2000ジャパンC/JCダート


芝の長距離は砂塵にかすむか

〈ダート〉

 96年のブリーダーズCクラシックでタイキブリザードはアルファベットスープから約27馬身離れたしんがり13着、翌97年は9頭立て6着に入ったものの、超高速スキップアウェーからは約23馬身離されていた。ドバイワールドCでは昨年のワールドクリークがドバイミレニアムから16馬身差の6着(13頭)、98年のキョウトシチーが22髞n身差の7着で97年はホクトベガの悲劇、96年はライブリマウントが18馬身差の6着だった。イギリスの短距離やフランスの芝では海外遠征のハンデを感じさせない結果を出している日本馬も、世界のスーパースターが集まるレースではかくも大きな差があるのかと思い知らされるが、それでも強い馬がそれなりにのびのびと力を発揮できる環境が整いつつある今では、ライブリマウント時代を中学生とすれば、高校3年生くらいの力を日本のダート馬たちも備えてきていると思う。ダートで古馬相手の重賞では勝たせてもらえなかったアグネスデジタルが先週、芝・マイルの最強クラスを一蹴していることを考えれば、中学生と高校生の体力差以上のレベルで底上げがなされているのは確か。古馬のチャンピオンディスタンスのレースが、極端に重い大井だけでしか行われなかった昨年までに比べれば、東京2100mに最強クラスが激突する場ができただけでも今後に大きな期待が持てるし、その第1回にはちょうどいいんじゃないですか(フリーのフリーハンデ師・黒田伊助氏談)という招待馬が来てくれた。

 ダートというと勢いアメリカ馬ということになるが、ブリーダーズCから中2週というのはキツい。何がキツいかというと一番大きいのはこっちとアメリカの薬物使用に関する規定の差で、日本や欧州みたいに厳しく薬物使用を規制していては、競馬そのものが成り立たないアメリカから、一応清浄国(なんでしょう、たぶん)の日本に来るにあたっては一流馬ほどその壁は大きくなる。ラシックスとか当日投与で効果を発揮する(と考えられている)薬物は別にして、使用して1カ月、あるいは6カ月とその痕跡が残るクスリもあるわけで、そうなると本気でブリーダーズCクラシックを目指そうかという馬は大抵が来日できない。ジャパンCダートのために、それまでの“日常的な医療行為”を中止してまで大一番のブリーダーズCクラシックに臨むというのはリスクが大きすぎるからね。それがドバイとなると4カ月以上間隔が開くから、ドバイの規定に収まる“医療行為”で仕上げ直せるわけで、これはいい悪いの問題ではなくて、違う国の違う競馬のありようだから仕方がない。今後もBC勝ちの勢いを駆ってというのは望み薄で、1回、2回とやってみて、BCより日本に向きそうな馬が来ることになると思う。

 ユーカーは前走の1、2着馬、ティズナウとキャプテンスティーヴがBCクラシック1、3着で、前走の差をBCに当てはめると単純計算で4着か5着には来ていたことになる。仮にフサイチペガサス(BC6着)がここに出てくればにぎにぎしく1番人気になっていたはずで、そう考えると単純な能力比較ではずっと上。ウォーアドミラル5×5という配合上の隠し味もドバイミレニアムやシルバーチャームあたりに通じる面があるが、どうもこの手のタイプは行くでなし控えるでなし、中途半端な競馬で長い直線でじわじわ馬群に飲み込まれるような気がする。何か行数的に窮屈になってきたけど、は日本代表にふさわしいフロリースカップ系のタマモストロングウイングアロー、△がロードスターリングで、ファストフレンドレギュラーメンバーに、大穴でアグネスデジタルを負かしたサンフォードシチーロードスターリングは今回をきっかけに強くなっていく馬なのではないだろうか。

〈ターフ〉

 ジャパンCターフという名前のレースではないが、今後のことを考えると20回を機に“ターフ”と添えておくか、後発の“ダート”をニッポンCとするか、明らかに分かるようにした方がいろいろな面でややこしいことが起きなくていい。例えば、今から30年くらいして、血統とか成績とか調べてる若いひとが「98年ジャパンCてこれ、芝かな、ダートかなあ」とつぶやく。そこでこの道50年のオジンが出てきて「あのな、なんもついてないのは芝で、ダートには“ダート”てついてるんや。ダートが始まったのは2000年やからそれより前は全部芝のレースやで」と教える。成績を調べてて、いちいちこういう手続きが必要だと想像しただけで面倒くさいでしょう(しかし、エリザベス女王杯なんかもっと面倒くさいな)。それはともかく、G2勝ち馬とG22着馬しか来てくれなかったJCダートより、こちらのメンバーの淋しさの方が深刻といえば深刻で、モンジュー、シンダール、カラニシ、ジャイアンツコーズウェーといったA級が抜ける(カラニシは現役続行とか)と、第2グループはこうも貧弱になるかというのが率直なところだが、実はこういう豪華な上着1枚めくったところの貧弱さというのは芝2400mのこの路線でもう3〜4年は続いていること。エルコンドルパサーの快挙もその流れに沿ってのことだし、エアシャカールの森調教師も“キングジョージ”が“取れそう”なタイトルだから遠征したのだと思う。なら、テイエムオペラオーは断然。シンボリルドルフ以来、最も強い馬が1番人気になって勝つというシーンが濃厚だと思う。とは思うが、少なくとも日本馬だけのレースよりは全体のレベルが高くなるし、そういうメンバーでパンパンの良馬場での争いになると、モンジュー同様(同じサドラーズウェルズ系というだけやが)、何かに弱点を突かれる可能性はなきにしもあらずで。京都大賞典で33.3秒で上がってる馬に時計面でどうこういうのはナンセンスな気もするが、2400mを2分22秒で走る能力と、2400mのレースで上がりを33秒でまとめるのとでは少し違う部分もある。モンジューが“キングジョージ”に勝って凱旋門賞に負けたのはそういう部分だ。

 マル外とか持込馬は別にして、ジャパンCに勝った内国産の日本馬はどれも日本に根付いた牝系から生まれている。最初に勝ったカツラギエースは祖母が英国産の輸入馬だったが、シンボリルドルフ、トウカイテイオー、レガシーワールド、スペシャルウィーク(さらに性差を考えればエアグルーヴも勝ったと同然)とここ一番で日本代表らしさを示したのは日本で代を重ねて日本の競馬で育った血統だった。そうなるとアグネスフライト。祖母はオークス馬、母が桜花賞馬でオークス2着で、そこにサンデーサイレンスの配合なら、決め手、スピード、底力など全ての面で東京2400mに最もふさわしい資質を備えているといえ、その牝系には、アメリカ血統のヨーロッパ代表よりよほど伝統的欧州的2400m血統といえる要素が強い。東京2400m、ニューマーケット6F、京都1600mと続いた今年のアグネス旋風の締めは、やはり長浜=河内のこの馬こそふさわしい。

 エアシャカール。世代レベルが疑問視される現4歳だが、マイルChでは1、2着を占めたし、フリーハンデにおけるダービーのレートはひとつ上の世代より高い。世代全体のレベルはもちろん大事だが、トウカイテイオーやナリタブライアンなど、ずば抜けたトップは世代レベルで捉え切れないポテンシャルを持つのも確か。4歳のSS2騎はそういうタイプと思う。

 外国馬では、4歳、牝馬、芦毛、フランス、グレイソヴリン系と、JCでの穴の要素を散りばめた△レーヴドスカー(オスカルちゃうの、普通)。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2000.11.25
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