2000宝塚記念


驚異の王者は三たび甦る

 —— えー、今日は春のグランプリということで、特別にスペシャルウィークさんとエルコンドルパサーさんにお越しだきました。おふた方ともお疲れのところをご苦労様です。

 スペシャルウィーク いやいや、引退して北海道戻った思たらすぐに、朝・昼・晩、朝・昼・晩がズーッとやろ、たいがい疲れるで、ホンマ。

 エルコンドルパサー えり好みが出来ないのがつらい。でも君はいいよな、血統的にも好きな方だし。

 スペ まあ、嫌いではないけどな。親父やダンスインザダークのアニキに負けたないし、ワシ、外国行ったことないやん。頑張ったらフジキセキのアニキみたいにオーストラリアとか行けるかもしれんやろ。真っ黒に日焼けしてカッコええで。

 エル あれは地黒。リゾートに行ってるわけじゃない。

 スペ あっ、ちょっと外国行ってたと思てえらそうにいいやがって、おまえ、モンジューに負けたくせに。

 エル あれはね、わざと花を持たせてやったの。こっちは客の立場だろ、そんな厚かましく全部勝って帰るわけにはいかない。でも、フランスの最優秀古馬にはなったんだから。

 —— え、フランスの最優秀古馬になられたんですか、初耳やな。

 スペ ほんまかいな。ワシらフランス語読めへんと思てハッタリかましてるんちゃうか。

 エル いや、当然そうなるでしょう。「クルス&エレバージュ」誌の1月号あるかな、ちょっと持ってきてよ。

 —— あ、はい、分かりました。ほんま人使いの荒い馬やで、ブツブツ……。(と本を探しにいく)

 エル うーん、あいつ馬より人間の方が偉いと思ってるんじゃないの。

 スペ ガリバー旅行記読んだことないんやろな。あ、戻ってきたわ。

 —— ありました、ありました。これでしょ。ちょっと待ってね、辞書調べるから。……ほんまや、最優秀古馬エルコンドルパサーて書いてある。

 スペ ほんまか。それやったらなおさらモンジュー負かして年度代表馬なっといたら良かったんやないか。あんたはフランスの年度代表馬、ワシが日本の年度代表馬で丸く収まった。

 エル ふふ、でもあのきついレースでそこまで考える余裕はないよ。

 スペ レースの前に考えんかい。ワシなんかテキが「秋のG1全部勝ったら年度代表馬やぞ」ていうから京都大賞典のときはここで全力出したら暮れまでもたんなとか計算したもん。

 エル でも、年度代表馬だからって別にいいことないよ、飼い葉が豪華になるわけじゃなし。

 スペ でも、ならへんよりなる方がええで。まわりが「何でやねん」ていうのなだめるのにワシが気い遣たわ。

 —— ところで今回、お友達のグラスワンダーさんなんですが……。

 スペ 誰がやねん。

 —— えー、天敵のグラス……。

 スペ どこがやねん!

 —— まあ、どうかなということなんですが。

 エル あの、こいつね、グラスワンダーについて不用意なこというと怒るから。もうちょっと気を遣って聞いた方がいいよ。

 —— はあ。えーと、スペシャルさん、昨年の宝塚記念、有馬記念と2度負けたグラスワンダーなんですが。

 スペ 帰るぞっ! というのはウソで、まあ、ええねん。有馬記念は負けたと思てないしな。いいわけするわけやないけど、宝塚記念のときははっきりいうてワシもちょっとピーク過ぎとったからな。だいたいね、あいつはちょっと何かあるとすぐに落ち込むタイプや。調教のときから、あー、俺はもうアカンていうカッコしてワシら油断さしといて本番でガーッと本気出しよんねん。そういう奴っちゃ。

 エル 俺はフランスにいたからそのへんの事情は分からないけど、一般的にロベルトの系統って、ここ一番でサンデーサイレンスより強いけど、落ち込むと立ち直るのにサンデーサイレンスの系統より時間がかかる。君たちを見てたらよく分かる。

 スペ 知ってるんやないか。

 エル フランスにも週刊競馬ブック送ってもらってたから。

 スペ ホンマかいな……。でもあいつ、中山とか阪神の馬場は合うてるからな。

 エル というか、君があんまり得意じゃなかった。

 スペ そんなことないで。でも、ワシ以上にあいつの走り方はそういう馬場に合うてるな。

 —— ま、ロベルト系が一旦落ち込むとしばらく時間がかかるというのはナリタブライアンでもそうでしたし、立ち直ればやっぱり強いというのはマヤノトップガンがそうでした。

 エル でも、彼の場合、俺たちと違って3歳のときからバーンと派手にトップに立っちゃったからね。そのへんで6歳になってそろそろシンドい部分が出てくるかも。

 スペ いやいや、途中でだいぶ手ェ抜いてるからな。土曜日くらいまで、あきまへんいう顔しといて、レース前にはギンギンになってるはずや、そういう奴やねんから。

 —— ではにしておきます。次にテイエムオペラオーですが。

 スペ あの、有馬でグラスワンダーの内におった栗毛やろ。あいつは若いのになかなか見どころがある。

 エル サドラーズウェルズだもん。この血の底力は俺自身よく分かる。

 スペ 心配はピークの天皇賞のあとでどうかていうことやわな。モンジューでも、あんなに歯ごたえない奴やとは思わんかった。あれはやっぱり凱旋門賞でピークやったからや。

 エル 俺があそこでちょっと無理させちゃったかな。

 —— すぐそっち行くんやから。でもまあ、以下には出来ませんよね。ではステイゴールドはどうでしょう。

 スペ アニキついに重賞勝ったんやてなあ。ワシも秋の天皇賞のときゴール前でな、あっ、アニキやと気い付いたんやけど、もう勢いついてたから交わしてもた。あんだけ頑張ってたのに悪いことしたなあて思てたんや。

 エル 勝ち誇った顔してたくせに。

 —— サンデーはこのレース4年連続で連対中ですからね。その代表ということで△にしておきましょう。

 エル ラスカルスズカってどう?

 スペ ああ、おまえが敵わんかったサイレンススズカのアニキの弟やろ。

 エル ややこしいいい方をするなよ。でもサイレンスズズカさんは凄かったからなあ……。お尻の形はよく覚えてるけど、どんな顔してたのかついに分からなかったもの。

 スペ オーバーな奴っちゃな、輪乗りのとき見たやろ。

 エル 少なくともこの春はお兄さんの域にはたどりつけなかったということじゃないかな。一気に成長はしたけど、突き抜けるところまではちょっと勢いが続かなかった。

 —— コマンダーインチーフってそういうところありますよね。ではマチカネキンノホシはいかがでしょう。

 エル お父さんがシアトルスルーっていうのがいいよね。

 スペ あ、また自分の母方に入ってるから誉めてるな。

 エル いや、実際5年前はワンツーだったし、タイキブリザードさんも、あんなにサンデー軍団に寄ってたかって来られなければ勝ってたかも。そのへんまででしょ、勝負になるのは。じゃ、明日早いんでお先に。

 —— はあ、お疲れさまでした。

 スペ しかし、あいつ、しれっとした顔で結構鋭いツッコミしよるな。

 —— そりゃまあ種牡馬ですからね、突っ込むのが仕事です。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2000.6.25
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