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サンデーサイレンスは1986年に生まれ、89年の米クラシックを戦って年度代表馬となり、90年6月24日のハリウッドゴールドCでクリミナルタイプの2着に敗れたのを最後に引退、10月に日本に輸入された。91年に種牡馬として初供用されてから、今年で10周年を迎える。特に記念式典があったわけでもなさそうだが、ステイゴールドのドバイシーマクラシック制覇、トゥザヴィクトリーのドバイワールドC2着と、金額的には日本ダービー2勝ぶん、国際的ステータスとしてはおそらくそれ以上のものを得ているように、今年あたりは自力で記念碑を立てるくらいの成果を挙げそうだ。でもなあ、サンデーサイレンスがらみで書いていればこのコラムが成り立つのもあと何年かに限られたことだろうなとは思う。 サンデーサイレンスは、血統登録を受けた産駒の頭数でいえば、下表の通りこの3歳世代が今のところピークで、種付け頭数から考えて、あと3年くらいはこのレベルが少なくとも下がることはなさそうだ。でも、それ以降となると、量はともかく、日本の経済力の低下につれて質的レベルが徐々に下降線をたどることは容易に想像できる。サンデーサイレンスの場合、配合相手の牝馬も最上級なので経済停滞の波をもっとも受けにくい位置にいるのは確かだが、それでも種付けから競走までのタイムラグが3〜4年として、もうしばらくしたらそのような影響が現れてくるのは避けられない。例えばヨーロッパでは、ノーザンダンサー・ブームのピークが1981年生まれの世代で、その種牡馬としての代表がサドラーズウェルズ。90年代のヨーロッパは、名馬といえばサドラーズウェルズの産駒で、1999年の凱旋門賞馬モンジューが、まあ、最後の記念碑といったところだ。2000年もなかばを過ぎるとモンジューがフェードアウトしていったのに連れて、サドラーズウェルズの時代も終わりに向かっているようで、サドラーズウェルズが81年生まれ、サンデーサイレンスが86年生まれという両馬の年齢差を考えると、サンデーサイレンスもあと5年くらいで退潮に向かうのだろうと思う。それはそれで仕方のないことだ。
とはいえ、新しい血統、力のある系統を買い集めるのが経済力だとすれば、その資質を育てるのは伝統とか知恵とか、いろいろなノウハウの蓄積である技術力であり、競馬が一概に経済力だけといえないことも、アガ・カーン殿下のシンダール(凱旋門賞)やカラニシ(BCターフ)が、圧倒的な経済力を誇るアイルランドの馬産組織クールモア・グループやモハメド殿下のゴドルフィンの独走を許さなかったことでも分かる。フランスのB級血統のジムアンドトニックによるドバイデューティフリー、我らがステイゴールドのドバイシーマクラシックと、見方によればドバイワールドC以上のハイレベルな戦いをヨーロッパやアジアのマイナーな存在が制したのも、実は技術力によるものだったともいえる。今の日本の競馬に求められるのは、サンデーサイレンスという潤沢な貯金があるうちに、どれだけ技術力のレベルを引き上げておけるかだろう。 今回サンデーサイレンス産駒は朝日杯組のメジロベイリー、タガノテイオーといった飛車角落ちの状況だが、それでも王将格であるアグネスタキオンは全兄がダービー馬で、スケールは兄以上といわれる。しかも、桜花賞馬の母、オークス馬の祖母と、当代最良のバックボーンを持っているのだから、もう何もいうことはない。それにしても、競走馬として、そして繁殖牝馬として、求められる資質が微妙に違うだけに両方で名牝と称されることはまれだし、それを2代続けたというのは凄いことで、これはイットーがハギノトップレディを産み、ハギノトップレディがダイイチルビーを産んだケースを超えている。今後を考えても、エアグルーヴがG1級の産駒を出してこれに並べるかといったところだ。配合的には、母の父の持つボールドルーラーやウォーレリックの血が父の才気を刺激し、祖母の持つハイペリオンを中心とする欧州血脈が、父の持つ底力に呼応しているのではないかと思うのだが、そのへんの細かいところは実際のところ分からない。分からないが、サンデーサイレンス産駒のひとつのピークとしてのパフォーマンスを、今回、そしてダービーと見せてくれる器であることはほぼ間違いない。◎。 ボーンキングが当面のピークを迎えるのはおそらくダービーであり、ここはその上昇過程の通過点に過ぎないということなんやろなあ。そういう仕上げ方で来ているし、これもダービー馬の弟でキャリアも浅く、前走で現状の力差がはっきりしているとなれば当然だろう。でも、サンデーサイレンス産駒の1、2着独占が過去2回あり、去年はサンデーが勝って、2着はサンデーの孫だった。本格化は先と思いつつ、そういうわけで○。 ジャングルポケットは前走でも4コーナー手前からまともにハミを取ってなかったが、それでも圧勝して見せた。このように荒削りな勝ち方をして、これで洗練されてくればどれだけ強いのかと思わせる馬は多いが、実際には、案外そんなに変わらないというのが多い。トニービン×ヌレイエフの繊細な配合ならなおさらだし、中山の2000mは、場合によっては直線一気で決められることもある東京2400mよりもむしろタフな面もあるだけに、ここはトニービン未勝利という過去の皐月賞の結果を尊重してあえて見送るべきかも知れない。あ〜、もう! 惜しいなあというレースをすれば、ダービーで目一杯買いだ。 4年前はブライアンズタイムのワンツーで馬連5万円の大穴だった。今回出走の3頭まとめて▲としたいところだが、そうもいかんので、ここはもともとの評価の高さの割に人気を落としたシャワーパーティーに期待。体の輪郭を大まかにつなぐと、寸が詰まっておおむね正方形に近いものがロベルト系で、ブライアンズタイムには特にその手のタイプのゴロンとした体形が多いのだが、この馬はそういうロベルト系らしさ、ブライアンズタイムらしさをとどめながらも、この系統には珍しい正統派の二枚目(?)に出た。このあたりは母系に入ったマルゼンスキー、その母の父のバックパサーの影響大といえよう。血統表の3代目にはグロースターク、ニジンスキー、チャイナロックと並ぶので、見かけ以上に馬力勝負には強いはず。きさらぎ賞では、同じ父の仔のダンツフレームに比べてはっきりとストライドの伸びの差で負けたが、今度は舞台が高速京都から力の中山に移る。東京ではサンデー軍団やダンツフレームには勝てないような気がするが、今の中山の馬場なら、付け入る隙があると思う。 △シンコウカリドはジャングルポケットと同じくヌレイエフ牝馬の仔。ヌレイエフはいかにも日本に合いそうな血脈でありながら、案外成功していなかったが、直仔ブラックホーク、そして娘の仔ジャングルポケットと、その瞬発力を十分に発揮するものも出てきた。母は今年武豊もしょっちゅう身につけるであろうニアルコス家の服色でG2に勝った名牝で、マキアヴェエリアンの妹に当たる良血。ヘイルトゥリーズン3×4も一発の魅力十分。 |
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競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2001.4.13
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