102.202.34\1,905,502,000\799,851,000
※JBIS発表による(2008年は4月30日現在)、A E Iはアーニングインデックス

表2)  母の父サンデーサイレンスUSAの重賞勝ち馬
生年馬名父系主な勝ち鞍
1999プリサイスマシーンマヤノトップガンHRスワンS
1999プレシャスカフェハートレイクGBNDCBC賞
1999IIマイソールサウンドタマモクロス 阪神大賞典
1999シャドウスケイプフォーティナイナーUSAMP根岸S
2000IIアイポッパーサッカーボーイ 阪神大賞典
2000サカラートアフリートCANMP東海S
2000スズノマーチティンバーカントリーUSAMPエプソムC
2001ポップロックエリシオFRND目黒記念
2001ウイングレットタイキシャトルUSAHR中山牝馬S
2002ヴァーミリアンエルコンドルパサーUSAMPジャパンCダート
2002シャドウゲイトホワイトマズルGBNDシンガポール航空国際C
2002ラインクラフトエンドスウィープUSAMP桜花賞
2002アンブロワーズフレンチデピュティUSAND函館2歳S
2002IIIヤマニンメルベイユメジロマックイーン 中山牝馬S
2002ライラプスフレンチデピュティUSANDクイーンC
2002IIIワイルドワンダーブライアンズタイムUSAHRアンタレスS
2003アドマイヤムーンエンドスウィープUSAMPドバイデューティフリー
2003ソングオブウインドエルコンドルパサーUSAMP菊花賞
2003フサイチリシャールクロフネUSAND朝日杯フューチュリティS
2003IIIサイレントプライドフレンチデピュティUSANDダービー卿チャレンジT
2003サクラメガワンダーグラスワンダーUSAHR鳴尾記念
2003ラピッドオレンジエルコンドルパサーUSAMPTCK女王杯
2004アサクサキングスホワイトマズルGBND菊花賞
2004IIEl Daana(AUS)Redoute's ChoiceNDエドワードマニフォルドS(豪)
2004トーセンキャプテンジャングルポケット アーリントンC
2004フサイチホウオージャングルポケット ラジオNIKKEI杯2歳S
2004IIIマイネルシーガルゼンノエルシドIREND富士S
2005Tale of Ekati(USA)Tale of the CatNDウッドメモリアルS(米)
2005トールポピージャングルポケット 阪神Jフィリーズ
2005レジネッタフレンチデピュティUSAND桜花賞
2005スマイルジャックタニノギムレットHRスプリングS
2005ナンヨーリバースキャンUSAMP兵庫チャンピオンシップ
2005IIIYoung Pretender(FR)Oasis DreamNDラロシェット賞(仏)
2005エアパスカルウォーエンブレムUSAMPチューリップ賞
2005ドリームシグナルアグネスデジタルUSAMPシンザン記念
2005フサイチアソートトワイニングUSAMP東スポ杯2歳S
※父系:ND=ノーザンダンサー系、MP=ミスタープロスペクター系、HR=ヘイルトゥリーズン系、その他は空欄
格はローマ数字が国際パート I グレード、アラビア数字はそれ以外(パートIIおよびJpn)

 04年生まれの4歳は今のところ谷間世代といわざるを得ない。これはそのまま谷間のままか、遅まきながら盛り上がりを見せて前後世代の水準に達するか、当たり前だがふたつの可能性がある。ここで母の父SSの4歳が勝つようなら、今後の針路がどちらになるかはおのずと決まってくる。アサクサキングスはホワイトマズルとサンデーサイレンス牝馬の組み合わせ。これはシャドウゲイトと同じ。母は全6勝の半分を1200mで挙げており、その全兄ジェニュインも1600〜2000mで活躍した。しかし、奔放なホワイトマズルとの配合では、そういったマイラーの個性が脇に引っ込んで、もっぱらSSの底力を伝えることになったのだろう。ただ、イングランディーレに代表されるように大レースで一発のあるホワイトマズル産駒には、気楽な人気薄でこそという面もある。ボールドルーラー5×4、ノーザンダンサー4×5という近交には力任せの不器用さも見え隠れしており、人気を背負っての競馬はストレスとなる恐れがなきにしもあらず。

 表2で分かるようにサンデーサイレンス牝馬の産駒はノーザンダンサー系やミスタープロスペクター系種牡馬との配合による重賞勝ち馬が多いが、これは分母が圧倒的に多いせい。主流でも異系でも、大抵の系統に能力を上乗せするのがSSマジックといっていい。メジロマックイーン×SS牝馬の配合ではヤマニンメルベイユが中山牝馬Sに勝ったばかり。同じ組み合わせのホクトスルタンは牝系がファンシミン系。多くの重賞コレクションを誇りながら長く大レースの壁を越えられないファミリーだったが、ラインクラフトが出現すると、次の年にはソングオブウインドが菊花賞に勝った。いずれもサンデーサイレンスがひと役買っており、そのあたりは“スカーレット一族”にも通じる流れ。父は遂に牡馬の重賞勝ち産駒を見ないまま世を去ったが、そのぶん逆にそろそろという気もする。父系にはノーザンダンサーのように大帝国を築くものと、途切れる寸前で細々と長く続くものがあって、トゥルビヨン系は後者の代表。種の保存と競走能力はまた別のもののような気もするが、お家存亡の危機にヒーロー出現というのはメジロアサマ以来の伝統だ。

 旧約聖書の怪力サムソンはデリラという女に髪の毛を剃られて力を失った。▲メイショウサムソンも昨年の春以降を見ると、ウオッカやデリラスカーレットダイワスカーレットが出るレースでは負け、そうでないレースは勝った。意外に分かりやすい敗因といえるかもしれない。この仮説が正しければ圧勝もある。

 03年のこのレースで大復活を遂げたヒシミラクル、3年連続3着の怪記録を持つナリタトップロードなど、サッカーボーイの血は要チェック。ドリームパスポートは祖母がサッカーボーイの全妹。父は4月なかばを過ぎてプチ・ブーム終息が懸念されるフジキセキだが、“母の父トニービン”は皐月賞のキャプテントゥーレや3連勝のスプリングソングなどが現れた新たな流行アイテム。

 サッカーボーイ直仔のアイポッパーはすでに8歳だが、サッカーボーイの全妹にサンデーサイレンスという、ちょうど逆パターンの配合によるステイゴールド(ドリームパスポートの伯父)は、7歳暮れの香港ヴァーズでG1勝ち。ノーザンテースト+ディクタス+SSという組み合わせには、強力な能力維持効果があるようだ。


競馬ブック増刊号「血統をよむ」2008.5.4
©Keiba Book