おまけ

 会場に到達してからずっと三つ実は不安そうに航の表情を伺いながらサーラの邪魔にならないようにしていた。そしてサーラが少ししたら目を覚ますといわれてほっと胸をな
でおろした。

「ありがとうございました…!」

 深々とお辞儀する三つ実を見て小さく微笑んだサーラはそのままぽちの様子を見に伺う。少ししてからそっと航の近くに座り、顔を覗き込む。程なく抱きつき大会となった頃、
航は目を覚ました。ほっとすると同時に目の前が涙で滲んでいくのが分かる。

「…小島くん、あんまり無理しないで」
「大丈夫…」
「怪我治ってないのに、ごめんね…」

 不安そうな顔で三つ実はそっと航の手を握った。それを見て航の口が開きかけたとき、一瞬車が急発進したような体の重さと同時に背骨にものすごい圧迫感がかかり、意識
が何度も飛びかける。すぐ横で三つ実が何か言っているのは分かるが、ものすごい力がかかっている関係でよく聞き取れなかった。そして急にその圧迫感が消えると同時に
華奢な三つ実の腕の中に航はいた。薄れゆく意識の中で、傷に触らないように彼女が抱きしめているのが分かった。

「小島くん、大丈夫?ねえ?」

 三つ実のその言葉を最後に航は完全に意識を手放した。

「小島くんーーー!!」

 このときの航は分からないでもないが、怪我のせいで血が足りないのもあった。しかし、その時首ががくりと落ちたように気を失った為、三つ実は軽いパニックになっていた。
騒ぎに気づいたサーラが駆けつけ、彼女の指示に従ううちに三つ実はだんだん冷静になっていった。すぐさまぽちがいる部屋とは違う、会場の隣の部屋で航を横にさせ、サー
ラから危険はないと言われてからずっと航に付きっきりになっている。苦しそうにしていないか顔を覗き込み、時々航の頭をなでる。そうしているうちに怪我した人を無理に連れ
てくるんじゃなかったとどんどん後悔の方向に思考が持っていかれ、軽い自己嫌悪になる。

「どうしたの、先生?」

 そう呼ばれて三つ実は我に返る。なぜか航は三つ実のことを「先生」と呼ぶ。本人も何度も否定はしているが、これにはある程度割り切ることにしたので今は気にしていな
い。

「…気がついたの?小島くん」

 航の顔を見ると、まだ顔色は悪いものの、どこか小さい子をあやすような優しい顔をしていた。

「よかった…」
「キスでもしたくなった?」

 思わぬ航の一言に三つ実の顔が真っ赤になる。自分自身でも軽いパニックになっているのがよく分かる。

「…ええと、その…返事に困る…」

 必死に言葉をつむごうとするが、どんどん声が小さくなる。それを見て航は微笑むと再び目を閉じた。

「小島くん?」

 三つ実が呼び返すも、航の静かな寝息だけが聞こえる。

「あ…」

 結局言葉を紡げなかった自分に対して軽い自己嫌悪になる。それでも時折、思い出したかのようにそっと航の頭をなでる。そしてまた自己嫌悪になるというのを繰り返してい
た。それからしばらくして、三つ実はふと自己嫌悪からあることを考えた。今の自分は航にとってどういう存在なのだろう。航にとって自分は必要とされているのか、ただのおせ
っかいな人なのか。それがいつの間にか航をより危険な目に合わせるのではないか。それと共になでていた手も止まる。そしていつの間にか航の顔を見ることをやめた。その
時、涼華が持ってきた二人分の料理が目に入った。それを見て三つ実は少しだけ勇気をもらえたような気がした。いつになるかは分からないけど、今度は一緒にみんなで楽し
みながらご飯食べ、話をしたいと思うようになってきた。そのために自分が何をするべきなのか。

「…」

 少しだけの勇気で自分に出来ること。それは―

「…死んだら嫌だよ…小島くん」

 そっと耳元でそうつぶやくこと。覚えていなくても、いつかそれが叶うことを信じて。


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感想
ごめんなさいごめんなさい。話に整形したら台詞カットよりフォローが足りないからと言ってでしゃばってしまいました。ごめんなさいごめんなさいごめんな(以下延々と




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