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2冠馬クラブで最も数が多いのは下表1に示した通り皐月賞とダービーに勝った春の2冠馬。しかし、春の天皇賞に限ると、最大派閥であるにもかかわらず、この組だけがまだ1頭も勝ち馬を出していない。3歳戦で燃え尽きるものが多いのも事実だが、ボストニアンとメイズイの2着が最良の成績。春にダービーを勝てるくらいなら秋に菊花賞を勝ったり翌年春に天皇賞を勝ったりするのはそれほど難しくないとも思えるのだが、実際には距離の差以上に大きな困難が伴うようだ。今回メイショウサムソンがこのジンクスに挑む。ここで思い出しておきたいのが、同じ父の産駒テイエムオペラオー。その後の強さからは信じ難いことだが、オペラオーも何だかんだで3歳秋は未勝利に終わっている。楽な相手で勝ち癖をつけるために挑んだステイヤーズSでさえ単勝1.1倍の人気を裏切って2着に敗れた。この血統には、不振というわけではないが勝ち切れない時期を通過した後に大成するという面があるようだ。成長の過程とレース体系とが微妙に齟齬をきたすのが3歳秋ということではないだろうか。その時期を過ぎたテイエムオペラオーの活躍は周知の通り。メイショウサムソンは4代母ガーネットが1959年秋の天皇賞馬。そして、父が“キングジョージ”、母の父が凱旋門賞勝ち馬なのでスタミナに不足はなく、同じ父の偉大な先輩の蹄跡をたどることも可能だろう。ただ、繰り返しになるが、皐月賞とダービーに勝っていながら菊花賞や春の天皇賞には勝てないケースがこれだけ多いと、東京2400mと京都3200mでは、求められる資質に大きな違いがあると考えておかなければならない。そのぶん○。 |
| 表1) 2冠馬(と三冠馬)の天皇賞(春)成績 | |||
| 年度 | 馬名 | 勝ち鞍 | 天皇賞(春) |
| 1941 | セントライト | 三冠 | |
| 1943 | クリフジ | ダ菊 | |
| 1949 | トサミドリ | 皐菊 | '51(2) |
| 1950 | クモノハナ | 皐ダ | |
| 1951 | トキノミノル | 皐ダ | |
| 1952 | クリノハナ | 皐ダ | |
| 1953 | ボストニアン | 皐ダ | '54(2) |
| 1954 | ダイナナホウシュウ | 皐菊 | ※1 |
| 1960 | コダマ | 皐ダ | '61消 |
| 1963 | メイズイ | 皐ダ | '64(2) |
| 1964 | シンザン | 三冠 | ※2 |
| 1970 | タニノムーティエ | 皐ダ | |
| 1971 | ヒカルイマイ | 皐ダ | |
| 1973 | タケホープ | ダ菊 | '74(1) |
| 1974 | キタノカチドキ | 皐菊 | '75(2) |
| 1975 | カブラヤオー | 皐ダ | |
| 1981 | カツトップエース | 皐ダ | |
| 1983 | ミスターシービー | 三冠 | '85(5) |
| 1984 | シンボリルドルフ | 三冠 | '85(1) |
| 1985 | ミホシンザン | 皐菊 | '87(1) |
| 1987 | サクラスターオー | 皐菊 | |
| 1991 | トウカイテイオー | 皐ダ | '92(5) |
| 1992 | ミホノブルボン | 皐ダ | |
| 1994 | ナリタブライアン | 三冠 | '96(2) |
| 1997 | サニーブライアン | 皐ダ | |
| 1998 | セイウンスカイ | 皐菊 | '99(3) |
| 2000 | エアシャカール | 皐菊 | '01(8) |
| 2003 | ネオユニヴァース | 皐ダ | '04(10) |
| ※1:'55秋(1) ※2:'65秋(1) ミスターシービーは'84秋(1) | |||
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| 表2) 天皇賞(春)過去10年 連対馬の牝系輸入世代 | ||||||
| 年度 | 着順 | 馬名 | 人気 | 輸入世代 | 輸入牝馬(生年) | |
| 1997 | 1 | マヤノトップガン | 2 | 母 | アルプミープリーズUSA | (1981) |
| 2 | サクラローレル | 1 | 母 | ローラローラFR | (1985) | |
| 1998 | 1 | メジロブライト | 2 | 8代母 | ソネラUSA | (1919) |
| 2 | ステイゴールド | 10 | 3代母 | ロイヤルサッシュGB | (1966) | |
| 1999 | 1 | スペシャルウィーク | 1 | 9代母 | フロリースカップGB | (1904) |
| 2 | メジロブライト | 3 | 8代母 | ソネラUSA | (1919) | |
| 2000 | 1 | テイエムオペラオー | 1 | 母 | ワンスウェドUSA | (1984) |
| 2 | ラスカルスズカ | 3 | 母 | ワキアUSA | (1987) | |
| 2001 | 1 | テイエムオペラオー | 1 | 母 | ワンスウェドUSA | (1984) |
| 2 | メイショウドトウIRE | 3 | 自身 | (プリンセスリーマUSA) | (1984) | |
| 2002 | 1 | マンハッタンカフェ | 2 | 母 | サトルチェンジIRE | (1988) |
| 2 | ジャングルポケット | 3 | 母 | ダンスチャーマーUSA | (1990) | |
| 2003 | 1 | ヒシミラクル | 7 | 10代母 | ヘレンサーフGB | (1903) |
| 2 | サンライズジェガー | 8 | 5代母 | ロイヤルアグリーメントGB | (1960) | |
| 2004 | 1 | イングランディーレ | 10 | 9代母 | クヰックランチUSA | (1922) |
| 2 | ゼンノロブロイ | 4 | 母 | ローミンレーチェルUSA | (1990) | |
| 2005 | 1 | スズカマンボ | 13 | 母 | スプリングマンボGB | (1995) |
| 2 | ビッグゴールド | 14 | 母 | ビューティフルゴールドUSA | (1986) | |
| 2006 | 1 | ディープインパクト | 1 | 母 | ウインドインハーヘアIRE | (1991) |
| 2 | リンカーン | 2 | 祖母 | バレークイーンIRE | (1988) | |
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△デルタブルースは祖母の父にアレッジドが潜む。条件勝ちの直後に菊花賞を制したり、オーストラリアに渡ってメルボルンCに勝ったり、驚くべき底力はそこに由来する。スタミナに任せて押し切る可能性がある反面、切れ味に欠けるので、あまりに強気の競馬をすると切れ味のある何かに差される恐れがある。 一昨年はスズカマンボの母の父がキングマンボ、2着ビッグゴールドの母の父がMr.プロスペクターだった。Mr.プロスペクター系の超長距離への勢力拡大は着々と進んでいる。トウカイトリック、トウショウナイト、エリモエクスパイアらのMr.プロスペクター直系にも要注意。特にトウショウナイトは祖母ノーザネットが米G1トップフライトH勝ち馬で、3代母サウスオーシャンがカナディアンオークスに勝ち、近親にも多数の名馬がいるカナダの名門から出た。リボー系の母の父も大舞台での大駆けを期待させる。 |
競馬ブック増刊号「血統をよむ」2007.4.29
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