どうでしょうか? 統計というのは下手に使うとかえって焦点がぼやけてしまうので、今イチ凄さが伝わり切っていないとも思えるが、南北両半球で供用されているだけあって、サンデーサイレンス級の質をキープしつつ、量的には遙かにサンデーサイレンスを凌いでいるというのはこの表からも見て取れる。賞金だけは日本が桁違いの水準だけに仕方ない。仕方ないが、その賞金水準のお陰で、今年1年の収得賞金ではファインモーションがロックオブジブラルタルを抜いて、デインヒル産駒2002年の稼ぎ頭となった。今のところ為替レートによって入れ替わり得る僅差だが、ここを勝てば世界の大種牡馬の不動の代表産駒(2002年)ということになる。ロックオブジブラルタルが春から秋までずっと勝ち続けたのに象徴されるように、デインヒル産駒は正直に自分の力を出し続けるものが多く、大きく落ち込んだり、サボッたりということが少なく、大体、良くても悪くても安定した能力を維持するもので、このあたりはサンデーサイレンスやトニービンの産駒には望み難いところ。配合的には非主流のステイヤー血脈とのアウトブリード風配合か、逆にノーザンダンサー系を取り込んでデインヒル自身の持つナタルマ3×3のインブリードをさらに強調した技巧的配合かの極端な2つのパターンが成功しているケースが多いように思うが、ファインモーションは前者に近い。兄ピルサドスキーと同じペティション4×5の軽いインブリードがあるだけの欧州ステイヤー型配合で、ノーザンダンサーの近交でこてこてになったのよりも上品な印象があって、ステイヤーとして成長していく余地が大きいのもこちらのパターンだろうと思う。真の能力を計るには牡馬に挑ませるのがいいと思うが、ピルサドスキーのようにゆっくり強くなった方がより大きな実りを期待できる血統なのは確か。
○ジェミードレスはトニービン×ノーザンテースト。天皇賞sのサクラチトセオー、NHKマイルCのテレグノシスと成功例も多い配合だが、このパターンは何といってもエアグルーヴ。ジャパンCでエアグルーヴを破ったのはピルサドスキーであり、それをひっくり返すと、ファインモーションを負かすとすればエアグルーヴ血統ということになるのではないか(ならないか?)。確かに、母のブリリアントカットはダイナカールとは違う。エアグルーヴは天皇賞はトニービンの血でスパッと勝てたが、ジャパンCでピルサドスキーに食い下がった執拗さはダイナカールの血と見ることもできる。でも、ファインモーションに出し抜けを食わせるものがあるとすれば、それはトニービン〜グレイソヴリンの鋭さであって、同じ父のレディパステルとの比較では、エアグルーヴにより近い配合でG1実績も複数あるこちらを上位に取りたい。それにしてもサンデーサイレンス×ノーザンテーストがG1級に抜け出せないのに比べると、トニービン×ノーザンテーストは成功している。サクラユタカオー×ノーザンテーストも成功例が多いことを見ると、ハイペリオンのインブリードを生じてナスルーラも入る種牡馬との配合がノーザンテースト牝馬には合っているということなのかもしれない。そしてまた、負かすのは無理でも、ファインモーションが前を交わしてその後の混戦でピュッと差してくるのはグレイソヴリン系(プリティジュエル、サクラヴィクトリア、シアリアスバイオと実例多数)。ちなみにブリーダーズC芝牝馬は、デインヒル産駒の人気馬バンクスヒルを押さえ、カロ3×3でグレイソヴリンの塊ともいえるスタリーンが制した。
△ローズバドは昨年のこのレース以降、見どころのないレースが続く。牝馬だけに燃え尽きたと見ることもできる。それでも叔父でサンデーサイレンス産駒のロサードはこの秋13カ月ぶりに重賞勝ちを果たしているし、一般にサンデーサイレンスの一流馬は長い不振からでもところがどっこいと立ち直ってくる。母の父は当代屈指の底力を伝えるシャーリーハイツ。欧州の中長距離戦には欠かせない血だし、BCターフのハイシャパラル、菊花賞のヒシミラクルにもこの血は潜んでいる。
タムロチェリーは3歳になってから全て2桁着順。父は強力世代の英ダービー馬だが、産駒にはマイラーやスプリンター、それも水準の低いイタリアの重賞を主戦場とするものが多く、代表産駒で英2000ギニー勝ちのミスティコでも、そう強い馬ではなかった。そんなものかなと残念に思うが、父の死んだ年に生まれた娘が輸入後初の重賞勝ち馬でG1制覇という部分には名馬の最後の意地のようなものが感じられる。ファインモーションとは曾祖母が共通。
ビルアンドクーはアスワンの出る名門ナイルリリーの流れ。今年この牝系からはロックオブジブラルタルが出た。