2005桜花賞


SS独占を阻むトウショウボーイ

 サンデーサイレンス産駒がクラシック戦線に登場したのは今から10年前。皐月賞をジェニュイン、ダービーをタヤスツヨシ、オークスをダンスパートナーが制した。その最初の年にダンスパートナーとプライムステージが2、3着を占めた桜花賞も時間の問題と思われたが、意外にてこずって、スティンガー、トゥザヴィクトリー、フサイチエアデール、エイシンルーデンスという強力布陣で挑んだ99年でさえプリモディーネに屈し、結局、翌年チアズグレイスが勝つまで5年もかかっている。ただ、いったん攻略してしまえばあとは他の大レースと同じで、ここ2年は(1)(3)着、(1)(2)着と続けて上位独占。今年はサンデーサイレンス直仔が5頭、父系祖父サンデーサイレンスが4頭、母の父サンデーサイレンスが4頭で合計13頭がSS系軍団という過去最大の勢力。今回を含めて直仔にはあと2回しか残されていないチャンスに期末決算大売り出し態勢で臨んできたといえよう。そこで、過去のSS産駒の前走と桜花賞の成績をまとめてみた。表は直仔に限ったが、前哨戦と本番に連勝したのはダンスインザムードだけ。サンデーサイレンス産駒はピークに仕上げないとここで要求されるスピードと切れ味を発揮できないし、かといってピークを桜花賞にピタッと合わせるのもなかなか難しいということがはっきり表れている。かの藤沢和雄調教師でさえ、99年スティンガーの1番人気12着の失敗を経てダンスインザムードの成功を見たということもできる。サンデーに限らずこの時期の牝馬ってそういうものではないのかと問われると、まあ大体そうなんだが、ダンシングブレーヴ産駒のキョウエイマーチやテイエムオーシャンがガンガン連勝して桜花賞も制しているのに比べると、そのあたりの鋭いが繊細なサンデーサイレンスの個性は見てとれる。

SS産駒の前走着順と桜花賞成績
年度馬名前走
着順
桜花賞
着順人気
1995ダンスパートナー3
 プライムステージ2
 キタサンサイレンス10918
96ノースサンデー9
 シーズアチャンス598
 シーズグレイス41113
97ホーネットピアス58
 オレンジピール54
 アンダンテ14818
98バプティスタ98
 サイキョウザクラ1416
 オルカインパルス1514
99フサイチエアデール2
 トゥザヴィクトリー5
 エイシンルーデンス96
 スティンガー121
2000チアズグレイス106
 フューチャサンデー155
01ダイワルージュ2
 ハッピーパス43
 フィールドサンデー6179
 ビッグエリザベス1816
02シャイニンルビー1
 チャペルコンサート75
 サクセスビューティ163
03スティルインラブ2
 アドマイヤグルーヴ1
 チューニー129
 チアズメッセージ1710
04ダンスインザムード1
 アズマサンダース7
 ムーヴオブサンデー43
 ダイワエルシエーロ75
 ギミーシェルター89
 レディインブラック108
 フィーユドゥレーヴ1310
 ヤマニンアルシオン91711


 同じことがSSの孫についてもいえるかどうかはまだ分からないが、分からないので同じことがいえると仮定すると、13頭の大勢力も一気に絞られる。前走大敗から巻き返したのがチアズグレイスだが、これも不良馬場の1秒0差だから、それを超えるようでは苦しい。これで更に絞り込まれた。

 絞られたところでいったん方向転換して、何がSSの独走を阻むか、穴馬の資格を備えた血が何かを考えると、やはりスピードと瞬発力のナスルーラということになる。ダンスパートナーの追い込みを抑えたワンダーパヒュームは母の父がトウショウボーイ。一昨年のSSワンツーを阻んだシーイズトウショウはサクラバクシンオーの子だが、テスコボーイとソシアルバターフライの血によってトウショウボーイを再構成した形。SS時代がくる以前、アラホウトク、シスタートウショウと直仔に2頭の桜花賞馬を送っただけあって、トウショウボーイはナスルーラでも特にSSキラーとしての働きが目立つ。マイネコンテッサはトウショウボーイの娘の子。父のペンタイアは“キングジョージ”の勝ち馬で、日本ではようやくクラフトワークが大物候補として頭角を現してきたところだが、オーストラリアやニュージーランドでは短距離から長距離まで多くはなくても複数のG1ウイナーを送って成功している。オセアニアで成功している理由を考えると、ひとつにスターキングダム系という活力のあるハイペリオン系の血が母系から入るということがある。この母のトウショウボーイ×チャイナロックという配合は日本的な最上級のハイペリオン血脈(母はハイペリオン4×4×5)を伝えるものだけに、父の父ビーマイゲストのハイペリオン4×4、父の母ガルヌークのハイペリオン5×5と呼応して、その周辺の欧州血脈の良さをも引き出す可能性が高い。父自身はその母の父である名馬ミルリーフの影響を強く受けた優れた瞬発力を武器としたので、ハイペリオンを土台にしてナスルーラの決め手を生かす、やや古風だが桜花賞向きのデザインが施された血統だといえる。母の兄にはシンボリルドルフの菊花賞で2着し、後に毎日王冠に勝ったゴールドウェイがいて、名門フリッパンシー系20年ぶりの大駆けを期待させる。

 サンデーサイレンスに戻ります。最有力はエアメサイア。母は桜花賞3着、オークス2着、クイーンSに勝って秋華賞ではまた3着だった。種牡馬の場合タイトルがあるのとないのとでは大違いだが、牝馬、それも自家生産に供されるのであれば、間違いなく能力が高く、しかも限界までの無理をしていないこういう成績はむしろ理想的であるかもしれない。この牝系にサンデーサイレンスが入ればエアシャカールのように2冠+菊花賞2着というトップクラスの能力が期待できることも分かっているし、母に足りなかった限界に近い部分での頑張りも補われるだろう。サンデーサイレンス×ノーザンテーストの配合もデュランダル、ダイワメジャーに続いてアドマイヤマックスが高松宮記念に勝って、両巨頭の死後、急速に新たな黄金のニックスとしての地位を築きつつある。母の名前からからすると、同じように3着だったという恐れはなきにしもあらずだが……。

 サンデーサイレンスの娘の子の活躍は昨年後半から特に目立っていて、その流れに乗ったか阪神大賞典ではマイソールサウンドが突如復活して驚かされた。フレンチデピュティ×サンデーサイレンス牝馬の配合は初年度から2頭の重賞勝ち馬が出ていて将来に期待が膨らむ。▲アンブロワーズは祖母の産駒にフサイチコンコルド、孫にリンカーンがいて、曾祖母が英オークス、ヨークシャーオークス、英セントレジャーに勝ち、凱旋門賞2着、“キングジョージ”3着の名牝サンプリンセス。この世代では最初の重賞勝ち馬だが、重厚な欧州の名門牝系だけにむしろ本格化するのはこれから。伸びしろの大きさを考えれば逆転も十分。

 フェリシアはヘクタープロテクター、シャンハイ、そして名牝ボスラシャムなどマイルの名馬を出すロイヤルスタチュート系で、96年2着のイブキパーシヴもこのファミリー。父は“グランプリ”3勝より前、朝日杯のレコード勝ちで怪物の称号を得た。名ブルードメアサイアー・アイリッシュリヴァーはロベルト系との配合で昨年の凱旋門賞2着に大駆けしたムブタケルを出す。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2005.4.10
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