2002皐月賞


“ノーザンサンデー”のあけぼの

 桜花賞でシャイニンルビーが1番人気を裏切って、サンデーサイレンス×ノーザンテースト不仲説はいよいよ信憑性を帯びてきた。ノーザンテースト牝馬にサンデーサイレンスの配合で重賞勝ち馬はよく出ている気がするが、G1勝ち馬はいまだゼロ。実際にはどんなもんだろうということで統計を取ってみたのが下の表。データはケイバブックのコンピュータに馬名があるものだけを対象にしている(4月7日現在)ので完璧とはいえないが、大体の傾向とか割合に変わりはないだろう。比較材料として、分母の数が同じくらいのトニービンにも登場してもらっている(JBISによるとサンデーサイレンスの産駒血統登録数=99年生まで=は1036で勝ち馬数544、トニービンは産駒数924の勝ち馬407)。

  サンデーサイレンス トニービン
産駒数=一般=   855   820  
産駒数=NT牝馬=   152   170  
勝ち馬数=一般= (率) 488 (57%) 343 (42%)
勝ち馬数=NT牝馬= (率) 97 (64%) 86 (51%)
重賞勝ち馬=一般= (率) 72 (8%) 22 (3%)
重賞勝ち馬=NT牝馬= (率) 12 (8%) 3 (2%)
GT勝ち馬=一般= (率) 20 (2%) 8 (1%)
GT勝ち馬=NT牝馬= (率) 0 (0%) 2 (0%)
★NT牝馬はノーザンテースト牝馬、一般は全ての牝馬

 サンデーサイレンス×ノーザンテースト牝馬の配合は勝ち上がり率でサンデーサイレンス×一般牝馬を上回り、重賞勝ち馬輩出率で並ばれ、G1馬輩出は0となってしまう。これだけ見ると上にいくほど先細りといえなくもないのだが、トニービン×ノーザンテーストと重賞勝ち馬輩出率を比べると、これには4倍もの差をつけており、少なくとも重賞レベルではサンデーサイレンス×ノーザンテーストは高いニックスを示しているとはいえる。壁があるとすれば重賞とG1との間。重賞では問題にならないがG1レベルで必要とされる何かを、ノーザンテーストの血がスポイルしている可能性は否定できない。ひとつ考えられるのは、基本的にノーザンテーストの走り方は短距離向きであるということ。これはもちろん例外もあるけれども、首力が強くてグイグイ行くのが典型的ノーザンテーストで、サンデーサイレンス産駒にもそういうタイプは少なくないがG1レベルに行く馬はどれも勝負にかかるまでのクルージング(?)中はパラパラ走って——グイグイとかパラパラとか、専門家ならもう少しうまく説明できるのだろうが——ここからというときにフォームが実に大きく前に伸びる。このあたりはSS特有の飛節の具合とかいろいろあるのだろうが、G1レベルで力を抜いたクルージングが出来て、しかもラストのひと伸びがきくかどうかがこれまでのサンデーサイレンス×ノーザンテーストの問題点であったと考えられる。しかし、逆にいうと、それさえクリアできればG1に勝っても不思議ないわけだ。モノポライザーは走りっぷりを見る限り、その辺りのノーザンテースト的問題をクリアして、というかこれはもう誰が見てもサンデーサイレンスのG1級のスタイルが備わっている。それなら心配することはないんとちゃうかというのが結論だ。母のダイナカールはオークス馬だが、むしろエアグルーヴの母としての功績の方が現役時代のタイトルを凌いでいて、産駒もG1級かダートの条件級かにはっきりと分かれる。はっきり分かれる以上、これはG1級だろう。ダイナカールの最後の産駒がサンデーサイレンスとの配合で生まれた最初の牡馬といったあたりも、後々運命的なこととして語られるようになるのではないか。強力メンバーとの対戦は初めてとなるが、序列を飛び越していきなりチャンピオン戦を戦えるのはサンデーサイレンス、ブライアンズタイムなどヘイルトゥリーズン系の特長のひとつ。

 タニノギムレットはサンデーサイレンスの唯一の対抗勢力であるブライアンズタイム産駒。昨年はG1未勝利で終わるかと思えた最後の最後にトーホウエンペラーが東京大賞典に勝って面目を保っており、このレースでも数の上では劣勢ながら、存在感では互角以上ともいえる。母は、1400mのアネモネSで鮮やかな追い込みを決めたが、レディジョセフィンの直系にクリスタルパレス×シーバードの血統はフランスでダービーに勝っても驚けないようなクラシックタイプ。そこにブライアンズタイムの配合だから、ここもダービーも突き抜けて不思議ない底力を感じさせる。ただ、シカンブル3×4という恐ろしげなインブリードを持つ母に、ブライアンズタイムの配合でさらにリボー系グロースタークの3×4が生じ、おまけにグレイソヴリンも入っているよ……、と、こういう血統には本来、穴馬としてここに臨んでほしかったという気はする。こういう一発大駆けタイプの血が主役として舞台に上がると、意外なところでスベらないかという危惧がなきにしもあらず。

 チアズシュタルクは桜花賞馬チアズグレイスの全弟で、牝系も仏1000ギニー勝ちの曾祖母、近親に英2000ギニーのドヨーンがいて、アガ・カーン殿下のマイル担当ファミリー。とはいっても、探せば長距離で活躍するものが出ているし、母がノーザンダンサー3×3、父がサンデーサイレンスとなれば、マイラーの領域に止まっている器でもなさそうだ。東京がより向きそうには思えるが、このレースはサンデーサイレンス産駒が出走するようになった95年以来勝ち馬が4頭出て、フジキセキ産駒も入れるとワンツーは3回。例年より時計が速い馬場もサンデーサイレンスには有利で、厩舎の勢いを考えると逆転まであるかも。

 △メガスターダムのたんぱ杯勝ちは展開面で恵まれた部分があったのは確かだが、あれくらいのレベルになると実際に力がないと勝てないもので、しばらく不振でもどこかでその力の証明というのがある。年明けの2戦はそれぞれ情状酌量の余地があり、三冠レースで最もチャンスがあるのは距離的にもここ。ショウナンカンプの高松宮記念勝ちに象徴されるように、不景気なときには内国産血統が頑張るケースが多く、SS、BTを斥けてニホンピロウイナー産駒がクラシック勝ちというシーンも見てみたい。ニホンピロウイナー×マルゼンスキーという門別の両雄の配合はサンデーサイレンス×ノーザンテーストの例にも似て意外に大物が出なかったが、こちらもそろそろ和解の時を迎えていいころだ。

 バランスオブゲームはサンデーサイレンスもトニービンも入らないが、その血統はれっきとした社台ブランド。祖母はサッカーボーイの全妹で、ステイゴールドの母の全姉。3代目にニジンスキー、サドラーズウェルズ、トムロルフ、ディクタスと並ぶ配合は重厚なステイヤー血統で、本当に強くなるのはもっと先だろうと思えるが、有力馬は差し馬ばかり。未完成の現時点でも、前に行ける強みを生かせば好走可能。

 ヤマノブリザードは桜花賞馬と同じ5月9日に札幌競馬場でデビュー。以降、牡牝で対の相似形といえる戦績を残してきた点を見ると、アローキャリーが勝つのなら自動的にこちらも……という考え方も成り立つ。それにしても、プリンシパルリバー、ラヴァリーフリッグ、アローキャリー、そしてヤマノブリザードと、この世代のホッカイドウ競馬出身馬のレベルは大変なものだ。

 ローマンエンパイアは本格派の欧州型ステイヤー血統。慌ただしい皐月賞よりも、イメージ的にはダービーがしっくり来るタイプ。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2002.4.12
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