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無傷の5連勝イソノルーブル、牡馬相手に3連勝のノーザンドライバー、重賞2勝スカーレットブーケ、無敗の3連勝シスタートウショウ、牡馬混合重賞2勝ミルフォードスルーと底の割れていない素質馬がズラリと人気の上位を占めた91年の桜花賞が、今回の状況に最も似ている。そのときの勝ち馬が鶴留厩舎のシスタートウショウだったので、それをそのままスライドさせて◎にはスイープトウショウ。いやまあ、名前だけのことではなくて、スイープトウショウの祖母サマンサトウショウ(エプソムC)はトウショウボーイ×ダンディルートのシスタートウショウと同じパターン。さらに遡ってハイペリオンやサンインロー、ダイオライトの入り方も同じなので、牝系と毛色、重賞に勝ったのが早かったか遅かったかの違い以外は、実によく似ている。また、祖母は桜花賞3着であり、トウショウボーイはシスタートウショウ以外にもアラホウトクが桜花賞に勝っていて、母の父としてもワンダーパヒュームを送り、SS初年度産駒の桜花賞制覇を封じた。母の父ダンシングブレーヴもキョウエイマーチ、テイエムオーシャンという2頭の桜花賞馬の父。これだけの桜花賞のエッセンスがつまった母タバサトウショウは1勝に終わったが、500Kを超える巨体で、ダンシングブレーヴの大型馬に共通する仕上げに手間取る面があり、1勝とはいえ6戦して1番人気3回、2番人気3回という事実が示す通り潜在能力は高く評価されていた。 父のエンドスウィープは競走馬として以上に種牡馬として成功する例の多いフォーティナイナー直仔らしく、カナダのローカルG1勝ちに終わった自身を超える産駒をすでに送り出した。残念ながら一昨年に世を去ったが、日本に輸入されてからの産駒には、それまでのダート・短距離というイメージを払拭するものも出ている。さすがに長距離のトップレベルとなると限界があるだろうが、桜花賞は狙っていけるタイトルだ。4月5日発売の「競馬四季報・春号」の特集〜クラシック・チャレンジャー〜でも書いたが、エンドスウィープは父系をスキップして、曾祖父のレイズアネイティヴに戻ったような印象もある。レイズアネイティヴは品種としての区分はサラブレッドなのだが、実質で区分するとクオーターホース的な資質の方が強いともいえ、実際、去年のクオーターホースのチャンピオン、オークツリースペシャルの父系を辿ると4代目にレイズアネイティヴが現れる。そう考えるとスイープトウショウが繰り出す最後の2Fの爆発的な加速能力というのは、実は疑似クオーターホースのものと捉えるべきなのかもしれない。もちろんサラブレッドなんですけどね。内の良いAコースだとか出遅れ癖とか、不利とされる材料も、サンデーサイレンス・ガールズがお互いの戦いで消耗したところを大外から2Fで交わし去るぶんには問題にならないだろう。 91年の2着には13番人気のヤマノカサブランカが飛び込んで大波乱となった。前評判でレベルが高いといわれるレースでは往々にしてそういうことがある。13番人気が何になるか現時点では不明だが、○には大穴でホシノピアスを抜擢してみる。これもスイープトウショウと同じミスタープロスペクター系×ノーザンダンサー系の配合。父はダート血統のイメージが強いが、牝馬には芝でスピードを生かすタイプがむしろ多く、その代表のヤマカツスズランあたりは無事なら桜花賞に勝っていた可能性も高い。母の父はノーザンダンサー系でもスピード志向の強いダンチヒで、これはロンドンブリッジの母の父として桜花賞実績もある。祖母はハリウッドスターレットSなど米重賞4勝の名牝で、スターダスト4×4のオセアニア血統が特徴的な配合。これが欧米血脈の活性化に役立ったのだろう、その孫にジャングルポケットが出た。父はその祖母スペシャルからフォルリの血を受けているので、ミスタープロスペクター系×ノーザンダンサー系のオーソドックスなマイラー配合に南半球系ハイペリオンの血が有効なスパイスとなるのではないか。 ▲ヤマニンシュクルは90年のキーンランド11月セールで230万ドルで購買され、日本に渡った名牝ティファニーラスの孫。そのときお腹に入っていたニジンスキーの子がこの母。ティファニーラスはケンタッキーオークスやファンタジーSに勝った86年の米3歳牝馬チャンピオンで、それくらい高額になって当然の名牝だが、直仔は素質があるのは確かなのに今イチ体質が弱いというタイプが多く、ひと世代おいた孫によって答を出した。こういうことも結構よくあるのである。トウカイテイオーの成功例としてはオーソドックスなノーザンダンサーの近交でまとめられた配合で、トウカイテイオーは不思議とこういった横文字で固められた牝馬との配合で大物を出すケースが多い。奇しくも父系祖父、母系祖父ともに“三冠馬”であり、曾祖母の父グロースタークからリボー血脈が入っているので、クラシック本番に強い底力を備えている。ティファニーラスの購買には同時期に輸入されたサンデーサイレンスとの配合が念頭にあったというが、今回こうして最大勢力サンデーサイレンスによる包囲網を突破する立場になったのは不思議な因縁といえよう。 △フィーユドゥレーヴは祖母が91年組の一角を占めたミルフォードスルー。祖母孫制覇(?)となる函館3歳S、シンザン記念に勝ったほか、牡馬相手の阪神3歳Sでもイブキマイカグラの3着に食い込んだ名牝で母のランフォザドリームもマーメイドS、朝日CCに勝ち、エリザベス女王杯で2着している。クラシックに縁のない弱みは否定できないが、同じ牝系のロジータは南関東の偉大なクラシック馬であり、チップトップ系には代を経てジワジワと大きなタイトルに近づいていく渋太い面がある。母の父がロベルト直仔でヘイルトゥリーズンの3×4という近交が生じるあたりは、昨年の三冠牝馬スティルインラブのサンデーサイレンス×ロベルトという配合に似る。 ヤマニンアルシオンは母が2歳牝馬チャンピオン・ヤマニンパラダイスで、祖母アルセアは米2歳チャンピオン。阪神ジュベナイルフィリーズのクビ差で惜しくも母系3代2歳チャンピオンの偉業は達成されずに終わったが、チャンピオン級の素質がちゃんと伝わっていることは証明する内容だった。サンデーサイレンス×ダンチヒの配合だけに、クラシックを狙えるとしたらマイルのこのレースが最大のチャンスだし、大敗の後で皐月賞を制した同じファミリーのノーリーズンの再現が可能な底力も秘めていそうだ。 アズマサンダースは母が中山牝馬S2着、サクラバクシンオーの勝った93年のスプリンターズSでも4着に追い込んだ活躍馬オースミシャイン。マイルや短距離での爆発力を武器とするタイプではあったが、それも多分にシンボリルドルフからくる気性の影響が大きく、コランディアに遡る牝系や、ネヴァービート、チャイナロックといった配合されてきた種牡馬からすると、本質はステイヤーと見ることもできる。ここでも勝ち負けになるだろうが、それ以上にオークスで期待できる血統で、馬券は押さえるとして、内容をより重視しておきたい。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2004.4.11
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