2002天皇賞・秋


ボーイ ビー アンビシャス

 秋の天皇賞は84年に2000mに生まれ変わっているので旧8大競走の中では一番若いレースだ。国際グレードを認定されているジャパンCと毎日王冠に挟まれて格的には影の薄い存在だったことが否定できないが、下表に見るように近年のレベルアップは目覚ましい。ちょっと表の説明をしておくと、これは合同フリーハンデで得たそれぞれのレースの上位4頭の年度末の確定レーティングを平均したもので、細かいことをいいだすとキリがないので詳細は省略するが、要するにどれくらい強い馬が上位に入っていたかを示す数値。欧米でレースの格付けに用いられるレースレーティングと同じようなものだ。春の天皇賞の数値との対比でも“秋”の地位向上ははっきりしている。これはマル外に部分開放した昨年以前からの流れなので、日本でもようやく2000mがチャンピオン戦の距離として認められてきたというか、自然とそうなってきたということだろう。今年も豪華なメンバー。マンハッタンカフェ、ジャングルポケット、アグネスデジタルを欠いてなおこの豪華さ! 中山でやるのはちょっともったいない気もする。

合同フリーハンデ 上位平均レーティングの変遷
天皇賞春 (勝ち馬) 宝塚記念 (勝ち馬) 天皇賞秋 (勝ち馬)
1993 116.25 (ライスシャワー) 111.50 (メジロマックイーン) 108.75 (ヤマニンゼファー)
1994 115.25 (ビワハヤヒデ) 112.50 (ビワハヤヒデ) 113.00 (ネーハイシーザー)
1995 112.00 (ライスシャワー) 113.00 (ダンツシアトル) 113.00 (サクラチトセオー)
1996 116.50 (サクラローレル) 113.00 (マヤノトップガン) 120.75 (バブルガムフェロー)
1997 119.00 (マヤノトップガン) 119.50 (マーベラスサンデー) 117.50 (エアグルーヴ)
1998 116.25 (メジロブライト) 119.00 (サイレンススズカ) 114.50 (オフサイドトラップ)
1999 120.50 (スペシャルウィーク) 121.00 (グラスワンダー) 119.75 (スペシャルウィーク)
2000 120.75 (テイエムオペラオー) 122.25 (テイエムオペラオー) 123.75 (テイエムオペラオー)
2001 121.75 (テイエムオペラオー) 124.25 (メイショウドトウ) 123.25 (アグネスデジタル)
2002 ※117.00 (マンハッタンカフェ) ※117.75 (ダンツフレーム)
※当該レース上位4頭の確定レーティングの平均 2002年は暫定値

 ツルマルボーイはできれば東京でやりたかったクチだろうが、宝塚記念、そして秋を迎えての京都大賞典と、それぞれ確かな成長を窺わせる内容。サンデーサイレンス系だけに、強くなる上昇気流に乗ると一気にG1レベルに届くようだ。母は朝日CC勝ち馬。その実績はともかく、見た目や走りっぷりなどを総合すると、ナリタトップロードやティコティコタックを差し置いて、個人的には最もサッカーボーイらしいサッカーボーイの代表産駒という印象がある。その母エプソムガールがナスルーラのインブリードを持っていただけに、サッカーボーイの瞬発力が鈍らずに伝わったという面もあるかもしれない。エスサーディーに遡る牝系は比較的地味だが、この牝系の近年の代表は94年のこのレースの勝ち馬、ネーハイシーザー。ともに4歳になってメキメキ頭角を現してきた父内国産馬という点でも共通する。サンデーサイレンス血脈とサッカーボーイ血脈のミックスではステイゴールドという成功例があり、ダンスインザダークとサッカーボーイは先週の菊花賞で1、2着した血脈。母系に軽くグレイソヴリンが潜む(祖母の父アローエクスプレス経由)あたりも、この秋の隠れたトレンドを踏襲しているようだ。今回が一番の買い時と思うが、恐らくこの後も、成長を続けていく馬だろう。

 ブレイクタイムは初距離だが、去年の安田記念、真っ先に手応えをなくしながら最後までバテなかった内容を思い出すと、あのままあと2Fくらい辛抱できるのではないかと思う。力一杯走ってそのまま一杯の状態で踏ん張るという、ヨーロッパのマイラー血統にはそういうタイプが多いが、デインヒルには特にそういう底力に優れた産駒が多い。それで、瞬発力だけで決まることも多いG3で苦戦しながら、タフな流れのG1で人気以上の好走を果たす例が多い。今年のデインヒルの世界的2枚看板であるファインモーションやロックオブジブラルタルだと、もともとのスケールの違いが大きいので馬なりでG1に勝っていて、そんなに頑張っているようには見えないが、本質はそう変わらないのではないか。ブレイクタイムは母の父がロバートヲサングスター氏全盛期の愛1000ギニー勝ち馬だから、和製クールモアヲブランドといえそうな配合。牝系はシラオキからフロリースカップに遡る純和風だが、コインドシルバー×ヴィミー×ブッフラーという祖母の配合は無限のスタミナすら感じさせるものだ。

 この秋のサンデーサイレンスはダートとスプリントでG1勝ちを果たしているが、そろそろ本領である芝中距離でも一発があるころ。得意な皐月賞と同じコースに直仔が6頭も出てきているのだから、ひょっとすると上位独占もあり得る。全部押さえるのも芸がないので、ここは4歳世代から無冠のサンライズペガサスに抜擢。この馬、前躯がブライアンズタイム風のつくりなので、うっかりブライアンズタイム産駒と間違えることも多いが、ブライアンズタイムも皐月賞で強いので問題ない。祖母がアリダーだから、サンデーサイレンス×アリダーの皐月賞馬イシノサンデーに通じる部分もある。曾祖母は米重賞2勝で、ファミリーからはBCジュヴェナイルフィリーズの名牝ストームソングも出る。今後多数の追従者が出るであろうサンデーサイレンス×ブライアンズタイムの配合によるヘイルトゥリーズン3×4も大レース向きだ。

 ダンツフレームはクラシックで2着が続いて、勝った宝塚記念もマンハッタンカフェ以下、春の天皇賞上位組が出ていなかった。そういうイメージがついて回るのでアグネスタキオンに最も近付いたことや、重賞で0秒6より大きく負けたことがないといった長所が隠されてしまっているようだ。それに、本当に良くなってくるのはこの次あたりという気がしないでもない。ただ、うわべのイメージより能力の高い馬だし、多数派のサンデーサイレンスに藤田騎手のブライアンズタイムという状況は、同じ中山、97年の有馬記念でシルクジャスティスが勝ったシーンを思い起こさせる。ただし、今年はこの後もずっと中山。暮れまでずっと追いかけなければならない可能性も否定できない。

 ナリタトップロードは今年の菊花賞も勝って勢いに乗るサッカーボーイ産駒。3歳時は弥生賞に勝って、皐月賞でも時計差なしの3着。イメージほどに中山が合わないわけではないが、それでも中山ではピンとこない。本来東京であるべきものが中山に移ったギャップと、歳を加えるごとに大きくなってきたように思えるフォームがどうしもしっくり来ないため。早目に仕掛けるにしても、後ろも同じように早目に仕掛けるだろうし、淡泊なタイプだけにそれらの波状攻撃に耐えられるかというとどうなんでしょう。

 エイシンプレストンはいつの間にか日本では結果が出ないように思われているが、単純に考えて遠征帰りとか休み明けとか、敗因には情状酌量の余地が大きい。香港で問題にしなかったグランデラはシンガポール、英アスコット、愛レパーズタウンと2000mのG1では無敵で、今や“ワールドチャンピオン”の最短距離に立つ。英ヲ愛に出かけていって勝てるかとなると微妙だが、勝ち負けだけなら世界チャンピオンよりさらに強いということもいえる。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2002.10.25
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