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トロットサンダーとブラックホークは満7歳で勝っていて、過去10年の連対馬の平均年齢は5.1歳。6歳を中心としたベテランの活躍が目立ち、若い馬のパワーを古豪の老獪さが丸め込んでしまうというのが平均的なパターン。また、ニッポーテイオーがこのレース2回目で勝ったように、タイキブリザード3回目、ブラックホーク3回目、アグネスデジタル2回目と、2、3年越しの挑戦が実る例も多い。一昨年の勝ち馬ツルマルボーイはここがG1挑戦8回目だった。息の長い活躍のすえにようやくたどり着けるというレースの性格が、表1に示したようにノーザンテースト血脈の活躍の場を広げる結果につながったのかもしれない。 母の父ノーザンテーストは3頭いるが、高松宮記念のオレハマッテルゼが祖母の父ノーザンテーストだったことを踏まえて、深いところにノーザンテーストの名があるバランスオブゲームを◎としてみた。祖母ベルベットサッシュは名マイラー・サッカーボーイの全妹で、その母の父がノーザンテースト。祖母の全妹ゴールデンサッシュは孫に今年の皐月賞2着、ダービー3着と大活躍のドリームパスポートを送っている。フサイチコンコルド産駒らしく一度走ると頑張り過ぎるせいか消耗が激しいので、これまで少し走っては休みの繰り返しで来たが、トータルで見ると長期休養が一度もないという極めて健康な競走生活を送っている。このあたりは代が遠くてもノーザンテースト血脈の効用大といえるだろう。すでに7歳だが、同じ牝系のステイゴールドは満7歳の誕生日にドバイシーマクラシックを制し、その年の暮れに香港ヴァーズでG1勝ちを収めた。実に19回目のG1挑戦だった。それに比べればこちらは今回でまだ13回目。G1では限界があると見るのは早計だろう。また、父系でいうと、オークスがダンシングブレーヴ系カワカミプリンセス、ダービーはサドラーズウェルズ系メイショウサムソンと欧州系のノーザンダンサー血脈が好成績を挙げるこの東京開催。カーリアン系に順番が回ってきても不思議ではない。 同じ7歳の○テレグノシスはこれが16回目のG1だが、こちらは3歳時のNHKマイルCでタイトルは確保できている。“東京のトニービン”といわれるだけに、父は東京芝G1は全て勝っていて、このレースに勝てばノースフライト以来12年ぶりとなる。ノーザンテースト牝馬との配合ではオークスと天皇賞(秋)に勝ったエアグルーヴ、天皇賞(秋)のサクラチトセオーが出ている。トニービン自身が晩成型で産駒にも7歳で天皇賞(秋)を制したオフサイドトラップがいるように高齢まで活力が衰えない系統だし、母の父がノーザンテーストなら、ハイペリオンを基調とした配合となるだけにトニービン産駒としてはむしろスタミナと成長力が持ち味となる。それだけに一昨年逃がしたチャンスをもう一回拾い直すという渋太さも持ち合わせているだろう。牝系は5代母が名牝ラフショッドで、ここからはヌレエフやサドラーズウェルズが出ている。 表1の下の部分で示したように、“穴血統”として威力が大きいのはダンチヒ系。過去の香港勢を見ても2着したオリエンタルエクスプレスは父グリーンデザート、勝ったフェアリーキングプローンはデインヒルといずれもダンチヒ直系だった。表2に現在の香港の国際レーティングを示したが、スプリンターズSのサイレントウィットネスと、中距離のヴェンジャンスオブレインの評価がずば抜けている。今回来日した3頭は人気ほどに大きな差はなく、中盤以下はやや甘めの評価ということができる。そう考えると、昨年のサイレントウィットネスでさえ3着に敗れたのだから過大評価は危険であり、逆に香港勢では最も人気のないザデュークでも実力を最大限に(昨年暮れの香港マイルくらい)出せればそう遜色はない。フェアリーキングプローン10番人気、ブレイクタイム15番人気と大穴実績のあるデインヒル直仔だけに、3連単の2着とか3着候補には加える価値あり。△。 ダンチヒ直系にはもう1頭シンボリグランがいる。父のグランドロッジは凱旋門賞馬シンダー、02年のワールドチャンピオン・グランデラのほか、シャトル先のオーストラリアでもショーグンロッジをはじめ多くの活躍馬を出した。種付け頭数が多い割に率が今イチな気がしないでもないが、ときに大物を出しているのは事実だ。母はフランスの大オーナー・ブリーダーとして知られたジャン・リュック・ラガルデール氏の生産馬で、曾祖母コンデッサはヨークシャーオークス勝ち馬。その産駒ビコーペガサスはセントウルSなど4勝を挙げたほか、スプリンターズSや高松宮杯の2着を含め短距離戦線で長く活躍した名馬。多様な欧州血脈を薄いノーザンダンサーの近交でまとめる凝った配合はシンボリ・ブランドらしく、派手さはないが質の高さを感じさせ、G1でも格負けしない底力を秘めている。▲。 サンデーサイレンス産駒がついに摘み残したG1がこのコースのNHKマイルC。翌週にヴィクトリアマイルをダンスインザムードとエアメサイアが1、2着を独占したのは皮肉だが、このレースもここまでサンデーサイレンス産駒はジェニュインとアドマイヤマックスが2着だったり、孫のツルマルボーイが勝ったりして、ニアミスが続いた。となると、直仔より孫狙いに妙味があるといえないだろうか。インセンティブガイは昨年のNHKマイルC勝ち馬ラインクラフトと同じエンドスウィープ×サンデーサイレンス。フジサイレンスは母がSS血脈に相性の良いマルゼンスキー牝馬で、父はフジキセキ。ドリームパスポートのダービー3着を見ると、フジキセキの静かなブームはまだ終わっていない。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2006.6.4
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