2001秋華賞


夢は芝生を駆けめぐる

 最近のG1では特に珍しいことでもないが、今回もサンデーサイレンス系が直仔と孫を会わせて18頭中8頭を占める大派閥を形成している。それを念頭に置いて下の表を見ていただきたい。サンデーサイレンスはダメですねえ。人気なら押さえで良く、人気薄の大駆けがないこともはっきり結果に出ている。後にドバイで2着に粘るような馬が惨敗するほどだから、これは普通ではない。G1勝ち馬が牡も牝もサンデーサイレンス産駒になって次代の配合が行き詰まるのを恐れた競馬の神様による操作があったとも考えられなくもないが、現実的に考えるとサンデーサイレンスのA級馬にとって3歳秋が実は非常にシンドい時期だということはいえるだろう。ギリギリの仕上げで春のクラシックを戦い、秋を迎えても他の種牡馬の産駒なら音を上げるところをもうひと頑張りしてしまうのが良きに付け悪しきに付けサンデーサイレンス産駒の特徴で、そこからトゥザヴィクトリーやスペシャルウィークのように立ち直るのもいれば、エンジンが焼き付いてしまうのもいる。牡馬の場合は最後のひと踏ん張りで無理がきいても、牝馬の場合は最大の踏ん張りは出産時にとっておかなくてはならないので本能的に保身に向かう(推測)。そのあたりがこのレースで顕著に現れているのではないだろうか。それだけにこのレースでのローズバドもこれまでの実績をある程度は割り引いて考える必要がありそうで、結論をいうと△。セクレタリアト×リファール×シャーリーハイツと配合されてきたボトムラインに底力不足は窺えないが、叔父のロサードがG3なら勝てるのにG2でちょい足らず、母も第1回のこのレースの3着と、このファミリーにはG1に手が届きそうで届かないという部分もある。

秋華賞のサンデーサイレンス
年度 馬名 人気 着順  馬名 人気 着順
1995 プライムステージ 1 10 サイレントハピネス 3 7
ブライトサンディー 5 2 マジックキス 9 9
1996 シーズグレイス 12 3 ノースサンデー 15 14
1997 オレンジピール 5 4 エアウイングス 12 7
1998 マルカコマチ 9 6 エガオヲミセテ 11 4
ダンツプリンセス 12 15 バプティスタ 13 5
1999 トゥザヴィクトリー 1 13 フサイチエアデール 3 5
マイネレジーナ 7 8 エイシンルーデンス 11 11
2000 チアズグレイス 2 4 マニックサンデー 12 17
フューチャサンデー 13 14 ポンデローザ 14 16
バイラリーナ 15 7 サファイヤコースト 18 12
※95年は旧エリザベス女王杯 


 これまでの結果を見ると、実績は十分だが比較的地味な印象のベテラン種牡馬の産駒が頑張っている。モガミとリアルシャダイの仔で決着した一昨年などはその典型。ドリームカムカムは春のクラシック組が休みに入ろうかという時期にやっと2勝目を挙げた。でも、のんびりと力を付けて、夏の間に古牡馬に揉まれたのは大きい。同じ父の秋華賞馬メジロドーベルも、レベルこそ違え、オールカマーで古牡馬をひねってからここに臨んでいるので、そういう経験のあるなしは結構ものをいうのではないか。祖母はハードツービートの代表産駒で仏オークス馬のデュネット。どちらかというと地味な牝系に突如出現したデュネットだったが、仏オークスのあと古馬になってからも、フランスの春の重要レース・サンクルー大賞典G1(エルコンドルパサーが勝った)に勝ち、産駒にもフレンチグローリー(ロスマンズ国際G1)を出しているだけに、いわゆるまぐれの名牝というわけでもない。父もメジロドーベル、メジロブライトの初年度だけの大爆発かと思えたところでこの春にもトーホウドリームが常勝テイエムオペラオーを破って、底力に陰りのないところを示している。最近はほとんど見ることがなくなった“大レースの穴血統”ハードツービートの名前があるのも嬉しい。母の父は気難しさが災いしてかそこそこ産駒は活躍しているもののメジャーに抜け切れない英2000ギニー勝ちの名馬だが、シアトルスルーの半弟のノーザンダンサー直仔という超良血だけに、母の父としては有能だろう。穴馬的要素がたっぷり詰まった配合。

 レディパステルの紫苑Sの直線は同じ父のエアグルーヴが走っているのを見るようだった。胸前にガチッと筋肉が付いてきたせいかもしれない。その割にやっとこさで勝ったのはドリームカムカムが力を付けていたためだろうが、小回りではなし崩しに脚を使ってしまって東京コースほどズバッとは切れないということもあるだろう。母はマジックナイトの勝ったヴェルメーユ賞G1で2着。マジックナイトの仔のマグナーテンが走り出したのと前後しての活躍は偶然だろうが、ブラッシンググルームの娘の仔だけに、秋を迎えてさらにパワーアップしているのは確実だろう。エアグルーヴは5年前のこのレースで人気を裏切り、翌年のエリザベス女王杯もスローペースにはまって取りこぼしているように、トニービンに京都のG1は今イチかもと思いつつ……(でもノースフライトは勝ったな)。

 テイエムオーシャンは96年2着のエリモシック、97年2着のキョウエイマーチと同じダンシングブレーヴの産駒。どちらとも違うタイプだが、リヴリア×エルプスという母の血統には何とかと何とかの紙一重というか、魅力的だが危なっかしい雰囲気が漂って、がピッタリの印ではないかと。特に危なっかしいのが母の父リヴリアで、切れるがキレるというか、初代ジャパンダートダービー勝ち馬オリオンザサンクスのように、緊張の糸が張りつめているうちはいいが、いったん緩むと難しい面が出てくる可能性もあるかも。

 アドマイヤハッピーは山元トレセンの火災で悲運の死を遂げたエガオヲミセテの半妹。大体、エリザベス女王杯の次代から、天皇賞馬の妹とか、どちらかというとハッピーな良血が好成績を収めていたので、そういう重いのもどうかと思うが、姉は人気薄であわや(馬券買っていたひとしかそうは思わなかったかもしれないが)という場面をつくったし、叔母エアグルーヴにしても、生涯唯一の大敗がこのレースだから、汚名をそそいでおきたいというのはあるだろう。思い切ったレースをすれば、ワイド圏内には十分残れる底力を備えている馬だ。

 タイムフェアレディはエイダイクインに次ぐメジロマックイーン産駒の重賞勝ち馬。この父の仔は、どうもどんくさい牡馬より、牝馬の方が重賞に近い位置にいるようだ。近親のゴーイングスズカもG1善戦の底力は備えていただけに、このレースが陥りがちな乱戦になれば台頭してくる余地はありそうだ。

 大穴でシルキードルチェ。母も400Kあるなかいかの小さな馬だったが、その半兄はジャパンC勝ち馬マーベラスクラウン。父はオーストラリアでナチュラリズム、アメリカでシガーを出し、日本では種付けシーズン途中で体調を崩すなど、頼りになるのかならないのか分からない助っ人外人のような存在だったが、パワーの最大値が楽にG1級に届くことははっきりしている。今や古風な印象さえ受けるプリンスジョン3×4の底力もG1でこそ不気味。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2001.10.12
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