2007マイルチャンピオンシップ


院政への移行

 アグネスタキオン産駒のダイワスカーレットがサンデーサイレンスの娘フサイチパンドラを抑えた先週のエリザベス女王杯のゴールは今の競馬の血統的趨勢を象徴していた。下の表は今年のJRA重賞と地方競馬で行われた統一ダートグレード重賞からサンデーサイレンス産駒、あるいは孫が勝ったレースを抜き出したもの。11月11日までに行われた133レースのうちの52、4割近くをこの“一族”が占めたことになる。その内訳はサンデーサイレンス直仔が17、母の父サンデーサイレンスが15、そしてSS直仔の種牡馬の産駒が20と最大勢力を誇るまでになった。質の面ではどうかということで重賞を対象としたアーニングインデックス(JBIS発表11月13日現在のリーディングサイアー「サラ全馬総合」)を見ると、母の父サンデーサイレンス2.80、サンデーサイレンス2.72、ベスト10内のサンデーサイレンス直仔は2位のアグネスタキオン2.61、3位ダンスインザダーク1.17、5位フジキセキ1.50、7位スペシャルウィーク0.88、10位アドマイヤベガ1.23となっていて、母の父サンデーサイレンスが優位に立っている。これらを踏まえた上で、歴史的変化には必ず揺り返しが伴うことを考慮に入れると、サンデーサイレンス直仔の反攻も見込んでおかねばならない。それら3者をバランス良く取り込んだ狙いが得策ということになる。


2007年 サンデーサイレンスUSAの影響 〜直仔/孫の重賞勝ち一覧〜
(11月11日までJRA平地106+交流ダート重賞地方27のうち)
日付レース距離勝ち馬母の父
1/6中山金杯III芝2000シャドウゲイトホワイトマズルGBサンデーサイレンスUSA
1/8シンザン記念 芝1600アドマイヤオーラアグネスタキオンCaerleon
1/14日経新春杯 芝2400トウカイワイルドサンデーサイレンスUSAMr. Prospector
1/21アメリカJCC 芝2200マツリダゴッホサンデーサイレンスUSABel Bolide
1/27東京新聞杯III芝1600スズカフェニックスサンデーサイレンスUSAFairy King
1/28京都牝馬SIII芝1600ディアデラノビアサンデーサイレンスUSAPotrillazo
1/31川崎記念 ダ2100ヴァーミリアンエルコンドルパサーUSAサンデーサイレンスUSA
2/4共同通信杯 芝1800フサイチホウオージャングルポケットサンデーサイレンスUSA
2/11きさらぎ賞 芝1800アサクサキングスホワイトマズルGBサンデーサイレンスUSA
2/12佐賀記念 ダ2000サイレントディールサンデーサイレンスUSANureyev
2/17京都記念II芝2200アドマイヤムーンエンドスウィープUSAサンデーサイレンスUSA
2/24アーリントンC 芝1600トーセンキャプテンジャングルポケットサンデーサイレンスUSA
2/25阪急杯III芝1400プリサイスマシーンマヤノトップガンサンデーサイレンスUSA
3/4中京記念III芝2000ローゼンクロイツサンデーサイレンスUSAShirley Heights
3/4弥生賞 芝2000アドマイヤオーラアグネスタキオンCaerleon
3/17フラワーC 芝1800ショウナンタレントアグネスタキオンGreat Commotion
3/18阪神大賞典II芝3000アイポッパーサッカーボーイサンデーサイレンスUSA
3/21黒船賞 ダ1400リミットレスビッドサンデーサイレンスUSAノーザンテーストCAN
3/24日経賞II芝2500ネヴァブションマーベラスサンデーMill Reef
3/25高松宮記念I芝1200スズカフェニックスサンデーサイレンスUSAFairy King
3/25マーチSIIIダ1800クワイエットデイサンデーサイレンスUSAAlydar
4/7阪神牝馬SII芝1400ジョリーダンスダンスインザダークPeterhof
4/8桜花賞 芝1600ダイワスカーレットアグネスタキオンノーザンテーストCAN
4/22アンタレスSIIIダ1800ワイルドワンダーブライアンズタイムUSAサンデーサイレンスUSA
5/13ヴィクトリアマイル 芝1600コイウタフジキセキドクターデヴィアスIRE
5/26金鯱賞II芝2000ローゼンクロイツサンデーサイレンスUSAShirley Heights
5/27目黒記念 芝2500ポップロックエリシオFRサンデーサイレンスUSA
6/3安田記念I芝1600ダイワメジャーサンデーサイレンスUSAノーザンテーストCAN
6/24宝塚記念I芝2200アドマイヤムーンエンドスウィープUSAサンデーサイレンスUSA
7/8プロキオンSIIIダ1400ワイルドワンダーブライアンズタイムUSAサンデーサイレンスUSA
7/8七夕賞III芝2000サンバレンティンスペシャルウィークサンデーサイレンスUSA
8/12北九州記念 芝1200キョウワロアリングサンデーサイレンスUSASeeking the Gold
8/12クイーンS 芝1800アサヒライジングロイヤルタッチミナガワマンナ
8/26新潟記念III芝2000ユメノシルシフジキセキトニービンIRE
9/2札幌記念 芝2000フサイチパンドラサンデーサイレンスUSANureyev
9/8朝日チャレンジCIII芝2000インティライミスペシャルウィークノーザンテーストCAN
9/9京成杯オータムHIII芝1600キングストレイルサンデーサイレンスUSAノーザンテーストCAN
9/16ローズS 芝1800ダイワスカーレットアグネスタキオンノーザンテーストCAN
9/23神戸新聞杯 芝2400ドリームジャーニーステイゴールドメジロマックイーン
9/23オールカマーII芝2200マツリダゴッホサンデーサイレンスUSABel Bolide
9/29札幌2歳S 芝1800オリエンタルロックマンハッタンカフェMt. Livermore
10/3東京盃 ダ1200リミットレスビッドサンデーサイレンスUSAノーザンテーストCAN
10/7京都大賞典II芝2400インティライミスペシャルウィークノーザンテーストCAN
10/7毎日王冠II芝1800チョウサンダンスインザダークサッカーボーイ
10/13デイリー杯2歳S 芝1600キャプテントゥーレアグネスタキオントニービンIRE
10/14秋華賞 芝2000ダイワスカーレットアグネスタキオンノーザンテーストCAN
10/14府中牝馬SIII芝1800デアリングハートサンデーサイレンスUSADanzig
10/20富士SIII芝1600マイネルシーガルゼンノエルシドIREサンデーサイレンスUSA
10/21菊花賞 芝3000アサクサキングスホワイトマズルGBサンデーサイレンスUSA
10/31JBCクラシック ダ2000ヴァーミリアンエルコンドルパサーUSAサンデーサイレンスUSA
11/10福島記念 芝2000アルコセニョーラステイゴールドモガンボUSA
11/11エリザベス女王杯I芝2200ダイワスカーレットアグネスタキオンノーザンテーストCAN
太字はサンデーサイレンスUSAまたはその直仔、格付け記載は正規グレードのみ 

 アグネスアークは父がアグネスタキオン。ダイワスカーレットによって待望の大物出現がかなったが、ロジックのNHK杯勝ちなど、ホームといえるのはこの距離。特に京都1600mでは過去1年間(06年11月5日〜07年11月4日)に34回出走して10勝2着5回と勝ち鞍順で首位。2位のサンデーサイレンスの42回出走5勝2着2回を遙かに上回る好成績を残している。母の父ベリファは産駒にムーランドロンシャン賞のメンデスや仏1000ギニーのシルヴァーマイン、独1000ギニーのプリンセスナナらがいる名マイラー種牡馬で、晩年を過ごしたわが国でも京成杯のオースミポイントやクイーン賞のマキバサイレントを出した。リファール系だけにSS血脈との組み合わせではマイラー志向が強くなる。祖母は米G3勝ち馬で、産駒にスワンSのビハインドザマスク、孫にヴィクトリアマイルのコイウタが出る。祖母の父Mr.プロスペクターと、父の母の父ロイヤルスキーを経由したボールドルーラーの組み合わせはこれもマイル向きのスピードを保証する。ヘイルトゥリーズン4×5のインブリードは近年の大レース勝ち馬の必須アイテムとさえいえるもの。

 マイネルシーガルは父が01年の勝ち馬。連覇はあっても親子制覇がないのはこのレースの歴史が浅いためだが、ニホンピロウイナーやタイキシャトルといったポピュラーなマイラー血統が達成していないのは不思議にも思える。意外にこういった少数精鋭主義の種牡馬がサンデーサイレンスの助けを借りて達成するものなのかもしれない。大種牡馬カーリアンも種牡馬の父としてはそれほど優秀ではないが、フサイチコンコルドはブルーコンコルドを、ジェネラスはエリモハリアーを出しているように、アベレージは低いが当たれば大きいと考えていいようだ。

 安田記念連覇は84年以降ヤマニンゼファーしかいない。しかし、このレースはニホンピロウイナー、ダイタクヘリオス、タイキシャトル、デュランダルと4例を数える。ダイワスカーレットの兄でもある▲ダイワメジャーには当然敬意を払うべき。

 もう1頭サンデーサイレンス直仔から選ぶとすれば、功なり名を遂げたものより、短距離に進路変更してからまだビッグタイトルに手が届いていないものの方が可能性がある。キングストレイルは伯母が93年の勝ち馬シンコウラブリイ。

 スーパーホーネットの父ロドリゴデトリアーノは英・愛2000ギニーなどG15勝の名マイラー。エルグランセニョールの貴重な後継種牡馬でもある。エリモエクセルのオークス以来9年間大レースから遠ざかっているが、オペラハウスやブライアンズタイムの鮮やかな復活を考えるとこの父にもチャンスはありそうだ。

 トウショウカレッジはシスタートウショウの甥でウオッカの近親。世界的大種牡馬の父は日本でも桜花賞馬アローキャリーを出した。穴で。


競馬ブック増刊号「血統をよむ」2007.11.18
©Keiba Book