2008フェブラリーS


大胆な越境者

 週刊競馬ブックで連載中の「合同フリーハンデ」。オールタイム・ランキングはその開始期から現在までをまとめて並べ直したもので、下の表はそこからダートのレーティングによってランク入りした馬を抜粋した。ただし、アグネスデジタルのようにダートで120のレーティングがあっても最高が芝の126というケースは含まれていない。クロフネを筆頭に最近の馬が上位を占め、80年代生まれは南関東の女傑ロジータが辛うじて食い込んだだけで、あとはホクトベガやアブクマポーロといったダート交流重賞初期の代表的名牝名馬が比較的古い部類。これはダート競馬が若い、まだまだ発展途上の領域であるため。そして、その発展の方向は、ダートにおける世界挑戦の結果からも分かるように、スピードの追求ということで間違いなさそうだ。それにつれ、このランキングの上位に芝ダート兼用馬やサンデーサイレンス系などの芝血統が多いことからも推測されるが、これまでの芝血統/ダート血統といった区別はだんだんと意味をなさなくなり、強いか弱いか、速いか遅いかが馬場適性に優先するようになる。当たり前といえば当たり前の話で、Mr.プロスペクターやストームキャットは欧州の芝でも米国のダートでも主流となっていて、典型的欧州血統とされるサドラーズウェルズでさえ、エルプラドによって米国ダートへの進出を果たした。例外はダート下手のデインヒル系だけといってもいい。

 昔はダート血統は米国、芝血統は欧州からの輸入馬という認識で間違いなかった。しかし、それは、米国血統がダート向きで欧州血統が芝向きということよりも、米国競馬にはスピードの不足するものが、欧州競馬にはパワーの不足するものが日本向けに放出された結果、それぞれ日本のダートと芝に適性を示したということだったのではないだろうか。日本の血統改良に貢献した先人に対しては失礼な仮説で申し訳ないが、サンデーサイレンスの時代を経験した今になって考えるとそう的外れでもないと思う。そこで、芝・ダートを意識の外に置いて1600mならどれかということでにはデアリングハートを選んでみた。サンデーサイレンス×ダンチヒの配合からは短距離の女王ビリーヴ、マイラーズCに勝ち安田記念3着のミレニアムバイオ、京成杯のヤマニンセラフィムらの重賞勝ち馬が出ている。半兄のエクトンパークはまだG1だったころのスーパーダービー勝ち馬で、同じく半兄ピットファイターは度重なる骨折の合間の僅かなチャンスを生かして武蔵野Sなど3つの重賞に勝った。これまでNHKマイルC2着、ヴィクトリアマイル3着と僅かな差で大レースに手が届いていないが、芝では少しスピードが不足し、地方のダートでは逆にスピードが殺されるなら、今回の舞台設定が最適という可能性が高いのではないだろうか。

合同フリーハンデ・オールタイム・ランキング
=ダートのみ抜粋=
ランク レート 馬名 生年
01 130 クロフネUSA m 1998 フレンチデピュティUSA
02 126 ヴァーミリアン m 2002 エルコンドルパサーUSA
03 125 カネヒキリ m 2002 フジキセキ
04 124 アジュディミツオー m 2001 アジュディケーティングUSA
05 123 アドマイヤドン m 1999 ティンバーカントリーUSA
06 122 タイムパラドックス m 1998 ブライアンズタイムUSA
07 121 ウイングアロー m 1995 アサティスUSA
07 121 ゴールドアリュール m 1999 サンデーサイレンスUSA
07 118 トゥザヴィクトリー f 1996 サンデーサイレンスUSA
07 121 パーソナルラッシュUSA m 2001 ワイルドラッシュUSA
11 120 シーキングザダイヤUSA m 2001 Seeking the Gold
11 120 ナイキアディライト m 2000 ディアブロUSA
11 120 フィールドルージュ m 2002 クロコルージュIRE
11 120 メイショウボーラー m 2001 タイキシャトルUSA
15 119 イーグルカフェUSA m 1997 Gulch
15 119 エスプリシーズ m 1999 カコイーシーズUSA
15 119 カネツフルーヴ m 1997 パラダイスクリークUSA
15 119 スターキングマンUSA m 1999 Kingmambo
15 116 ネームヴァリュー f 1998 Honour and Glory
15 119 ビワシンセイキ m 1998 フォーティナイナーUSA
15 119 ブルーコンコルド m 2000 フサイチコンコルド
15 116 ホクトベガ f 1990 ナグルスキーCAN
15 119 ユートピア m 2000 フォーティナイナーUSA
24 118 アロンダイト m 2003 エルコンドルパサーUSA
24 118 サイレントディール m 2000 サンデーサイレンスUSA
24 118 ストロングブラッド m 1999 トウカイテイオー
24 118 トーシンブリザード m 1998 デュラブUSA
24 115 ファストフレンド f 1994 アイネスフウジン
24 118 フリオーソ m 2004 ブライアンズタイムUSA
24 118 メイセイオペラ m 1994 グランドオペラUSA
31 117 アブクマポーロ m 1992 クリスタルグリッターズUSA
31 117 サンライズバッカス m 2002 ヘネシーUSA
31 117 トーホウエンペラー m 1996 ブライアンズタイムUSA
31 117 ノボトゥルーUSA m 1996 Broad Brush
31 117 ビッグウルフ m 2000 アフリートCAN
31 117 ボンネビルレコード m 2002 アサティスUSA
31 117 ミラクルオペラ m 1997 オペラハウスGB
31 117 リージェントブラフ m 1996 パークリージェントCAN
31 117 レギュラーメンバー m 1997 コマンダーインチーフGB
40 116 カフェオリンポスUSA m 2001 Grand Slam
40 116 シーチャリオットUSA m 2002 Seeking the Gold
40 116 ジンクライシスUSA m 2001 Subordination
40 116 スターリングローズ m 1997 アフリートCAN
40 116 ヒシアトラス m 2000 ティンバーカントリーUSA
40 116 マイネルセレクト m 1999 フォーティナイナーUSA
40 116 ミツアキタービン m 2000 ライブリマウント
47 112 ゴールドティアラUSA f 1996 Seeking the Gold
47 115 サカラート m 2000 アフリートCAN
47 115 サンフォードシチー m 1995 ヤマニンゼファー
47 115 ノボジャックUSA m 1997 フレンチデピュティUSA
47 115 ハギノハイグレイド m 1996 コマンダーインチーフGB
47 115 マキバスナイパー m 1995 ペキンリュウエン
47 112 ロジータ f 1985 ミルジョージUSA
47 115 ワイルドワンダー m 2002 ブライアンズタイムUSA
mは牡馬、 は牝馬(3ポイント加点)、太字は今回出走馬、網掛けは過去のフェブラリーS勝ち馬


 今やSS×ダンチヒ以上の信頼性を持っているのがSS×ノーザンテースト。配合例が多いせいもあるが、ダイワメジャー、デュランダル、アドマイヤマックス、エアメサイアらを出す実績には文句の付けようがない。その配合パターンによるリミットレスビッドはフサイチゼノン、アグネスゴールドといった芝重賞勝ち馬の全弟。世代でいうとアドマイヤマックスと同い年だから、年齢的にこれ以上はどうかとも思うが、本人がリミットレスといっているのだからそれを信じてみる手はある。

 ▲ヴァーミリアンは母がSS×ノーザンテースト。父はNHKマイルCの勝ち馬。短くなったからといって不安のある血統でもない。昨年大活躍したスカーレット一族の一員だが、ダイワメジャーは引退し、ダイワスカーレットはここを回避と、ちょっと風向きが変わってきた印象もある。ただ、この一族の持続性のある強さはこの馬にも共通しているので、変わりかけた流れを力ずくで戻してしまうかもしれない。

 SS×アリダーの組み合わせからはイシノサンデーが出た。皐月賞とダービーグランプリに勝った名馬だが、統一ダートグレードが敷かれる前年のことなので、天才にはありがちなこととはいえ、これは出現が早過ぎた。同じパターンのクワイエットデイは祖母の産駒に米G1ストラブSのヘルムズマンがいるまずまずの牝系。4代母がコマンド血脈とマンノウォー血脈の組み合わせという点もイシノサンデーに共通しており、G1でも通用する底力はある。

 SS系ばかり並べたので、こういうときはブライアンズタイム系がまとめて台頭しそうな気がしないでもないが、このレースでBTは直仔エムアイブランの2着、娘の産駒ブルーコンコルドの2着があるだけ。タイムパラドックスでさえ(6)(4)(9)着だからこのレースには縁がない。むしろ穴なら00年にペリエで勝ったウイングアローの甥ロングプライド


競馬ブック増刊号「血統をよむ」2008.2.24
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