2005天皇賞・春


プロフェッショナルの成立

 国際レーティングでは、距離のカテゴリーを短い方からS、M、I、L、Eの5つに区分する。Sはスプリント(1000m以上〜1400m未満)、Mはマイル(1400m以上〜1900m未満)、Iはインターミディエート(1900m以上〜2200m未満)、Lはロング(2200m以上〜2800m未満)、Eはエクステンディッド(2800m以上)となっている。S、M、Lは見たそのままだが、ちょっと分かりにくいのがIとEで、インターミディエートは中間、エクステンディッドは拡張とか延長という意味。ロングよりも更に長い。現在一般的な「短距離馬、中距離馬、長距離馬」という区分、あるいは「スプリンター、マイラー、ステイヤー」という呼称よりは、慣れてしまえば区切りが明確で分かりやすいので、みなさんも「あの馬、Sは合うけどMだとなあ……」、「そうそう、Mはちょっと辛い」などと活用していただきたい。それはともかく、Eカテゴリーは、ニュアンスとして、むやみに長い、必要以上に長いという意味も帯びていそうだ。実際、昨年の国際レーティング115以上を集めた「ワールド・サラブレッド・レースホース・ランキング」(03年までのインターナショナル・クラシフィケーション)では、ランクインした162頭(複数部門でランク入りあり)のうち、S=21頭、M=55頭、I=52頭、L=44頭、E=10頭となり、E部門の占有率はわずか5%に過ぎない。
 これに似たカテゴリー分けをとっているのが、米国の血統理論として広く支持されている「ドサージュ・システム」で、これはスピード側からスタミナ側に向かって、B(ブリリアント)、I(インターミディエート)、C(クラシック)、S(ソリッド)、P(プロフェッショナル)の5つに分かれる。「ドサージュ・システム」は簡単にいうと「シェフ・ド・ラス(種の長)」としてカテゴリーごとにリストアップされた種牡馬が、当該馬の血統表にどれだけ現れるかを点数化し、それをもとに当該馬の個性を指数化する。要するに強い影響を及ぼす(と考えられる)祖先を色分けし、どの色が強いかを数字で表すわけ。ただ、国際レーティングが実際に走ったレースの距離を機械的に数直線上に収めるのとは少し違い、子孫に現れる能力の質の違いも座標軸として持っているのが特徴。例えばノーザンダンサー、ミスタープロスペクター、ブラッシンググルーム、ヘイローなど現在の主流を占める種牡馬はBとCの両方に区分される。目覚ましいスピードとクラシック向きの格を兼備するということで、これは短距離と中距離を足して2で割るのとは違う。さて、「ドサージュ」の最長部門担当はプロフェッショナルだが、それなりの頭数は揃っていても古い種牡馬が多く、現役馬の血統表で目にするとすればルファビュルー(フジキセキの母の父)くらい。P部門もE部門もない米国で発達した理論であるためというより、この部門の資源の避けがたい先細り傾向を示すものといった方が適当だろう(なお、「シェフ・ド・ラス」種牡馬の一覧は週刊競馬ブック5月9日発売号で連載開始の「ファーストクロップサイアー名鑑」=藤井正弘=に掲載予定です)。

 しかし、エクステンディッドとかプロフェッショナルという言葉の響きは、この3200m戦がほかと一線を画す孤高の域にあることを示しているようにも思える。欧州のE部門は2400mでもまだスピード不足とされる将来の障害種牡馬候補が争うB級リーグと見られがちだが、実際彼らがいかにタフなレースを戦っているかは、昨年のイングランディーレの遠征でも明らかになった。輸入種牡馬マリエンバードのように、E部門にはね返されて凱旋門賞を勝ったという例もある。2400mのチャンピオンが既定路線のようにここを回避し、L=長距離とE=超長距離の分化が明確になってくると、ゼンノロブロイやタップダンスシチーとは別の物差しで価値を測る必要が出てくるのではないだろうか。ここ2年の大波乱も、隠れていたプロフェッショナルが前触れなく実力を発揮した結果だと考えることもできる。
 トウショウナイトは2歳のオープン戦である程度の素質を示しながらしばらく伸び悩み、3歳の秋も深まってようやく結果が出てきた。いかにもステイヤーらしい成長ぶりといえるだろう。今回はせっかくなので、まずドサージュ的な切り口でその血統を見てみる。ミスタープロスペクターがB/C、プリテンスがC、キートゥザミントがB/C、ノーザンダンサーがB/Cと3代目は全て大レース向きの「シェフ・ド・ラス」種牡馬。4代目にはレイズアネイティヴ(B)、バックパサー(C)、グロースターク(C/S)、ニジンスキー(C/S)と並ぶ。数値は表に示した通り出走馬中では平均的なものだが、キートゥザミントはC/Sでもいいくらいだと考えられるので、実際にはもう少し上方修正が可能だろう。そして、父の母がフォールアスペン、自身の曾祖母はサウスオーシャンという、それぞれ20世紀屈指の名牝の存在が大きい。名牝の力というのはドサージュ理論が計算していないものだが、そういった理論からこぼれた部分にこそ血統の機微があるともいえる。

 には昨年本命のシルクフェイマス。サッカーボーイ産駒の2頭、▲アイポッパーヒシミラクルが続き、マカイビーディーヴァは押さえ。涼しい秋のオーストラリアから来て昼間これだけ気温が上がってくると、牝馬は体調維持が難しいだろう。


天皇賞・春 出走馬のドサージュ
馬名BICSPDP
DICD
アイポッパー40840161.00+0.25
アクティブバイオ401040181.00+0.22
アドマイヤグルーヴ611100182.27+0.72
ザッツザプレンティ901720281.67+0.57
サンライズペガサス712110301.61+0.47
シルクフェイマス401541240.92+0.08
スズカマンボ1111820321.91+0.66
チャクラ301351220.76-0.05
トウショウナイト801420241.67+0.58
ハーツクライ611500221.93+0.59
ハイアーゲーム721201222.14+0.64
ヒシミラクル30432120.71-0.08
ビッグゴールド1142221401.86+0.55
ブリットレーン20710101.22+0.30
マイソールサウンド50500103.00+1.00
マカイビーディーヴァ782300382.30+0.58
ユキノサンロイヤル1041200263.33+0.92
リンカーン611320221.59+0.50
 行きがかり上、出走馬のドサージュを示しておきます。「シェフ・ド・ラス」種牡馬が父なら16点、2代目なら8点、3代目なら4点、4代目なら2点をそのカテゴリーに加えます。B/Cなど複数の部門にまたがる種牡馬は点数を等分して加点。その数値を示したのが上のB、I、C、S、Pの欄(ドサージュ・プロフィール=DP)で、左がスピード、右がスタミナ、Cは中間であると同時に大レース向きの底力を示すと理解して下さい。DP計はB〜Pの合計で、大きいほど世界の主流血脈が豊富。DI(ドサージュ・インデックス)は{B+I+(C÷2)}÷{(C÷2)+S+P}で、スピードの要素をスタミナの要素で割ったもの。大きいほどスピード寄りとなります。CD(センターオブディストリビューション)は{(B×2)+I−S−(P×2)}÷(B+I+C+S+P)で、その配合のいわば重心がどこにあるかを示します。+2.00から−2.00の間で現れ、これも簡単にいうと大きいほどスピード寄り。なお、上の数値の太字はスタミナ寄りベスト5。この通り決まれば超大穴だ!

競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2005.5.2
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