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いきなり恐縮ですが前回秋華賞号小欄の訂正とお詫びから。「カワカミプリンセスの父系祖父ダンシングブレーヴはデビューから凱旋門賞まで7連勝」と書いたが、これは「デビューから英2000ギニーまで4連勝、英ダービー2着を挟んで凱旋門賞まで4連勝した」が正しい。訂正致します。すみません。今回の主役メイショウサムソンは母の父がダンシングブレーヴなので、間違いを闇に葬るわけにもいきません。 さて、ダンシングブレーヴといえば凱旋門賞であるが、今年の凱旋門賞のプレレーティングともいうべき世界ランキング、下の「トップ50ワールドリーディングホース」を見ていただきたい。9月9日発表なのでちょっと古いが、凱旋門賞関連と日本関連の馬だけを抽出してみた。下の方を見ると当時フランスのローカルヒーローに過ぎなかったレイルリンクは日本の3歳トップであるメイショウサムソンとレーティング118で仲良く並んでいる。レイルリンクのこの数字は春のパリ大賞典勝ちによって得たものなので、ひと夏越して一気に古馬のトップを食うほどに力をつけたということになる。ということは、あるいはひょっとしてメイショウサムソンもダービー後に凱旋門賞に目標を絞って挑戦すれば勝てたかもしれない可能性がないわけではない。今のところ凱旋門賞は日本競馬の悲願のようになっていて、ここまで来たら何かが勝って凱旋門賞コンプレックスを解いてくれることを願うが、本当はもう力関係の目安もできてきたので、無理に凱旋門賞だけを目指して突き進むよりも、ブリーダーズCが良さそうならブリーダーズCへ、ドバイが良さそうならドバイへ、あるいは香港へ、オーストラリアへと、適性のありそうなところ、強い馬のいそうなところを選んで遠征すればいいのではないだろうか。そこでの勝ち方いかんで、それによって世界最強の評価を受けることも可能な時代なのである。
そのような外向きに可能性を探求していく道がある一方で、同じような相手関係でも距離の異なるレースで争うことによって可能性を探ろうとするのが伝統的三冠の存在意義。イギリスの三冠は、ニジンスキーが達成し、続く凱旋門賞でその疲労が尾を引いて2着に敗れた70年に事実上の崩壊を見たといえ、同時に三冠と凱旋門賞の価値の逆転が決定的になった。でも、逆にいえば、それまでは百数十年にわたって三冠が優れたサラブレッドの選抜システムとして機能していたということだ。逆転したのは種牡馬としての価値という、競走能力とは別の要素が占める比重も大きい指標がレースの場に入り込んできたため。最長距離のセントレジャーはお荷物とみなされ、それによって出走馬のレベルも低下するという悪循環に陥ったように見える。対して菊花賞はまだ健康そのものだ。似たようなことは昨年も書いたので重複は避けるが、今も優れた種牡馬を送り出すのは短距離路線よりもむしろ三冠戦線。菊花賞馬ダンスインザダーク、ダービー馬スペシャルウィークらの活躍だけでなく、今年産駒がデビューした新種牡馬も、目下トップのアドマイヤコジーン(安田記念)をマンハッタンカフェ(菊花賞)、続いてタニノギムレット(ダービー)が追うという展開になっている(10月17日現在)。 さてメイショウサムソンはサドラーズウェルズ系オペラハウス×ダンシングブレーヴという凱旋門賞でも馬力負けしない血統。牝系は名牝ガーネットを経てフロリースカップに遡る小岩井の名門で、同じ父のテイエムオペラオーをさらに晩成にしたような趣だが、実際にはテイエムオペラオーより早く世代の覇権を握った。このあたりはサドラーズウェルズ、ダンシングブレーヴといったクラシックに強い血統が持つ3歳時にはピークに達するという特性が出ているためだろう。ちょこんと白の乗った鼻端や重厚なつくりの馬体には母の父のダンシングブレーヴの影響が特に強く出ている。力任せの勝負に持ち込めば恐らく負けないのではないだろうか。ただ、もし何かに不覚を取るとすれば、それは過去10年で6勝を挙げるサンデーサイレンス系の切れ味かもしれない。○。 メイショウサムソンに劣らない底力を備え、そこにサンデーサイレンスの切れ味を上乗せできれば逆転が可能ではないか。そこで◎にネヴァブション。3代母はサンタラリ賞、仏オークス、ヴェルメーユ賞とフランス3歳牝馬G13つを含む5連勝で凱旋門賞に挑んだ名牝で、そこでは2着だったとはいえ、相手がミルリーフだから、これは生まれた世代が悪かったとしかいいようがない。そのフランスの歴史的名牝に、凱旋門賞馬ヴェイグリーノーブルが配されて生まれたのが祖母で、母の父はミルリーフだから、3代目までで凱旋門賞2勝2着1回という大変な実績を誇る。父は骨折という要因があったにせよサンデーサイレンス産駒としては遅くに実績を挙げており、産駒にもじっくり力をつけてくるものが多い。古い欧州血統にノーザンダンサーとサンデーサイレンスを導入するというパターンも大きなパワーを生み出しそうだ。 母の父ディキシーランドバンドで思い出すのは一昨年の勝ち馬デルタブルース。ディキシーランドバンドはノーザンダンサーらしい万能型で、基本的にダートに向き、時としてゴールドCのドラムタップスや仏オークスのエジプトバンドのような芝のステイヤーを出す。▲アクシオンは父がサンデーサイレンスで、3代母の父キートゥザミントを通じてリボーの血が入る。天皇賞(秋)のヘヴンリーロマンスと同じ牝系でもある。大駆けの要素の豊富さでピックアップすればこれ。 △ドリームパスポートは母が香港ヴァーズのステイゴールドの半妹で、祖母はサッカーボーイの全妹。印象としてフジキセキと3000mはどうしても結びつけにくいが、サッカーボーイ血統とトニービンの助けがあれば何とかなりそうな気もする。 |
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競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2006.10.22
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