2003オークス


新しい波はくるのだろうか

 合同フリーハンデのホームページを作った。きっかけはハンディキャッパーのひとり黒田伊助さんが「全日本サラブレッド平地重賞便覧」という労作をインターネット上で公開したことで、しかも、そのアドレスがややこしくてとても覚えられないため、何とか多くのひとに利用してもらいたいということで(本人は自分が使えりゃいいんですとかいっているが)、じゃ、「合同フリーハンデ」で作っちゃいましょうということになった。かくして、クラシックの勝ち馬から地方の廃止された重賞の3着馬まで調べられる「平地重賞便覧」をフィーチャーする形で、どうにか体裁を整えてきたのが現在の状況。正式オープンは7月以降だし、メインコンテンツがよそにあるウェブサイトというのも何ですけどね、この欄の限られた読者のみなさまにちょっと先行御紹介しておきます。http://www11.plala.or.jp/godofh/からどうぞ。

 「平地重賞便覧」には海外主要レースもあって、イギリスの1000ギニーとオークス、牝馬2冠達成は最近ないなと思っていたので調べてみると、去年カッツィアが達成していた(もう忘れてる)。しかし、その前は90年のサルサビルまでブランクがあった。で、ずーっと遡ってみたのが下の表で、黒田さんもそこまで暇はないらしく途中で切れたため、その先は自力で完成した。19世紀まで戻っても意味はないと思うが、せっかくだし、予想も当たらんのでせめて表だけ切り取って資料として残しておけるように最後までたどったのである。これを見ると1930年代後半から60年代初頭までは途切れることなく1000ギニー〜オークス・ダブルが達成されていたのに、80年代を過ぎるともうまばら。戦争による資源不足が主な原因だった時期もあるだろうが、競走馬の専門化が進んだ競馬体系の変化の方が理由としては大きそうだ。日本でも牝馬三冠のメジロラモーヌ(86年)以降、春の牝馬2冠は87年マックスビューティ、93年ベガを最後に途絶えている。10年ぶりにそろそろという見方も出来るが、やはり桜花賞とオークスのギャップは広がらないまでも深くなっているとは考えられる。

 歴代 英国2冠牝馬
年度 勝ち馬 その父 年度 勝ち馬 その父
2002 Kazzia(GER) Zinaad 1902 Sceptre Persimmon
1990 Salsabil(IRE) Sadler's Wells(USA) 1894 Amiable St. Simon
1986 Midway Lady(USA) Alleged(USA) 1892 La Fleche St. Simon
1985 Oh So Sharp Kris 1891 Mimi Barcaldine
1973 Mysterious Crepello 1887 Reve d'Or Hampton
1971 Altesse Royale セントクレスピン(GB) 1886 Miss Jummy Petrarch
1961 Sweet Solera(IRE) ソロナウェー(IRE) 1884 Busybody Petrarch
1960 Never Too Late(USA) Never Say Die(USA) 1881 Thebais Hermit
1959 Petite Etoile Petition 1879 Wheel of Fortune Adventurer
1958 Bella Paola(FR) Ticino(GER) 1876 Camelia (FR) ※Oaks DH Macaroni
1955 Meld Alycidon 1875 Spinaway Macaroni
1949 Musidora(IRE) Nasrullah 1874 Apology Adventurer
1947 Imprudence(FR) Canot(FR) 1872 Reine(FR) Monarque(FR)
1945 Sun Stream Hyperion 1871 Hannah King Tom
1942 Sun Chariot Hyperion 1868 Formosa Buccaneer
1940 Godiva Hyperion 1858 Governess Chatham
1939 Galatea Dark Legend 1846 Mendicant Touchstone
1938 Rockfel Felstead 1840 Crucifix Priam
1937 Exhibitionist Solario 1832 Galata Sultan
1925 Saucy Sue Swynford 1824 Cobweb Phantom
1914 Princess Dorrie Your Majesty 1823 Zing Woful
1913 Jest Sundridge 1818 Corinne Waxy
1905 Cherry Lass Isinglass 1817 Neva Cervantes
1904 Pretty Polly Gallinule 1000ギニーは1814年、オークスは1779年より

 ここまで例年以上のハイペースで勝ち鞍を量産し、JRAG1も出走機会完全制覇を続けているサンデーサイレンスにあえて逆らうこともないかもしれないが、桜花賞→オークスの溝の深さに足を取られるケースは大いにありということで、ここはSSキラーとして最大の実績を誇るブライアンズタイムに登場してもらおう。サンデーサイレンスが世を去って、今年もサイアーランキングで2位につけるブライアンズタイムの時代がやがて来るかというと、年齢がSSよりひとつ上だし、キャラクター的にもアンチSSという役回りなので、正直どうかと思う。人気のサンデーサイレンス産駒に対してブライアンズタイムで逆転を狙うという馬券の手法が成り立つのも、淋しいことだが、あと数年のことかもしれない。今年はここまで重賞だとそこそこ勝つのにG1では存在感が薄いだけに、2頭出しの今回はそろそろ長打がないだろうか。マイネヌーヴェルは母がニュージーランド産の輸入競走馬。母の父ザビールはデインヒルをはじめとするシャトルスタリオン攻勢に抵抗したオーストラリアの至宝で、ラストタイクーンからデインヒルに移ったリーディングサイアーの座を2度にわたって奪回した。ところでザビールは1986年生まれ。この年、北半球ではサンデーサイレンス、イージーゴーア、ナシュワン、そしてデインヒルが生まれており、全世界的に大当たりの年だったわけだ。その86年に生まれた祖母ジラダーの産駒にはオーストラリアで2歳G2勝ちのスターオブヌーヴェル、南アフリカでG2に勝ったダブルリーフが出ていて、これまでの北半球→南半球の一方通行だった血統の流れが、南半球発の流れも出来てくるのかなという新しい時代を感じさせるようでもある。

 タイムウィルテルは母がサドラーズウェルズ×クリスの完全な欧州血統。本命馬がナスルーラの5×5を持っているのに比べると、ちょっと重厚過ぎる嫌いはある。案外オークスは、パーソロンやアローエクスプレスの時代もそうだが、近年でもサクラユタカオー産駒とか、トライバルチーフの入ったファイトガリバーとか、母が完全なスプリンター血統だったチャペルコンサートとか、何で?と思わせるくらいスピード指向の強い血が活躍する。でも時には、逆に長距離向きならコレというようなタイプが血統通りに走って、無理にひねらなければ良かったと後悔することもある。これはその「長距離要員」の一頭。

 怪しいのがオースミハルカで、祖母の父プロントはともかく(ノアノハコブネの母の父)、母の父リンドシェーバーで2400mがどうかなと思えるのだが、父はメンバー中唯一のこのコースでのダービー馬。NHKマイルCも安田記念勝ち馬の産駒が勝った。それに続くかも。

 ヤマカツリリーは2400mは全然ダメかもしれない。ただ、日本では領域拡大の遅れているミスタープロスペクター系も、エルコンドルパサーがジャパンCに勝っているし、父の産駒ではアドマイヤドンが昨年のダートチャンピオンとなっている。オークスに相性の良いナスルーラ×ハイペリオン+トムフールの配合だけに、大駆けもあると思う。

 メモリーキアヌの母は早熟な快足馬で、イルドブルボン産駒の姉メモリージャスパーは、粘ったと見るべきか、止まったと見るべきか、94年に微妙な4着。ただ、東京のトニービンなら細かいことは抜きに狙う手もある。実際に角田騎手はトニービン産駒で東京のG1に2勝。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2003.5.23
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