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11月東京・ジャパンC→12月香港・香港C→3月ドバイ・ドバイワールドC→4月香港・クイーンエリザベス2世C→5月シンガポール・シンガポール航空国際C→6月阪神・宝塚記念。こう並べるとなかなか豪華な競馬のアジア・サーキットができる。中東から日本までのアジア圏に、オセアニアからの参加も見込めるし、ヨーロッパやアメリカからアジア向きの賞金稼ぎも加わるだろう。短距離〜マイルでもおおむね並行して大レースがあるから、それも加えれば、秋の欧州(例えば凱旋門賞)→米国(ブリーダーズC)の大西洋トーナメント(?)に負けない活気のあるシリーズになりそうだ。検疫などクリアすべき課題はあるものの、グリーンチャンネルで合田直弘さんがいっていたようにそういう障壁も取り除かれる方向に進んではいるようだし、フェアリーキングプローンが紆余曲折を経て安田記念に来られたことからも分かるように、こういうのは動き出したら結構速い。ただ、宝塚記念は97年から国際レースになったが、その年に日本人馬主のセトステイヤーが出走しただけでその後はなんにもない。確かに東京から遠い地理的条件、高温多湿の時期的条件と、確かにわざわざ遠征したくなくなる条件は揃っているとは思えるが、じゃ、何のために検疫施設まで備えた三木ホースランドパークまで作ったのだろう? いかに欧州が本格的シーズンに入った時期であっても、1億3200万円の賞金があってジャパンC勝ち馬もドバイシーマクラシックの勝ち馬も出るレースに、ゴドルフィンが一瞥もくれないというのはプロモーション不足としかいいようがないのではないか。香港もちょうど先週でオフに入ったのだから、たとえばオリエンタルエクスプレスあたりに元気が残っていたら、来てみようかなという素振りくらい見せないものかと思う。 ともあれ、新しい敵の出現がない以上、テイエムオペラオーの優位は動かない。動かないが、テイエムオペラオーがこれまで以上に強くなっているわけではなくて、競走生活後半のシンボリルドルフと同じで、より強い相手と当たらない不幸、自身の最大限の能力がどれくらいか分からない不幸に陥っているともいえる。いや、べつに、馬は不幸とも何とも思ってないかもしれんが、イチローとかサッカー日本代表とか、それら日本のトップが示しているように、よりハイレベルな戦いのなかで自身のレベルが上がっていく。鯉は大河に放てという中国のことわざがあったかどうかは知らんが、いつまでもメイショウドトウに勝ってるだけでは、メイショウドトウの能力がテイエムオペラオー未満で、テイエムオペラオーの能力がメイショウドトウより上ということしか分からない。 それでも、そんなことはお構いなしに、過去5回、テイエムオペラオー=メイショウドトウの組み合わせは馬連平均674円の配当がついてて、これがいつも終わってみれば好配当というやつで、そういう予想をしてないものにとってはアホと烙印を押されているようでホント腹立つ。それ以上にメイショウドトウにはストレスがたまっているはずで、大抵は5回も繰り返す前に逆転するか勝負から降りるかする(シンザンとウメノチカラ、セクレタリアトとシャム、アファームドとアリダー、ミスターシービーとメジロモンスニー、サンデーサイレンスとイージーゴーア……)ものだ。しかし、たぶん「テイエムオペラオー以外には負けない」メイショウドトウと「メイショウドトウには負けない」テイエムオペラオーがそれぞれ生真面目に条件を死守した結果がここまでの軌跡。それはそれでギネスブックに乗るまで頑張って頂くとして、ここではワイドの穴、あるいは一角崩し、あわよくば大勢逆転となりそうな存在を探ることにする(すごく前置きが長くなってすみません)。 ドバイシーマクラシックの実況映像では、ステイゴールドは惜しくも負けたように見えた。残念だが、何ともステイゴールドらしいというか、その奥ゆかしさに感銘すら覚えたものだ。でも、勝ってたんやね。2着のファンタスティックライトはさすがに6カ国を渡り歩いた世界レベルの名脇役だけあって、奥ゆかしさという点でハナのぶんだけステイゴールドより一枚上だったというわけ。そのファンタスティックライトもヨーロッパのG1シーズンが本格化すると、タタソールズゴールドC、プリンスオブウェールズSとG1を連勝。昨年のBCターフ勝ち馬カラニシを問題にしていないのだから、今年は方針を変えて中距離G1の主役路線を突っ走るつもりらしい。となると今年ファンタスティックライトを負かした唯一の存在(今のところ)であるステイゴールドも恥ずかしい競馬はできないわけで、G1善戦マンのイメージを払拭すべく意気込んでいるかもしれない。追い切りで耳をピョコピョコ遊ばせる面が見られなくなったあたりもその決意の現れだろう。もっとも、いくら本人が意気込んでもテイエムオペラオーが強いのはファンタスティックライト(JC3着)との比較からも明らかで、正直、勝つのは苦しそうだが、サンデーサイレンス産駒は毎年最低2頭は掲示板に載っているので、ワイドなら有力だろう。同期のサイレンススズカが香港遠征を機に強くなったように、ドバイ遠征が何かを変えている可能性もあるかも。 ダイワテキサスは昨年のジャパンCが0秒5、有馬記念が0秒1差と、メイショウドトウの次に、テイエムオペラオーに近付いている。その割には、地味だし、トシだし、トロメオだし(?)ということで人気になりそうもない。リイフォーの代表産駒の一頭であるトロメオは、ジョンヘンリーを負かしたアーリントンミリオンが唯一のG1勝ちで、産駒もAJCダービーのイノセントキングが唯一のG1勝ち馬。地味な印象もやむを得ない。それでもトロメオのG1入着歴は英2000ギニーから“キングジョージ”まで、それこそステイゴールド級で、G3に勝つよりG1で強い相手に健闘する方が性に合っているのかもしれない。牝系は最近でこそちょっと鳴りを潜めているが名門には変わりないビューチフルドリーマー系で、ニッポーテイオーやタレンティドガールの出るミスオーハヤブサの分枝。リイフォー直仔のニッポーテイオーは宝塚記念で当時飛ぶ鳥を落とす勢いのタマモクロスの2着。このレースにも縁がないわけではない。 欧州不動のチャンピオンサイアー・サドラーズウェルズ。これに少しでも抵抗してみせたのはこれまで、カーリアン、ダンシングブレーヴ、そしてアドマイヤカイザーの父くらいしかいない。日本のサドラーズウェルズ系の代表でもあるテイエムオペラオーを慌てさせることができるとすれば、種牡馬勢力図的にいえば、アドマイヤカイザーなのではないか。主な活躍の場はマイル路線だが、血統だけいえばむしろ長距離向き。全兄キングアレックスは愛G3ロイヤルウィップSに勝ち、半兄ポリグロートは仏G2エヴリ大賞典、そして母自身も仏G3クレオパトル賞に勝っていて、一貫して2000m以上で活躍しているファミリー。英ダービーのクエストフォーフェイムは曾祖母の孫で父もアドマイヤカイザーと同じ。3歳時のマイルチャンピオンシップ0秒6差4着から見てもG1で能力不足とは思えないし、テイエムオペラオーと未対決なのも魅力といえば魅力。前半で消耗することなくうまく末脚を生かせれば、ひょっとしてと思う。 99年に死亡したトニービンは、この春、レディパステルとジャングルポケットがオークスとダービーを制覇。初年度産駒のベガとウイニングチケット以来、2度目の快挙だ。ベガの全弟マックロウはもちろん、ダービーレグノもひょっとして……(こればっかり)。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2001.6.22
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