2007有馬記念


2004年産のヴィンテージ

 ケンタッキーダービーで牝馬のウイニングカラーズに敗れた85年生まれの牡馬からは後々まで強い影響を及ぼすフォーティナイナーやブライアンズタイムといった大種牡馬が現れた。今年のベルモントSでラグズトゥリッチズに惜敗したカーリンはブリーダーズCクラシックで米国の頂点に立って汚名をそそいでいる。そのレースでは1、2、4、5、6着を3歳牡馬が占めており、ベルモントSではラグズトゥリッチズが強かっただけで、3歳牡馬のレベルは低いどころか例年より高かったと考えていいくらいだ。日本でもそのような3歳牡馬の反攻があるだろうと考えてロックドゥカンブ
 今回の16頭、父系だけでいうとサンデーサイレンス系、ノーザンダンサー系、ロベルト系の3つにきれいに分かれた。このレースは最近でこそサンデーサイレンス産駒が3連勝しているが、それ以前はブライアンズタイム産駒の登場以降ロベルト系が圧倒的。サンデーサイレンス系が勝つ年とロベルト系の勝つ年にどのような違いがあるのかを探るためにこのような表を作ってみた。クラシックと中長距離の大レースを時系列順に並べてみると、全てが有馬記念への伏線になっているといえなくもない。ロベルト系が活発な年は有馬記念もロベルト系が勝ち、ロベルト系に有力馬がいないとサンデーサイレンス産駒が勝つ。たまたまグラスワンダーだけ強かったとかシンボリクリスエスだけ強かったというケースもなきにしもあらずだが、クラシック2つをブライアンズタイムの直仔と孫が勝ち、ダートにもフリオーソやドラゴンファイヤーという大物が出た今年は、間違いなくロベルト系久々の当たり年といえる。
 ロックドゥカンブの父レッドランサムは米国ベースでオーストラリアへのシャトルもこなし、モハメド殿下に見込まれて04年からは英国ベースの供用となった。ロックドゥカンブはちょうどその英国行きが決まった時期の種付けで、レッドランサムの評価がピークの時点での産駒ということができる。玉石混淆で当たれば大きいという傾向の強いその産駒には、南北両半球、距離の長短、2歳から古馬まで多様なG1ウイナーが出ている。代表産駒のエレクトロキューショニストは05年の英インターナショナルSでゼンノロブロイを破り、ドバイワールドCを制した翌年は“キングジョージ”でハーツクライに先着して2着になった。この例を見てもロベルト系らしいSSキラーとしての資質はブライアンズタイムに劣らない。母は英国で未勝利に終わったあとニュージーランドダービー2着のローマンチャリオットを生んだ。祖母の産駒には米G2勝ちのムーンソリテア、英G3勝ちのジェルマーノがおり、3代母は愛1000ギニーに勝ち愛オークス2着。その曾孫にジャパンCのピルサドスキー、最優秀3歳牝馬のファインモーションという日本でもお馴染みの名馬・名牝が出る名門牝系。ちなみにマイケル・キネーン騎手は、エレクトロキューショニストで英インターナショナルSに勝ち、ピルサドスキーの主戦でもあった。父母両系から考えて最良の鞍上だろう。

 ウオッカはダービーのあと決定的に落ち込んでいるわけではないが、勝ち切れないレースを続けてここまできた。過程としては97年のシルクジャスティスに少し似ている。対ダイワスカーレットでは負け越していて、SSキラーとしてのブライアンズタイムといった構図もお互いが孫世代なのでピントがぼやけてしまうのかもしれない。ただし、今回は古馬の牡馬を交えての一戦だけに、牝馬限定戦とは厳しさが違うはずで、そういった場合により信頼できるのはこちらの方だろう。名門フロリースカップ系シラオキの分枝で、このファミリーはコダマでもスペシャルウィークでも有馬記念には勝てなかったが、その部分は76年にレコードで勝った祖母の父トウショウボーイの血で補いがつく。

 フロリースカップ系による有馬記念勝ちといえば名牝ガーネット。▲メイショウサムソンの4代母に当たる。このレースにおけるロベルトとサンデーサイレンスの抗争に割って入っているのはレインボークエスト、オペラハウスといった欧州血統のみ。テイエムオペラオーの活躍がサンデーサイレンスの支配を一時的にでも食い止めたことで分かるように、オペラハウス産駒の傑作には圧倒的な力がある。母の父のダンシングブレーヴもまた力の血統で、欧州系ノーザンダンサー系の底力が生きるタフな展開なら逆転も十分。

 一昨年から徐々に存在感を増してきたのが母の父としてのサンデーサイレンス。今年はブルードメアサイアーとしての獲得賞金が種牡馬としてのそれを抜いた。地味ながらそういった意味でポップロックは今年を象徴する存在でもあるわけで、また都合のいいことに母の父サンデーサイレンスは1頭だけ。あれこれと手を広げる必要もない。父系祖父フェアリーキング×母の父サンデーサイレンスという配合は父系祖父ロベルト×母の父フェアリーキングのロックドゥカンブの鏡像にも見える。馬名のRockとRocが示すように似ていて違うわけなのだが。

 サンデーサイレンス直系が上位に1頭も食い込まないというのもあり得ないだろうということで選ぶとすれば、大穴としてハイアーゲーム。母は英、米でG3勝ちがあり、4代母は仏1000ギニーや凱旋門賞に勝った名牝イヴァンジカ。母の父はリボー系の愛ダービー馬で、サンデーサイレンスとの組み合わせは01年の勝ち馬マンハッタンカフェと同じ。


競馬ブック増刊号「血統をよむ」2007.12.23
©Keiba Book