2001ジャパンC/JCダート


ファンタスティック・ダート

 ライブリマウントの無敵の快進撃で始まった中央・地方の垣根を越えた95年からの全国交流戦は、主役の座がホクトベガに移るとともに97年から統一ダートグレード競走としてレース体系が明確になり、それにともなってダート競馬はそれまでのサブの位置に甘んじることなく猛然とメイントラックの芝競馬を追い上げ始めた。いまだに軽蔑的に「ダート馬」と呼んだり「田舎のG1」というひともいるにはいるが、賞金額とそれにともなう市場原理(?)を考えれば芝とダートのレベル差が急速に埋まるのは当然のことで、ウイングアローやレギュラーメンバーといったダート生え抜きに加えてクロフネやアグネスデジタルが出たり入ったりしているダート界の活気は、テイエムオペラオーとメイショウドトウが古式ゆかしくライバル物語を繰り広げている芝戦線をとっくに凌いでいる可能性すらある。さらに今年はトゥザヴィクトリーがドバイワールドCで2着。確かに勝ったキャプテンスティーヴは一流といってもシガーやドバイミレニアムらのスーパースター級には比ぶべくもないが、それでも“ワールドC”2着は、世界に日本のダート競馬が(ほぼ)一人前と認めさせるに十分なものだったといえる。ま、確かに、ダートもこなす芝馬トゥザヴィクトリーのスピードによる成果だけに、そのまま深い砂で戦う日本のダート(生え抜き)馬のレベルまでもが世界水準になったとはとてもいえないだろうが、マンジュデンカブトやオサイチブレベスト、メイショウホムラが、ただ負担重量とだけ戦っていた時代からすると本当に夢のように視界の開けた世界になったものだ。いながらにしてリドパレス級と戦えるなんて、もはや芝ではよほどでないと望み得ない。芝もファンタスティックライトが来てくれていれば良かったのだろうが、そうであればフランケル厩舎勢(リドパレス、ティンボロア)は来ていなかったわけで、こういった点でもダートに時の勢いといったものが感じられる。


 〈JCダート〉
 主賓はアメリカのリドパレス。あくまでもブリーダーズCクラシックへのステップのひとつだったとはいえ、ティズナウ、アルバートザグレートという後のBCクラシック1、3着馬を問題にしないウッドワードSで示したパフォーマンスは昨年の招待馬のレベルとは比べものにならない世界最強クラスだ。ただ、「第2回で早くも現れたワールドクラス」というキャッチフレーズで思い出すのは82年のジャパンCに来てくれたジョンヘンリー。南米のアウトサイダー血脈による異化作用を受けているとはいえ、日本ではサッパリのフォーティナイナー系。いったん来日をキャンセルした理由も熱発で、事実その週は追い切りが1週とんでいる。チリからアメリカに渡ってドバイに飛んだUAEダービーは3着といっても半年若い相手に6馬身差、アメリカ帰国緒戦は2着といってもB級に足元をすくわれた。実力でアッサリのケースはあるかもしれないが、なんぼ超一流とはいえ、これだけ飛ぶ要素を備えた(?)馬にわがオールスターチームがてもなくホームで粉砕されたら悲しい。

 クロフネは、メイセイオペラがフェブラリーSに勝ったのと同じくらいの確率で勝つと思う。要するに、フリーハンデ的には確勝級、あとは未知の相手との対戦による不確定要素がどれくらい影響するかという程度。リドパレスが第2回のジョンヘンリーだとすると、クロフネは第5回ジャパンC、日本馬として初めて勝つべくして勝ったシンボリルドルフだ。よって、極めて本命に近い。でも、やっぱり買いたい馬を本命にしたい。で、シンボリルドルフの年のロッキータイガーのように、実力がそれほど周知のものとなっていなくて、人気の盲点に入っている馬を狙いたい。ミツアキサイレンス。どうも前ふりで見え見えだったかもしれないが、佐賀記念のあとはずっと不完全燃焼で、適度に脚抜きの良い東京、強豪を相手に差しに回れば、かえって持ち味の生きるタイプ。欧州型の時代遅れのスタミナが積み重ねられた母に、サンデーサイレンス直仔のお徳用種牡馬。少なくとも日本で戦う限りは爆発力でひけを取ることはない。さすがに単勝は無理だろうが、ここから有力どころに流して2着に入れば万々歳。

 アエスクラップは初ダートだが、ヨーロッパの競馬人はこれまで芝馬を平気でドバイワールドCに挑戦させてきたし、それ以前でもブリーダーズCのダート戦に無謀とも思える挑戦を繰り返した。日本やアメリカのようにダートと芝の並立が馬券作戦として重要となる国とは違って根本的に無頓着な部分もあるだろうが、無謀な挑戦でも繰り返すうちにだんだんと洗練されてくるもので、ドバイのゴドルフィンやアイルランドのクールモアグループにとってはダートの頂点であるブリーダーズCクラシックもあと一歩のところまで来ている。アエスクラップの父のアカテナンゴはフランスに遠征してサンクルー大賞典を制覇し、凱旋門賞ではダンシングブレーヴ、ベーリング、トリプティクという凱旋門賞の頂点ともいえる豪華メンバーだっただけに7着に終わったが、産駒にはジャパンCのランド、そして、ヨーロッパから、アメリカ、日本と巡って香港国際ヴァーズを制したボルジアと、異境でも最大の力を発揮する順応性の高いものが多い。もともと力の競馬はお手の物のドイツ馬だけに、消耗戦になれば突っ込んでくる可能性はある。

 ジェネラスロッシは平均ペースでどこまでも走ってバテず、相手がバテれば勝つというジェネラスの仔らしいスタミナ型。複勝圏内に粘る確率ではむしろリドパレスより高いかも知れない。△。

 ウイングアローレギュラーメンバーミラクルオペラハギノハイグレイドの日本ダート生え抜きオールスターズが×


 〈ジャパンC〉
 BCターフでの結果が象徴するように、アメリカの芝のレベルはもうどうしようもないほどで、ウイズアンティシペイションのマンノウォーSなんかでも、フサイチゼノンが完調で道中折り合っていれば楽々と突き抜けていたのではないかと思う(結果4着でしたが)。英2000ギニーは強かったゴーランも、欧州3歳クラシック勝ちの“カモ”パターン。外国馬で日本勢の一角崩しがあるとすれば、早くからJCを視野に入れ、これまでも多くの良績を残すカナダ国際S経由となる、ドイツ馬パオリニだろう。父はジャパンC勝ち馬、半兄はJCで見せ場たっぷりの4着だったプラティニ。どうもJCのために計算されているようで怖いくらいだが、ここまではまっていれば素直に従うべき。よそから見るとドイツ血統というのは2400mを唯一の選択基準としてきたようであり、今や斜陽の“世界選手権距離”となった芝2400mに最後まで忠実なのはドイツ血統なのではないかとも思う。そういう感傷含みの

 さらにパワーアップしていたファンタスティックライトがいない以上、常識的には日本馬の争い。テイエムオペラオーメイショウドトウ、△ジャングルポケット、穴でナリタトップロード


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2001.11.22
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