2002ジャパンCJCダート


ニッポンのエースストライカー

 〈ジャパンC〉
 天皇賞のときに「このメンバーで中山でやるのはもったいない」と書いたが、それは大きな間違いだった。考えてみれば当然で、ブリーダーズCでも芝のレースは大抵日本より狭いコースで行われるが、強い馬に腕達者が乗って争えば見応えあるレースになるのである。中山だから欧州勢は不利と決めつけるのもこれまた危険だし、欧州勢以上に東京向きと思われるナリタトップロードやジャングルポケットでも、それなりに力は発揮してくると考えるのが良さそうだ。ナリタトップロードはヒシミラクル、ブルーイレヴンの登場でまたも注目されることになったサッカーボーイ直仔。妹のフローラルグリーンも先週久々の勝ち星を挙げたばかり。スケールとしてはごく内輪のこととはいえ、ファミリー全体にそれなりに活気が戻ってきたということはできる。不景気なときは父内国産馬が走るという傾向は以前からあるが、この秋のG1はマル外かサンデーかマル父かというパターンになっていて、先週の流れを受ければここはまたマル父の出番というケースもありだろう。この秋のレースぶりを見れば分かることだが、サッカーボーイ血脈は万年少年というべきか、加齢による衰えを心配しなくていいし、ここか香港かでハッピーエンドが待っているような気がする。

 ジャングルポケットは去年のジャパンC勝ち馬であって、88年5着の父トニービンの汚名を返上した。トニービン産駒は1度使って良くなる傾向があるだけに割り引く必要はあるが、休み明けといってもトウカイテイオーのように1年ぶりの実戦で有馬記念に勝ってしまう例もある。4歳秋といえば父が凱旋門賞に2着して世界の一流に仲間入りした時期。母系からノーザンダンサーの入るオーソドックスな配合で、5代アウトクロス。母はハイペリオン血脈を5本持っているので、父の産駒としても成長力に富み、まだまだ能力の上積みを見込んでおいていい。

 ストーミングホームはこの秋を迎えて変わってきた。もっとも、前走でG1勝ちといっても、実質G2レベル。欧州以外で競馬をしていないのもマイナスで、あくまでも穴の域は出ない。それでも、祖母が名牝(米G15勝のイッツインジエア)で、シャリーフダンサーが入って、仕上げがミスタープロスペクター直仔という配合はドバイミレニアムを思いださせるもの。Mr.プロスペクター2×3に加えてアルマームードやネイティヴダンサーが頻出する“濃い”配合はエルコンドルパサーに通じる面もある。ひょっとするとここをきっかけに強くなって、来年のドバイワールドCを勝っているかもしれないと思わせる部分があって、先物買いで一票。

 ブライアンズタイム産駒の一流馬には好調時と不振時の差が大きいものが多いが、普通は何カ月か良くて、あとの何カ月か悪くてというサイクル。ノーリーズンのように1走ごとに大波があるのも珍しい。ということは、最悪だった前走の後なら、生涯最良のパフォーマンスを見せる可能性もあるわけ。サンデーサイレンスやトニービンと逆に、中山に替わった恩恵があるのもブライアンズタイム産駒だろうと思う。

 ブライトスカイはオールアロングやオードと同じヴィルデンシュタイン家の生産所有馬。それら同様そんなに人気にならなくても2着に来るような……。フランスを出たことがないが、91年のマジックナイトもそんな成績で2着に食い込んでいる。母はアリシーバ×イルドブルボンの配合から想像されるとおりのパワーとスタミナで勝負するタイプでG2ポモーヌ賞連覇のステイヤーだったが、父がそう影響力のない方なので、小柄な体に似合わず力の競馬をする馬。中山の馬場がまだ傷んでいないだけに、スピードと器用さの勝負になると分が悪いかも。

 クリスエスの産駒は一撃で大物食いを果たす反面、長くチャンピオンの地位を保つものは少ない。シンボリクリスエスも母がG3勝ちという以外は地味な母系で、どこまで強くなるのか分からないというタイプでもなさそうな気がする。


 〈ジャパンCダート〉
 招待馬に去年のリドパレスのような目玉はいない。ドバイワールドCでも、このところ米国から遠征する馬のレベルは徐々に低くなってきている。これはアメリカの超一流の層が以前に比べて少し薄くなっていることもあるが、最大のネックはやはり薬物の扱いだろうと思う。素人が知ったかぶりをするのははばかられる分野だが、ラシックスやビュートの当日投与ができず、そのほか日常的に使っている薬品でも日本やドバイで禁じられているものがあると、目標のレースだけは支障なく力を発揮できたとしても、米国に帰国してから立ち直るのに時間がかかるようだ。薬は使わないに越したことはないが、こればっかりはそれぞれの国の事情があって容易に折り合いはつきそうにない。JCダートも、米国のビッグネームの来日を望むよりも、ダート競馬が確実に広がりを見せるヨーロッパや、未知のダート馬が隠れている可能性のあるアジアから呼んだスター候補を本物のスターに育てる場として機能していく方を目指すべきかもしれない。

 左回りではまっすぐ走れないトーホウエンペラーにとって、中山に替わったのはそれこそ千載一遇のチャンス。これ以上の大レースで、ダート右回りは今のところ世界中どこにもない。こちらはノーリーズンと違ってブライアンズタイムらしく、しばらく悪くて、しばらく良くてというリズムを守る(?)ので、上昇中の今の勢いは信頼できる。弥生賞のレインボーアンバーや障害の名馬カルストンイーデンの出る牝系は地味でもスタミナ豊富で、中山ダート1800mのコース特性にも適っている。

 ゴールドアリュールにとって大井、盛岡は決して向いた砂質ではなかっただろう。バネで走るダート馬らしからぬダート馬だけに、ベストは東京だろうが、中山でも地方よりはいい。サンデーサイレンス×ヌレイエフの配合はトゥザヴィクトリーと同じだが、祖母リラクタントゲストは米芝G1勝ちの一流馬で、これがホスティージ(ニジンスキー直仔)×ヴェイグリーノーブルのどっしりしたステイヤー血統。アメリカ馬と競り合ってもバテることはないだろうし、相手がこれまでより強くなっても、サンデーサイレンス産駒は大して意に介さないものだ。

 カネツフルーヴは甥のレギュラーメンバーの傾向からすると、中央より地方で強いのかもしれない。こちらはより“ロジータ度”が強いだけになおさらだ。それでも、ネヴァーベンドの代表産駒であるリヴァーマンとミルリーフを通じてのネヴァーベンド4×4という配合は面白く、それ以外の血脈も個性豊か。春にひと皮むけて、この秋もう一段階成長する奥行きが感じられる。

 今年はラストタイクーンがアローキャリー、デインヒルがファインモーションとシャトル種牡馬の大物が日本でも真価を示している。ダブルハピネスの父ロイヤルアカデミーもそれらに比べると地味だが、大物には違いない。5代母のスヰートハートは57年の川崎記念勝ち馬。日本ダート競馬史を感じさせる存在。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2002.11.21
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