2006オークス


隠れたテスコボーイを探せ

 とかく荒れるのがオークスで、昨年のシーザリオ単勝150円は、86年メジロラモーヌ、87年マックスビューティと180円が2年続いて以来18年ぶりの大本命馬の勝利だった。そこまで圧倒的支持を受けなくても1番人気が勝つのはおおむね3〜5年に1回のことなので、1、2、3着が人気順通りに決まった昨年の翌年であれば安心して穴狙いに走っていいといえるだろう。そこで傾向を探るべく過去20年の穴馬を一覧にしてみた。血統面から見た穴の傾向に関して、結論としては、よく分からない。捉えどころがない。そうはいっても、せっかく作ったのをボツにしてしまうのはもったいないので、いくつかの決定的とはいえない傾向をほじくり出してみる。1)実績に欠ける長距離血統。90年代前半までは大抵このパターンに該当。2)いかにも短距離血統と見られて人気を落とした実績馬。94年のゴールデンジャックあたりから力を増し、99年ウメノファイバーが代表格。チャペルコンサートもこれに当たる。3)サンデーサイレンス。これも細かいこと抜きで要チェックである。これらのほか、表の表面にはあまり出てこないが、テスコボーイの血が意外に多く潜んでいることに驚く。バンブーアトラスの母の父、トウショウボーイやサクラユタカオーの父がテスコボーイであって、サンデーサイレンス、ノーザンテースト以前に一世を風靡した血統なので流通量から考えて当然といえばいえるのだが、この血脈は軽快なスピードの源泉と捉えられることが多くて、それ以外にも本質的なある種の強さを伝えていた点は見落とされがちだ。折しもシンガポール航空国際Cで悲願のG1勝ちを果たしたコスモバルクは母がテスコボーイ2×4の強い近交馬。血統表の奥に潜むことで、スピードだけで計れない日本に根付いた日本血脈固有の強さを伝えることになっているのではないかと思わせる。

 アサヒライジングは父がサンデーサイレンスと名門スターロッチ系の組み合わせによる名血で、その祖母の父としてテスコボーイの名前が見える。良家の御曹司らしい上品さが大成を阻んだ面があるが、潜在能力がG1級だったのは間違いのないところ。母は2歳秋の東京で2戦目の新馬戦(芝1800m)を逃げ切り、続くホープフルSも4着した素質馬。母の全兄アサヒジュピターは5勝を挙げアルゼンチン共和国杯でも3着に入った。ただ、この血統は菊花賞馬ミナガワマンナ×凱旋門賞馬ボンモーでワイルドリスク4×4のインブリードも備えた完全長距離仕様にもかかわらず、引っ掛かって甘くなるケースが多かったように思う。潜在的なスタミナは戦績が示す以上のものがあったはずだ。3代母の産駒には脚部不安に悩まされながらクラシック好走の後、天皇賞・春でも2着に入った無冠の大器アサヒエンペラーもいる。全体に一時代前の良血を集め、その蓄積されたエネルギーをサンデーサイレンスの血が引き出すという形で、最も似合うのは今回のこの舞台だろう。

 テスコボーイが隠れているということではシェルズレイのほうがよりはっきりと隠れていて、こちらは母の父がロイヤルタッチの半兄のダービー馬。祖母の父がトウショウボーイということで、コスモバルクを思わせるテスコボーイ3×4のインブリードを持っている。母は2歳の比較的早い時期に活躍したが、名門フロリースカップ系トサモアーの分枝(子孫に宝塚記念のスズカコバンなど)にテスコボーイ血脈が重ねられた配合は、繁殖牝馬としてより高い可能性を秘めている。父も母の父も3歳のこの時期に東京でG1勝ちを収めており、ここでピークを迎える可能性は十分ではないか。

 テスコボーイ直系がヤマニンファビュル。父系祖父サクラユタカオーの産駒にはウメノファイバーのほかに、93年にベガの2着に入ったユキノビジンがいる。ユキノビジンは3番人気だったので表には入っていないが、サクラユタカオー×ロイヤルスキーの配合がオークス2着になったことは、少々の穴馬の台頭より大きな衝撃があった。ちょうど今回エアジハードの子がオークスで好走すれば同じくらいびっくりなはずなので、先手を打って▲としてみた。

 フサイチパンドラは穴馬条件3のサンデーサイレンス産駒。母の父ヌレエフは長か短かといわれれば短に分類できるが、直接の産駒に凱旋門賞馬パントレセレブルを出したことを別にしても、良血の塊だけにテスコボーイ同様母系に潜り込んで変貌する可能性が高い。このレースでも直系ワンダーパヒュームと娘の産駒オリーブクラウンがそれぞれ3着に入っている。牝系は欧州3歳チャンピオン・エルグランセニョールからブリーダーズCマイルのドームドライヴァーまで名馬がズラリと並ぶ名門ベストインショウ系。そろそろ日本でも大物の誕生があるころだ。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2006.5.21
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