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ドバイでのスラマニ(シーマクラシック)、ムーンバラッド(ワールドC)というゴドルフィンの2頭による強烈なパフォーマンスで幕を開けた今年の世界競馬。3月末時点では何が出てきてもこれらを負かすのは容易ではないと思われたものだが、実際には案外簡単に負け続け、ムーンバラッドは日本で種牡馬入り、スラマニはその後G1・2勝を上積みしたとはいえ、相手に恵まれた印象が拭えない。代わって主役を務めたのがジャパンC卒業生で今年からイギリスに籍を移したファルブラヴで、1回おきに取りこぼしながらも、春〜夏〜秋と出突っ張りで幅広い活躍を示した。ブリーダーズCターフこそ展開の綾と左回りでの詰めの甘さ(?)で3着に敗れたが、芝戦線全体がファルブラヴの傘の下で展開されたといえるだろう。一方アメリカのダート戦線は既成勢力が伸び悩み、新鋭も現れては消えていく低調な混戦が続き、最終的にBCクラシックはG1未勝利のプレザントリーパーフェクトが勝った。逆にいえばG2レベルの中にも、一気にG1の主役級に飛躍するものが隠れている可能性もあるということ。 昨年はJBCクラシックをアドマイヤドンが制して、JCダートも3歳優勢のムードの中で行われたが、今年は大将格のユートピアがJBCクラシックであっさり負けてしまった。しかし、クロフネ以降、3歳秋を迎えれば一線級の古馬と対等に戦えるまでに“3歳ダート戦線”のトップグループがレベルアップしているのははっきりしており、ユートピアの惨敗は大井の砂の脚触り(?)に嫌気をさしていたところに大粒のキックバックを浴びて完全に戦意喪失した突発的大敗と考えられ、ミツアキタービンを物差しにすれば、ユートピアとアドマイヤドンの差は0秒3と見ることも出来、逆転不可能なほどの大きな隔たりがあるわけでもない。かくして古馬と3歳の差が埋まった(?)ので、サイレントディールに◎。クロフネ類似路線から現れたダート仕様サンデーサイレンスの新星だ。全姉トゥザヴィクトリーは今も世界唯一の存在であるドバイワールドC連対牝馬。サンデーサイレンス×ヌレイエフの配合はゴールドアリュールとも共通する。サンデーサイレンスの一流馬をダートに向かわせることを“発明”した池江厩舎でもあって、一貫したブランドイメージが形成されており、ここでどうかはともかく、G1制覇まで上り詰めることは既定路線とさえいえるだろう。前走からは格段に相手が強くなるが、そういった逆風が強いほど優れたパフォーマンスを見せるのもサンデーサイレンスの強み。 ○ユートピアは北米リーディングサイアー・フォーティナイナーと11年連続ブルードメアサイアーのノーザンテースト(まだこの分野での天下は当分続くだろう)の組み合わせ。日本ならではの名血配合で、しかもこの父の成功パターンである徹底した米国血脈による構成。ノーザンテースト牝馬の子は先週のデュランダルに見るように、トップレベルにいくほど短い距離での活躍が目立つだけに、2100mはあと100が微妙な線だが、大井であれだけ辛抱して盛岡であれだけ派手な勝ち方が出来たのだから、乗り切れる範囲と考えられる。4代母の父がスワップス、母の父がノーザンテースト、父も4代母の父がハイペリオンと、米国血脈にしてはハイペリオンの血が豊富なのが心強い材料。 ▲ビッグウルフの父アフリートの産駒では、プリエミネンスがこのレースの創設以来(4)(5)(4)と健闘している。祖母の父マルゼンスキーからこの父に相性の良いニジンスキー血脈が入り、母の父としても確かな末脚を伝えるトニービンの血は府中で持ち味が生きる。牡馬ならもうひと押しが利いてプリエミネンス以上が期待できるとするなら、3着以内には来てくれるのではないか。 △スターキングマンは半兄ルイシフルが米G1、サイコバブルが仏G2勝ち。キングマンボ×ブラッシンググルームなら世界のどこでG1勝ちしていても驚けない。プレザントリーパーフェクト的一発ならこれ。 今年の芝中距離戦線の最強馬がファルブラヴであり、日本の最強馬がシンボリクリスエスであるとすると、これは去年の枠組みから一歩も抜け出していないということになる。それを突き破って一気に大勢逆転できるパワーが可能性としてあるのは、成長途上にあって実際にBCターフでファルブラヴを負かしたジョハーか、日本ならシンボリクリスエスと未対戦の3歳馬、あるいは全く別路線のアンジュガブリエルかフィールズオブオマーということになる。この秋の◎ネオユニヴァースはジャングルポケットがジャパンCを制したときの状況に似ている。クリスはともかく、遡ればシャンタンやワードンといった名前が出てくる欧州タイプの血が集積された母系は、サンデーサイレンスの強い影響力がなければ、重苦しくて日本の競馬ではどうにもならなかっただろうと思えるもので、そういう血だけにこの秋3戦目となる今回あたりがベストのタイミングなのではないかと思える。時計の遅い速いに関わらず、過去のこのレースの勝ち馬は、少し流行から外れてスピード不足を懸念されるくらいの重厚なタイプが多いだけに、「典型的ジャパンC勝ち馬像」にはぴったりと収まるタイプだろう。 ○ザッツザプレンティは多彩な良血を受けていて、見る角度によって違う見え方がするのでよく分からんなといっているうちに菊花賞に勝った。見た目はニジンスキー。そしてニジンスキー系らしいレースぶり。現時点ではそういう捉え方でいいのかもしれないが、血統表を眺めると、まだまだ隠された才能が噴出する時を待っているだけかもしれないとさえ思う。菊花賞は全てが最もうまく運んだと見られていて、まだ3歳のリーダーと認められたわけでもなさそうだが、実はもう実力No.1の位置にいるのかもしれない。 未開発な部分が多いという点ではサクラプレジデントにも期待をかけられないではない。スペシャルウィークと同じサンデーサイレンス×マルゼンスキーで、牝系は名門スワンズウッドグローヴ。この系統の最近の大物レジェンドハンターは週はじめの全日本サラブレッドCで大復活を遂げたばかりだ。▲。 ジョハーはシンボリルドルフも挑んだサンルイスレイSが最後にG1として行われた96年の勝ち馬ウィンドシャープの産駒。米国の芝路線の衰退が顕著になった時期に活躍した牝馬の息子がBCターフの大一番で米国芝馬の復活を宣言したわけだ。ゴーンウェストはザフォニックとかダホスとか、時として常識を超えた怪物を出す。本当に怪物なら初めての遠征もへっちゃらだろうが、カリフォルニアの3大競馬場から一歩も出たことがないのはやはり不安。 その点△アンジュガブリエルは遠征に強く、今年は比較的楽な競馬を続けているので余力は十分(香港まで計算してるから)。凱旋門賞はぐちゃぐちゃの不良馬場の後方で全く自分の競馬をさせてもらっていないので大敗も度外視出来る。由緒正しい芦毛のグレイソヴリン系が勝てばゴールデンフェザント以来。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2003.11.29
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