昨年のダートG1は、ウイングアローが東京で2つ、ファストフレンドが大井で2つ勝ったが、あとはそれぞれ違う馬が制した。レベルアップとともに競争が厳しさを増し、ホクトベガの時代のようにオールマイティに勝ち続けるのは難しくなってきたということで、今回のディフェンディングチャンピオン・ウイングアローにしても、そう安閑としていられない状況なのは確かだ。となると、東京1600mのスペシャリストを狙うのが筋だろう。◎サンフォードシチーは父が安田記念V2のヤマニンゼファーで、その父ニホンピロウイナーはマイルチャンピオンシップV2+安田記念の、マイルのスペシャリスト血統。細かくいうと、ニホンピロウイナーはスプリンターに近いマイラーだったし、ヤマニンゼファーはマイラーに近いスプリンターだったといえるかも知れないが、ウイナーは天皇賞sで3着、ゼファーはその天皇賞sに勝って、自分のテリトリーを越境してもなお崩れなかった。でも、それって芝での話でしょといわれるとその通りだが、ヤマニンゼファーはダート6戦4勝、準オープンの羅生門Sでは翌年のフェブラリーH勝ち馬メイホウホムラを完封しているのだから、今なら東京盃と南部杯を圧勝するくらいの能力はあったと思われる(あくまで想像だが)。ニホンピロウイナーにしても近年はむしろダートでの勝ち鞍が多いくらいで、欧州短距離界に一時代を画したハビタット系(全盛期は短距離以外にも越境した)そのものが欧州と北米の交流の少ない時代の血統だけにダートでのスピードを試される機会がなかっただけで、ブリーダーズCがあと10年早く始まっていれば“スプリント”の勝ち馬が1頭や2頭は出ていたと思われる(これもあくまで想像)。実際、昨年の米国東部スプリント戦線を引っ張ったリクタースケールはハビタット系ハビトニーの仔だから、想像としても案外いい線いってるのではないかと思う。ま、ちょっと横道にそれたが、サンフォードシチーはネアルコ〜ナスルーラにハイペリオンの血を重ねることでじわじわ能力レベルを上げてきた配合で、ミスタープロスペクターともノーザンダンサーとも無縁。こういう流行の波に飲み込まれて水底に沈みそうになっていた血統に再び光をあてたということも芝とは違うもうひとつの競馬、ダート競馬の功績といえそうだが、このあたりは北半球で絶滅寸前のサイアーラインが、南半球で細々と育つうちに力をつけ、北半球に帰って大活躍するのと同じような面もある。血統表にテスコボーイの名が潜んでいるあたりはウイングアローやファストフレンドと同じだし、母のヴェンチア3×3も、この先ミスタープロスペクター系が力を増すのにつれて、(種牡馬になってからの話だが)さらに存在価値が高まる血脈。ハビタット系が先細りでハビトニーも死んで世界的にもう風前のともしびという時期に、父系3代東京1600m変則G1制覇という記録にもならない記録の期待もあるし、ドバイワールドC登録馬で、ウイングアローは文句なく決まり、レギュラーメンバーとサンフォードシチーは国際クラシフィケーションで同じレーティングだからどっちにしよう、若い方にしよう(これも想像)というわけで選に漏れた第三の男が、意地を見せるのではないか。
3歳時のユニコーンSではベラミロードのJRA重賞制覇の野望を打ち砕き、翌年のフェブラリーSではウイングアローに1/2馬身まで迫り、その秋にはギャラクシーSでサンフォードシチー、続く南部杯でウイングアローを問題にしなかった○ゴールドティアラ。だめ押しすべきジャパンCダートで放馬して終わったのが何とも残念で、ひょっとすると日本一強いかもしれないのに、ちょっと歯車のかみ合わせがずれた。米2歳トレーニングセールで20万ドルは、シーキングザゴールドの仔としてはドバイミレニアムの出現の前の時期、牝系もA級なので結果としては大変なお買い得だった血統で、サンフォードシチーが極めて日本ローカル的でヤマニンゼファーやニホンピロウイナーの記憶がある人に限って価値のある血統なのに対して、こちらは世界中どこのセリでも高値が付いておかしくない良血。今回、大量に出走してきたミスタープロスペクター系×ノーザンダンサー系の代表といえる存在で、このパターンの配合はフサイチペガサス(ケンタッキーダービー)、レモンドロップキッド(古馬チャンピオン)、スキャターザゴールド(加二冠)と2000年の北米で爆発的成功を収めた。
▲ウイングアローは2000m以上がベストとはいえ、3歳時に各地を転戦して準三冠を達成しているように順応性の高さは折り紙付き。ただ、去年のメイセイオペラとか、(出ていれば)レギュラーメンバーのような明確なペースメーカーがないぶん辛いかも。ここはまあ、そこそこ格好つけて、それ以上にドバイで頑張れば、みんなたぶん、それでも許すぞ。
△マンボツイストは並んで抜かせないのが身上。そういうレースぶりで東京の長い直線は確かにシンドいと思うが、勝ちそうな馬を見つけてそれに並んで抜かせなければ勝てる(?)わけ。要はそれだけの底力があるかどうかだが、エイコーンS勝ちの母に、2000年はG1勝ち馬4頭を出して本領を発揮し始めた父で、これもMr.プロスペクター×ノーザンダンサーのA級血統。G1で格負けする心配はない。
タマモストロングはどうもG3は勝ちまくるがG1ではダメというタイプなのかも。ただ、フリーハンデ的にはG1級の能力が認められていて、母は単勝43,060円の歴史的大穴でエリザベス女王杯を勝った。一発はあるかも。