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イギリスのニューベリで5月15日に行われたロッキンジSと、5月31日、アメリカのハリウッドパークにおけるシューメーカーBCマイルが今年の古馬芝マイルの、それぞれ初めてのG1だった。安田記念はいつの間にか、欧米で今からその路線がスタートするという時期に当たってしまっている。そして、ブリーダーズCマイルでクライマックスを迎えた直後にマイルチャンピオンシップがある。以前の古馬マイルG1戦線は、欧州なら7月のサセックスSを皮切りに秋まで英仏米と戦い抜くというのが普通だったが、95年に5月のロッキンジS、2001年には6月のクイーンアンSがG1に格上げされたことで、欧州からサイエダティとかスキーパラダイスといった名前を聞くだけでわくわくするような一線級が来日することは期待できなくなった。今年もラシアンリズムなんて来てくれるなら東京まで見に行きたいくらいに思ったが、ラシアンリズムはロッキンジSに勝ってヨーロッパの主役を務めることが確定した。アメリカは芝長距離の凋落による地滑りのような形でシューメーカーBCマイルが2000年からG1に格上げされて、まだ明確な芝マイル路線があるわけでもなく、この先できるとも思えないが、日本に向かう理由は減る。それなら香港でクイーンエリザベス2世Cが行われる4月最終週に移すのはどうか。ドバイで戦ったヨーロッパの国外放浪組やゴドルフィンの一流馬が、2000mなら香港へ、1600mなら日本へと振り分けられて結構なメンバーが揃う可能性もある。香港にはその1週後にマイルの国内G1があるが、賞金額が倍近くも違えば、おのずから棲み分けはできてくるだろう。 ま、それはさておき、そういう状況にもかかわらす、アメリカからも香港からもいい馬がきてくれたものだ。アイランドファッションは昨年G1を2勝しながら米最優秀3歳牝馬の“候補”にさえならなかったので、エクリプス賞発表の前日にその憤懣をぶつけて古馬相手のG1サンタモニカHに勝ち、続くG1サンタアニタHでは、強豪サザンイミッジから1 1/4馬身差の2着に入った。シービスケットが7歳時に勝ったことでもお馴染みのサンタアニタHは、昔から西海岸の春の大一番で、牝馬の2着は1969年ゲイムリー以来の快挙。しかも斤量差は3ポンドしかなかったのだから、若い牝馬にむしろハンデは厳しかった。配合はシーキングザゴールド系×ダンチヒ系でレイズアネイティヴも3本入るので、日本の芝ならそれなりに11秒台の決め手勝負でも対応できると思う。ただ、レースぶりを見る限り、外からまくり気味に上がっていく脚質で、しかも外から被せられるとひと息という面もあるようで、少なくとも今週のAコースの競馬に向いているとはいい難い。一方のセルフフリットは渡航費補助の対象にならない国際レーティング「111」が示すように、地元でも国際G1では掲示板確保がやっと。ただし、ラチ沿いに先行して、余力があれば最後に一瞬切れる脚を使えるので、流れ次第では大物食いもあり得る。古いオセアニア血統の母に、父はアラン師が馬主として走らせていた準重賞勝ち馬。古風なテューダーメロディ4×5を持ち、多芸なリファール系アルザオの血を引いているので順応性は高そうだが、力勝負では見劣りする。これが最後のアラン・マジック(これまでオリエンタルエクスプレス、インディジェナス、フェアリーキングプローンらで波乱を演出)でどこまで食い込めるかといったところ。 さて、では日本馬はどうかというと、力だけの比較はともかく、“狭い”Aコースでの競馬となるとどれにも信頼が置けないという面もある。それならメジロマイヤーにチャンスはないだろうか。未勝利勝ちの4馬身差を含めても5勝の平均着差が0秒22という数字は、シンザンやテイエムオペラオーなら勝負強いと誉められるところでも、この馬の場合は非力さを示しているようでもあって、この相手だとよほど発奮しないと苦しいが、血統的にはまだ秘められた部分がある。父はスプリンターズS連覇の名スプリンターで、安田記念は4着でマイルチャンピオンシップが2着。ともに勝ち馬は名牝ノースフライト。安田記念は先行馬壊滅の展開を頑張って1番人気のスキーパラダイスに先着しているのだから、マイルに延びることでそう能力が落ちたわけでもない。母の父はマイルチャンピオンシップを史上最も鮮やかな勝ち方で制した名馬。母の父としての実績はこの馬のほかにはツルマルきょうだい以外にないが、サクラバクシンオーとの配合ではノーザンテースト3×4のインブリードが生じる点にパワー強化を期待することができる。ノーザンテーストは直仔ギャロップダイナが86年に勝って以降、直系、母系の子孫からダイナアクトレス、カミノクレッセ、イクノディクタス、サクラチトセオー、トロットサンダー(父の母の父)、エアジハード、アドマイヤコジーン、アドマイヤマックスと、目立たないが実に大きな影響力を保っている。サクラユタカオーも秋の天皇賞をレコードで勝ち、直仔のエアジハードは安田記念とマイルチャンピオンシップ両方に勝ったマイルの名馬。これだけ徹底的に内国産血脈でまとめていると、完成される時期が遅くなることはよくある。NHKマイルC以来2年ぶりのG1の舞台で大駆けがないだろうか。◎。 同じサッカーボーイが母の父の○ツルマルボーイは、春はヒシミラクルのクビ差、秋はシンボリクリスエスの1 1/2馬身差まで迫った。力と決め手でいえばNo.1で、東京のマイルならステイヤーに近い中距離馬でも、直線だけで大勢逆転がかなう舞台。ではあるが、移動柵跡を通れそうにない脚質なのは明らか。ただ、内を回って抜け出せるウインラディウスを仮想敵とすると、現段階でのレーティングの差は合同フリーハンデもJPNクラシフィケーションもツルマルボーイが7ポイント高い。ということは、ダービーでハーツクライが通ったくらいの大外へ持ち出すロスが3馬身程度で収まれば何とかなる計算(なんだが……)。 ▲ローエングリンがG1に勝てないのはツルマルボーイと並ぶ不思議。欧州型のステイヤー×ステイヤーという配合が、日本では最後の詰めの段階での10m単位、数m単位での瞬発力不足となって現れているとしかいえないが、ムーラン賞もロンシャンでなければ後半の下りで突っ走ってしまうこともなかったかもしれないし、香港マイルでも他馬に大外に振られなければ勝つまであったかもしれない。G1までもうあと一歩のところまで来ているのは確か。 △テレグノシスはエアグルーヴ、サクラチトセオーと同じトニービン×ノーザンテーストの東京血統。牝系はエルコンドルパサーやヌレイエフ、サドラーズウェルズと同じラフショッド系だから、もうひとつG1に勝って父の後継の座を確かなものにしておきたいところ。 ミデオンビットは昨年のこのレースが0秒5差で、その前年のマイルチャンピオンシップが0秒4差。着順ほど大きく負けているわけではない。血統表の3代目あたりに並ぶ名前を見ればアメリカのG1馬にいてもおかしくない配合だし、ダンチヒ×アリダーの組み合わせでは、BCマイル連覇のルアーがいる。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2004.6.6
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