|
アメリカの調教ずみ2歳馬セールでの日本人による購買額は、ピークの96年から比べると、昨年は3分の1にまで落ち込んだという。これは不況による購買力の低下のほか、イヤリング(1歳)セールや当歳での取り引き、あるいは自家生産など、マル外の出自が多様化して2歳馬セールに集中しなくなったこともあるだろうが、別の見方をすると、日本の初期調教の技術レベルが進歩したことを示すともとれる。国内のレベルが上がったことで、もともと調教ずみ2歳馬セールの大きな付加価値であったアメリカの“調教”の魅力が以前ほど大きくはなくなってきたということもあるのだろう。外国産馬=2歳セール出身というわけでもないが、出走頭数で見るとこのレースで外国産馬が占める割合は、2歳セール購買額に連動するかのように、第1回の14:4から漸減し、初めて逆転した昨年は4:14で普通の重賞なみになった。4:14になったところで、結果はクロフネ、グラスエイコウオーの米2歳セール出身馬の1、2着独占、内国産馬は3着の壁を超えられなかったが、もう何とかなりそうな気がする。去年は外国産<内国産といっても数の上だけでのことだったが、今年は質の面で内国産が外国産馬勢を上回っているからだ。 質の向上をもたらしたのは何といっても皐月賞から転戦したタニノギムレットの存在。第1関門の皐月賞でコケちゃったので皐月賞→NHKマイルC→日本ダービーという“新三冠馬”の野望は潰えたが、クロフネが出来なかったNHKマイルC→日本ダービーの連勝という記録は残っている。こういう独創性はいいですねえ。人と同じように一生懸命やったら失敗しても責められないが、人と違うことをして失敗すると倍叩かれるというこの国の雰囲気も、こういう試みが繰り返されるうちに風通しが良くなってくるかも。この斬新な挑戦が成功することを願う。とはいえ、この血統で2000mよりマイルがいいか、2400mならどうかということになると、単純に考えて2400mが一番良さそうだ。母はアネモネS(1400m)に勝ったが、いわゆるステイヤー血統の短差しというタイプで、晩年には2000mを超える長距離で活躍したり(しなかったり)という記憶がある。こういうタイプが快足系種牡馬との配合で強力なマイラーを出す場合は確かに多いが、ブライアンズタイムとの配合なら長距離向きのクラシック血統と考えるのが自然だ。カロやシカンブル、グロースタークとアクの強い血脈を多く持つ点がマイラー的な爆発力につながる可能性はあるし、力の違いでというケースもある。ただ、イギリスでも2000ギニーとダービーの連勝というのは89年のナシュワンを最後に途絶えていて、力だけで専門の壁を破るのは難しいのも事実。ここは○。 内国産狙いで行くなら、いっそのこと◎メジロマイヤーでどうだろう。サクラバクシンオー×サッカーボーイは最優秀短距離馬同士の配合。短距離馬といってもスプリンターのサクラバクシンオーと2000mでも日本レコードを出したサッカーボーイではまるで性格が違うが、ともに外国産馬ブームに洗われる以前の国産短中距離血統。正確にいうとサクラバクシンオーはこのレースの前身であるNZトロフィーでシンコウラブリイ、ヒシマサルといったマル外の先兵の後塵を拝しているが、自身本格化前であったし、古馬になると当時はマル外の勢いも弱まったので、国産短距離血統の最後の黄金期を謳歌することが出来た。その後のマイル以下のG1では、スプリント部門で細々と内国産馬の反攻があったものの全体としては外国産馬の勢力が圧倒的だったが、サクラバクシンオー産駒のショウナンカンプによる高松宮記念制覇は、再び内国産時代が訪れたことを予感させる。母は栗毛で軽いフットワークをするが非力というサッカーボーイ産駒のひとつの典型的な存在だったが、3歳春はオープンの少し下くらいのレベルでそれなりの素質は示していた。牝系は“メジロ”でも、浅見元調教師が仲立ちとなってメジロと“ケイ”の内田氏との間で繁殖牝馬が交換されてメジロ牧場に来たライン。別系統とはいえ天皇賞のメジロブライトもこの交換の成功例だ。サクラバクシンオーもサッカーボーイも3歳限定戦でのタイトルがないだけに、どうも全体的なイメージでは本当に力を付けてくるのは古馬になってからだろうと思えるが、皐月賞より状態は確実に良くなっている。それに、フロリースカップ系でも長く鳴りを潜めているガーネット(天皇賞、有馬記念)の分枝で、このあたりからそろそろ大物が出るのではないかと……(これは根拠なし、ただの勘)。 皐月賞のブライアンズタイムは買うべし。東京のトニービンは買うべし。これはもう問答無用のG1大穴5大セオリーのうちの2つだが、ついつい忘れてしまいがち。▲テレグノシスはノーザンテースト牝馬にトニービンの配合だから、サクラチトセオー、エアグルーヴという秋の天皇賞馬2頭と同じパターンになる。祖母の父がセクレタリアトだけに、それら2頭のようなネチッこさには欠けるかもしれないが、一撃のパンチ力に優れているので1600mはいいと思う。エルコンドルパサーやサドラーズウェルズでお馴染みのラフショッドの系統で奥は深い。 日本競走馬協会のセレクトセールができてから、最上級の高馬は海外でなく国内でという流れになっていて、1億円馬はごろごろいるが、100万ドルホースは珍しくなった。△スターエルドラードは今回唯一の100万ドルホースで、1歳時の米キーンランド7月セールで110万ドルで購買されたダンチヒ産駒。母は米重賞3勝で牝系も名門アロー系の正統派の良血だ。母の父ローソサイエティはマンハッタンカフェでも名ブルードメアサイアーぶりを示していて、大レースになると真の底力を発揮する。ただ、日本でのダンチヒ直仔はあと一歩でG1の壁を破れないので、馬連よりむしろワイドの穴かも。 クロフネを別にすると、このレースの勝ち馬の母の父は世界の超A級がズラリ(第1回からミスワキ、シアトルスルー、サドラーズウェルズ、ダンチヒ、ヌレイエフ、で、去年がクラシックゴーゴー)。となるとヌレイエフ牝馬の仔アグネスソニックも外せないところ。父はひょっとすると今年のケンタッキーダービー馬の父となるかもしれないアンブライドルズソング(前哨戦ウッドメモリアルSでサンデーブレークを破ったブッダを出す)で、ミスタープロスペクター系でも特に大レースに強い父系。祖母の父も大レースで底力を発揮するキートゥザミントなので、東京のG1でこれまでの詰めの甘さが嘘のような競馬をする可能性がないとはいえない。ミスワキの娘の仔はタイキリオン。第1回勝ち馬タイキフォーチュンの半弟だ。タイキフォーチュンがシアトルダンサー、半姉タイキダイヤがオジジアン産駒で、大雑把にいうとあまり父の個性に関係なく走る仔が出る母のよう。 カフェボストニアンは中山で走らせるのは何とも窮屈そうで、いかに名手ペリエでもあのあたりが精一杯だったか。父はカポーティ直仔の2歳完結型で、母の父もG33着のミスタープロスペクター直仔。それでも、ハイハットの出る牝系にネヴァーセイダイ、シルバーシャークと入る祖母の血は結構渋太いかも。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2002.5.2
© Keiba Book