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昨年シーザリオが勝ったアメリカンオークスでお馴染みのハリウッドパーク競馬場は、今年から古馬牝馬のためにアメリカンオークスと同額の賞金を用意した国際招待重賞、キャッシュコールマイル招待Sを新設した。新設というよりこの時期にG3としてあったロイヤルヒロインSにスポンサーを得てレース名を改め、賞金を3倍強に増額した形で、同場にとっては賞金額でアメリカンオークスと双璧となる実質的なG1レースだが、グレードはG3のままである。高額賞金と出走馬の質を維持しつつ継続できれば3〜4年後にはG1への昇格があり得る。対して、毎度のことながらそういった手続きを経ないJRA方式によって、このレースはG1として唐突に生まれた。いいのかなと思うが、紙面を賑やかにしたり(このようにG1特集号を出したり)できるので大部分の競馬マスコミは文句をいわないわけですな。そういうわけで、過去の成績も何もないため、こちらも唐突に東京1600mで歴代の名牝がもし戦えばという出馬表を作ってみた。メンバーは合同フリーハンデの歴代ランキングから牝馬を抽出してダートのみのG1勝ち馬を除外した上位18頭である。メジロラモーヌがいないとかシャダイソフィアはどうしたという意見はあると思うが、こういうのはどのように選んでも異論が出るものなので、これでご了承願いたい。なかなかいいメンバーでしょ? 私ならヒシアマゾンを買いたいが、唯一の60年代生まれトウメイが年長の意地を示す可能性はあるし、5人いる武豊が駆け引きに溺れる間にフラワーパークが逃げ切って大穴という線もあるかもしれない。 そういったアホな話はさておき、この架空出馬表を見れば、第1にサンデーサイレンス、第2に武豊という今どきの名牝の条件が浮かび上がる(3年も競馬をやっていれば、その程度のことは表を見なくても分かるが)。そこで、第1と第2の条件が重なったエアメサイアが◎。2000mでラインクラフトに2勝、それに対して1600m以下では3敗と1600mが相手の領分なのは成績を見る限りはっきりしている。しかし、サンデーサイレンス×ノーザンテーストの配合にはデュランダル(スプリンターズS、マイルチャンピオンシップ2回)、アドマイヤマックス(高松宮記念)と2頭の短距離チャンピオンがいて、皐月賞馬ダイワメジャーの最近の活躍の場は1600m。アドマイヤマックスなどは2歳で1800mの重賞に勝ち、3歳でセントライト記念で2着していながら短距離で頂点に立ったように、万能血統同士の配合だけに与えられた条件でそれなりに答を出すことはできるが本領は短距離にあるということなのかもしれない。また、ノーザンテーストの代表産駒から極端な例を挙げれば、オークス3着のダイナアクトレスは後年スプリンターズSに勝った。1200m初挑戦で金星を飾ったオレハマッテルゼは父サンデーサイレンス、祖母の父ノーザンテーストという血統だ。エアメサイアの母エアデジャヴーはオークスで2着して、1800mのクイーンSに勝った実績を残すが、ノーザンテースト×ボールドルーラー系の配合から出たシャダイソフィアは桜花賞馬だし、ギャロップダイナも安田記念に勝った。エアメサイアが1200mを走る姿は想像しにくいが、少なくとも1600mなら100%に近い能力を発揮できるだろう。デュランダルやアドマイヤマックス、そしてオレハマッテルゼがタイトルを得た年齢を考えると晩熟型ともいえるだけに、桜花賞の当時とはまた違った戦い方ができるだろう。 ○ラインクラフトはおおむね早熟なエンドスウィープ産駒だが、昨年のスイープトウショウの大活躍を見ると、ある水準を超えたものには一般的な物差しが当てはまらないようだ。こういった傾向はその時代の主流をなす血統には往々にしてあることで、今はミスタープロスペクターがそういった勢力拡大モードに入っていて、ゴドルフィンに栄転を果たしたユートピアが示すように、フォーティナイナーの分枝には特にそういった勢いが溢れている。母はサンデーサイレンス×ノーザンテーストで、この配合の繁殖牝馬からは、サカラート、ヴァーミリアンの兄弟、そしてプリサイスマシーンやサクラメガワンダーと重賞勝ち馬が次々に生まれていて、その優秀性は十分に証明されている。 ▲アグネスラズベリは父がグラスワンダーを破った安田記念勝ち馬。母の父は“東京の”トニービン。トニービンはドバイシーマクラシックのハーツクライ、皐月賞2着のドリームパスポート、天皇賞2着のリンカーンの母の父であり、キストゥヘヴンの父アドマイヤベガの母の父でもある。父系祖父サクラユタカオーはNHKマイルCのロジックの母の父で、血統表中に潜んで今季ここまで大活躍の血脈を取り揃えた1頭。3歳秋からの急上昇で一気に頂点を極めた父のように、勢いで格を逆転する可能性を秘める。 △ヤマニンシュクルは、祖母がケンタッキーオークスなど8勝を挙げ、ニジンスキーを受胎して鳴り物入りで輸入された名牝。そのときのお腹の子が本馬の母となった。父のトウカイテイオーはダービーとジャパンCをこのコースで勝っており、産駒は阪神JFの本馬のほか、マイルチャンピオンシップのトウカイポイント、かしわ記念のストロングブラッドと、年齢、性別、馬場の違いはあってもG1勝ち全てを1600mで挙げ、しかもどれも人気薄での勝利だった。問題は穴といえるほど穴にならないだろうという点だが、人気以上には走れると見ておきたい。 ヤマニンアラバスタは父も母の父もこのコースでG1勝ちのある正統派芦毛のグレイソヴリン系。今回も少数派の非SS系だが、切れ味でSSを逆転できるとすればグレイソヴリンだろう。東京の牝馬限定戦に限れば〔2.0.1.1〕で掲示板を外していない。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2006.5.14
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