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去る2月4日の京都競馬場第4Rでモガリブエが勝ち、ノーザンテースト産駒は79年から28年連続JRA勝利という新記録を打ち立てた。武豊騎手の多くの記録を同じで、ノーザンテースト関係の記録はほとんど自己記録の更新となり、今回もその例に漏れないが、8歳馬による障害未勝利戦というあたりにこの種牡馬の逞しくも渋太い特性がよく現れている。今回はそれに沿った狙いにしようという方針を立てたのだが、さすがに直仔は現役ではモガリブエのほかサンライズテーストとショーストッパー(いずれも8歳)しかいないので、母の父としてのノーザンテーストに視点を移してみた。 母の父としてのノーザンテーストの初年度産駒(初年度孫か?)は81年生まれで、そのうちの1頭ダイナカレッジが84年8月11日に初勝利を挙げた。数が揃ってきた83年生まれからはダイナコスモスが出現し、これが86年春に皐月賞に勝って初重賞となる。以来20年、どの世代からも欠けることなく重賞勝ち馬が現れ、さすがにG1ともなると途切れることがあるが(下表参照)、総じて2000m以下を得意とし、G1レベルに達するものでも競走寿命の長いことが分かる。表の馬名の太字はダートG1勝ち馬、レース名の太字は1600m戦で、そのふたつの重なるところに◎ユートピアがいる。全日本2歳優駿から昨年の南部杯まで4年連続G1勝ちの快挙はノーザンテースト血脈の面目躍如というべきで、もしこれがアメリカならフォーティナイナー産駒がG1に勝てば3年連続を待たずして種牡馬としての大争奪戦が始まるはずなので、日本ならではの記録と見ることもできる。半兄に函館記念のアロハドリームがいる程度で、牝系にはそれほど派手な活躍馬があるわけではないが、5代母ミズクレメンタインはステークスに11勝を挙げた名牝で、その全姉トゥーシーは子孫にタップダンスシチー、ウィニングカラーズ、チーフズクラウンを出して繁栄し、同じく全姉トゥーリーの子孫には50年近くを経てセイウンスカイが現れている。いつ大物が出ても驚けない名門で、そこへ配合されてきた種牡馬も5代母の父ブルリーに始まり、スワップス、トムフールと一流が揃って牝系の格も損なわれずに保たれた。祖母の父デワンはボールドルーラー直仔で、ノーザンテーストとボールドルーラー血脈との組み合わせは桜花賞馬シャダイソフィアや安田記念のギャロップダイナが出ているように、なかなか強力。父フォーティナイナーのスピードとパワーを生かす点でもボールドルーラー血脈は有効だ。 もう1頭の「母の父ノーザンテースト」が○リミットレスビッド。下表に見る通り、この「孫クラブ」のG1制覇最高齢記録はファストフレンド、アドマイヤコジーンらの6歳。ただ、冒頭に述べたように自身の記録を更新するのがノーザンテーストのノーザンテーストたるゆえんである以上、この方面もどんどん開発されると考えるべきであり、パートナーが近年いよいよコンビネーションが噛み合ってきた最強のサンデーサイレンスであればなおさらだろう。しかも、同配合の同期生にはデュランダル、アドマイヤマックスがいて、それらの晩成ぶりを見れば、ダートに転じての開眼から一気の頂点奪取があっても驚けないと思う。クラシック候補となりながら大レースには手の届かなかった全兄フサイチゼノンやアグネスゴールドとの対照の鮮やかさも、むしろ買い材料となるのではないだろうか。
とはいっても、本命、対抗とも大変心許ない狙いなので、昨年の古馬ダート戦線最大の安定株を▲に据えておきたい。シーキングザダイヤは母が日本最初の国際的名牝で、ストームキャット×シーキングザゴールドの組み合わせも、一昨年のキーンランドセールでこの配合の1歳馬が800万ドルで落札されたことから世界最先端といっていい。どうしてこういろいろな相手に僅差で負けるのかは不思議というしかないが、ストームキャットの代表産駒にはいろいろな相手に僅差で勝ち続けてG1・5連勝を果たしたジャイアンツコーズウェイという名馬もいる。ジャイアンツコーズウェイは連勝のあとクイーンエリザベス2世S、ブリーダーズCクラシックと僅差で連敗して引退したので、成績上はその裏焼きともいえるシーキングザダイヤなら、きっかけさえ掴めば連勝を始めてもおかしくはない。これまでで最強のメンバーが揃ったことが、そのきっかけになる可能性はある。 △カネヒキリの昨年の大活躍が呼び水となったか、暮れにグレイスティアラが全日本2歳優駿を制し、今年に入ると東京新聞杯のフジサイレンスに始まって、シルクロードSのタマモホットプレイ、きさらぎ賞のドリームパスポートとフジキセキ産駒がジャンルを問わず静かなブームとなっている。今回がそのピークとなるのか、あるいはドバイでさらに壮大なクライマックスを迎えるのかは今のところ分からないが、カネヒキリの場合は、母の持つミスタープロスペクターと父の持つインリアリティの融合がパワーと底力を補っているのは間違いない。日本で珍しいインリアリティはアメリカでも貴重で、スマーティジョーンズ、リアルクワイエト、アンブライドルド……とミスタープロスペクター系のクラシック馬の多くが母系にこのマンノウォー直系の血脈を持っている。母の全兄シルヴァーデピュティは快足で鳴らす名種牡馬なので1600mで距離不足ということもない。 穴でメイショウボーラー。覇気に欠ける内容が続くが、5代母の名がゾンビであれば、不振から蘇るのもそう難しくないだろう。 |
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競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2006.2.19
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