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ディープインパクトの菊花賞はサンデーサイレンス産駒にとって60個目のG1勝ち鞍となった。初年度産駒のデビュー以来、全世代からG1勝ち馬を送り、なおかつ複数のG1獲得を続けてきた驚異的な記録に、驚異のダメ押しをしたのが今回の三冠達成だった。 秋の天皇賞は初年度産駒ジェニュインが3歳で2着に入ったのを皮切りに毎年連対馬が出て、サンデーサイレンス産駒に特に相性の良いレースとして定評があったが、2000年にはそれが途切れている。昨年の1〜3着独占は4年に渡る汚名返上をサンデーサイレンスなりの派手な形で実行した結果といえよう。下の表で分かる通り、このレースでの不振の時期は、世代的にも古馬芝中長距離の戦力不足が明らかで、短距離やダートを新規開拓している間にお得意さん(?)への対応が疎かになったともいえるだろう。しかし、2000年生世代以降は本来の中長距離への回帰が明らかになり、90年代後半に比べればずっと戦力に厚みが増していることも分かる。この流れなら10頭の出走を見た今年もサンデーサイレンス産駒中心と考えていい。 昨年から、サンデーサイレンス血脈はミスタープロスペクター系血脈との融合によって新展開を見せている。ゼンノロブロイ、スズカマンボ、そして、母の父に回ったサンデーサイレンスの最初のクラシック馬は、父がミスタープロスペクター系エンドスウィープのラインクラフトだった。初期にも天才サイレンススズカを送ったこの配合パターンから、今になってより多くの実りがもたらされるようになったのは、その数年の間にミスタープロスペクター血脈の日本への浸透が進んだ結果だろう。特にキングマンボはエルコンドルパサーからキングカメハメハまで、日本への直接的な影響度と活躍領域の幅広さにおいてミスタープロスペクター系随一ともいえる存在で、これは母が名牝ミエスクという名血ならではの成功と考えられる。◎スズカマンボは祖母キーフライヤーがダンシングキイの全妹。ダンシングキイはダンスパートナー、ダンスインザダーク、ダンスインザムードという3頭のクラシック馬を送ったサンデーサイレンスのベストパートナーとして説明不要の名牝で、それ以外にもこの牝系からは欧米2歳王者アラジやJCダートのイーグルカフェなど途切れることなく名馬が送り出されている。サンデーサイレンス×キングマンボという最高級の骨組みを支えるのにも十分に立派な土台で、母自身はノーザンダンサー3×4、レイズアネイティヴ3×4、さらにグロースターク4×4も加わる濃厚で現代的なスピードに溢れた中距離の名血による構成。春の天皇賞には勝ったが、むしろ2000〜2400mの方が合っていると思えるほどだ。ちなみにこの土曜に行われるブリーダーズCクラシックで主力視されるセイントリアムは、セイントバラード×クワイエトアメリカン。こちらもヘイロー×ミスタープロスペクターの組み合わせになる。 ○ゼンノロブロイは同じサンデーサイレンス×ミスタープロスペクターの組み合わせで、こちらは本命馬に比べると米国ローカル色が強まる。母自身が米G1バレリーナHを含め7つのステークス勝ちを果たした快足で、その活躍に続いて牝系からはG1エイコーンSのキャッツクレードルや米G3勝ちのアナザーらが出た。90年代に入って勢いを増し、ゼンノロブロイの出現でその地位を確立しつつある新興の名門候補といえるファミリーだ。マイニングのミスタープロスペクター×バックパサーという配合は、サイレンススズカの母の父ミスワキと同じ。バックパサーといえば、スペシャルウィークの母の父マルゼンスキーの母の父でもあり、この血脈の料理の仕方はサンデーサイレンス産駒の底力を左右する重要な要素であることが分かる。 ミスタープロスペクターとの配合を軌道に乗せ、ほとんどの主流血脈との組み合わせを成功させたサンデーサイレンスに残された最後の大物がサドラーズウェルズだが、これは自身より先に息子のスペシャルウィークがシーザリオを出して国際G1勝ちを果たした。決定的に相性が悪いわけではないんですな。そこで大穴としてヘヴンリーロマンスに▲。牝馬のぶん、サドラーズウェルズ特有の重さに脚を引っ張られないということもいえるかもしれない。 ミスタープロスペクター、サドラーズウェルズときて、気がつくと△アサクサデンエンは父系がサドラーズウェルズで母系がミスタープロスペクター。一見ミスマッチのこの組み合わせは英ダービー馬ガリレオ、同じくモティヴェーター、その他にもリフューズトゥベンドなど出す。同じ配合パターンのホオキパウェーブも馬場が渋れば要注意。 |
| 【表1】 サンデーサイレンス産駒 世代別G1勝ち馬 | |||||
| 生年 | G1勝ち馬 [ ]数字は勝利数 | G1頭数 | G1勝利数 | 出走頭数 | 重賞勝馬頭数 |
| 1992 | ジェニュイン[2] ダンスパートナー[2] タヤスツヨシ[1] フジキセキ[1] マーベラスサンデー[1] | 5 | 7 | 65 | 12 |
| 1993 | バブルガムフェロー[2] イシノサンデー[1] ダンスインザダーク[1] | 3 | 4 | 62 | 8 |
| 1994 | サイレンススズカ[1] ステイゴールド[1](※香港) | 2 | 2 | 67 | 5 |
| 1995 | スペシャルウィーク[4] | 1 | 4 | 89 | 10 |
| 1996 | アドマイヤベガ[1] スティンガー[1] トゥザヴィクトリー[1] | 3 | 3 | 113 | 13 |
| 1997 | エアシャカール[2] アグネスフライト[1] チアズグレイス[1] | 3 | 4 | 140 | 13 |
| 1998 | マンハッタンカフェ[3] ビリーヴ[2] アグネスタキオン[1] メジロベイリー[1] | 4 | 7 | 145 | 18 |
| 1999 | ゴールドアリュール[4] デュランダル[3] アドマイヤマックス[1] サンデージョイ[1](※豪州) | 4 | 9 | 137 | 10 |
| 2000 | スティルインラブ[3] ゼンノロブロイ[3] アドマイヤグルーヴ[2] ネオユニヴァース[2] ピースオブワールド[1] | 5 | 11 | 133 | 13 |
| 2001 | スズカマンボ[1] ダイワエルシエーロ[1] ダイワメジャー[1] ダンスインザムード[1] | 4 | 4 | 163 | 14 |
| 2002 | ディープインパクト[3] エアメサイア[1] ショウナンパントル[1] | 3 | 5 | 168 | 9 |
| 【表2】 天皇賞秋 サンデーサイレンス産駒 年度別成績 | |
| 年度 | 天皇賞・秋 [着順] ( )内は生年 |
| 1995 | [2]ジェニュイン(92) |
| 1996 | [1]バブルガムフェロー(93) [4]マーベラスサンデー(92) [12]ダイタクサージャン(92) [14]ジェニュイン(92) |
| 1997 | [2]バブルガムフェロー(93) [3]ジェニュイン(92) [4]ロイヤルタッチ(93) [6]サイレンススズカ(94) [11]ローゼンカバリー(93) [15]キングオブダイヤ(92) |
| 1998 | [2]ステイゴールド(94) [4]サイレントハンター(93) [10]ローゼンカバリー(93) 止サイレンススズカ(94) |
| 1999 | [1]スペシャルウィーク(95) [2]ステイゴールド(94) [4]スティンガー(96) [10]サイレントハンター(93) [14]メイショウオウドウ(95) |
| 2000 | [7]ステイゴールド(94) [8]ロサード(96) [10]メイショウオウドウ(95) |
| 2001 | [6]メイショウオウドウ(95) [7]ステイゴールド(94) [9]ロサード(96) [12]サイレントセイバー(95) [13]サイレントハンター(93) |
| 2002 | [3]サンライズペガサス(98) [4]エアシャカール(97) [10]アグネススペシャル(97) [12]ロサード(96) [15]アグネスフライト(97) [16]トラストファイヤー(98) |
| 2003 | [6]サンライズペガサス(98) [8]ロサード(96) [16]モノポライザー(99) |
| 2004 | [1]ゼンノロブロイ(00) [2]ダンスインザムード(01) [3]アドマイヤグルーヴ(00) [7]ヴィータローザ(00) [12]リンカーン(00) [14]サクラプレジデント(00) [17]ダイワメジャー(01) |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2005.10.30
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