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3月末のドバイワールドC開催が終わると「週刊競馬ブック」の海外ニュース欄も北米の三冠、そして欧州のクラシック路線を追う内容が増えてくる。欧州での4月初めというと、マイル路線の準重賞が中心となり、その中で重要なのがフランスのメゾンラフィット競馬場の直線1400mで行われるジェベル賞。マキアヴェリアンやキングマンボといったニアルコス家のエリートが勝ってクラシックへ向かったことでも知られるこのレースの、記念碑的存在となっているのが1980年の勝ち馬ヌレエフだ。2歳時にデビュー戦となったG3のトーマスブライアン賞を6馬身差で圧勝し、3歳を迎えるとジェベル賞をステップに英2000ギニーへ。そこでも馬群を突き破るようにして快勝と見えたが、ポッセの進路を妨害したため失格となった。その後は英ダービーを目指したもののウィルス感染のため引退。結局、3戦して他馬に1度も先着を許すことなく競走生活を終えている。種牡馬となってからは実質的初年度産駒のシアトリカル(BCターフ)を皮切りに、名牝ミエスク(BCマイル)、ジルザル(クイーンエリザベス2世S)そして90年代終盤にはパントレセレブル(凱旋門賞)、スピニングワールド(マイルG1・5勝)など、01年秋に世を去るまで途切れることなく名馬を量産したことは周知の通り。後継のシアトリカルも種牡馬として大成功したので“ヌレエフ系”が確立されるのも時間の問題と思われたものだ。ところが、今になってみると意外に後が続いていない。スピニングワールドやパントレセレブルらはG1勝ち馬を出してはいるものの散発で、当初の期待の大きさからすれば物足りないといわざるを得ない。ヌレエフの甥に当たる大種牡馬サドラーズウェルズは、同じく種牡馬の父としては規模縮小傾向にあるが、それでも初期のインザウィングスやバラシア、日本のオペラハウス、新鋭モンジュー、北米担当のエルプラドとそれなりの勢力を維持している。デインヒルやストームキャットやサンデーサイレンスが種牡馬の父としても大成功しているのに比べると、その差は歴然としている。 ヌレエフ直仔のステートリードンはBCターフ勝ちのマニラの半弟で、自身もセクレタリアトSやハリウッドダービーといったG1に勝った一流馬だが、種牡馬としては、率直にいって失敗した。しかし、海外に残した娘の子からは重賞勝ち馬が出ていて、やはりヌレエフ系らしく、こちらの方面には才能があった。日本でもダイワカーソンが輸入されて京王杯3歳Sに勝っている。○テイエムプリキュアもそういったヌレエフ系らしさがよく出た例といえるかもしれない。父がパラダイスクリークだったのも結果としては良かった。パラダイスクリークの祖母ツリーオブノレッジはシアトリカルの母で、血統表の3代目でヌレエフの代表産駒シアトリカルの配合が復元されていることになる。牝系は世界で最も偉大なラトロワンヌ系。近くにはフェブラリーS2着のエムアイブランがいる程度だが、ケンタッキーダービーのゴーフォージンや名種牡馬プレザントタップの出るブラックヘレン〜フラフラの分枝で、ラトロワンヌ系の特徴のひとつとして、休眠状態の細い分枝からでも突然名馬が出現するということがある。全体の構成はノーザンダンサーとナスルーラを柱にフランスのステイヤー血脈を取り込んだ父母相似形のオーソドックスなもので、少なくとも2歳完結の早熟型とは思えない。 ▲タッチザピークはカナダの名門出身。祖母ダイジンはカナダのローカルG1シリーンSに勝ち、その半兄ウィズアプルーヴァルは加三冠馬、全弟タッチゴールドはベルモントSでシルバーチャームの三冠を阻止した。更に4代母の孫に加三冠馬イズヴェスティアも出るクラシック牝系。サンデーサイレンス、ミスタープロスペクター、バックパサーといった要素はサイレンススズカやゼンノロブロイに、母のミスタープロスペクターとデピュティミニスターはカネヒキリに通じるもの。 △ダイワパッションの母の父はシャーリーハイツ直仔のシェイディハイツで、やはり種牡馬として成功しなかったが、ヒシミラクルの母の父として名誉回復した。曾祖母は愛1000ギニー、チャンピオンSに勝った名牝カーンルージュ。母が重厚な欧州型の構成なので、フォーティナイナーのスピードに幅と奥行きが加わっている。相手強化でも互角にやれる底力を見込んでいい。 ウインシンシアの母はジャッジアンジェルーチ×ノーザンテースト。これは高松宮記念のオレハマッテルゼの母と同じ。ジャッジアンジェルーチはアジュディミツオーも出しているので、今年ここまで母の父としてのG1勝ち頭なのである。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2006.4.9
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