終わった頃、家に遊びに来ていた。 「ハツモウデ…ですか?」 冬休みに入ってから年末の忙しさに翻弄されていたクラレットも、聞きなれない言葉に聞き返していた。 「はい。私の友達と一緒に明日初詣に行こうと決めているんです。だから一緒にどうかなって思ったんです」 「あの、アヤ。ハツモウデって何ですか?」 その質問に対して、アヤは簡単にまとめて答える。元々、二人とも物事をよく考えているほうだからか、雰囲気が似ているのか、結構休みの日は二人や、綾の友人達と出か けている機会が増えている。それだけでなく、たまたまクラレットがこの世界にきたところに居合わせたこともあり、あまり綾も追求はしない。とはいえ、クラレットの話は興味が あるらしく、今みたいによく勇人の家に来ては話をしている。 「けど、やめた方がいいんじゃないか?」 ジュースを持ってきた勇人がさっきの話が聞こえていたため、そう答える。 「え、どうしてですか?」 「ほら、クラレットって人込み苦手だし」 「あ…」 勇人に言われて綾も気がつく。リィンバウムにいたときからクラレットは人付き合いがちょっと苦手でフラットでも距離を置いていたことから勇人もクラレット自身もよく分かって いる。実際、彼女の日用品を買いに街へ出た時、その人の多さに酔ってしまったほどだ。 「あの、そんなに多いんですか?」 「うん、初詣はいつもの倍以上の人が集まるし…」 「あ、でも、学校の裏の神社なら大丈夫じゃないでしょうか」 思い出したように綾が口にする。確かに、勇人達の通っている学校の裏には小さな神社がある。しかし、それでも花見の季節や地域の盆踊りで使われる手いるため当日の 人通りは多いはずである。 「うーん、時間が問題だよなあ」 実際勇人はその日の午後には新年早々バスケ部の試合がある。綾も友人の一人は中学の時からの付き合いであるバレー部の女の子の話から抜け出せなけれれば時間 が延びてしまうため、そんなに時間は割けない。 「でも、せっかくだからみんなで行きたいよな」 「そうですね。私も早めに切り上げるよう努力はしてみます」 翌日、日が昇る2時間前からクラレットは綾に呼ばれて彼女の家に来ていた。三人が出した結論は早い時間に出かけるということだった。 「どうです?なかなか似合ってますよ」 「そうでしょうか。でも、ちょっとお腹がきついような」 クラレットは綾と一緒に振袖に身を包んでいた。クラレットは淡い朱を基調とした、綾は水色を基調とした振袖である。 「最初はそう感じるんですけど、時間が経てばなれますよ」 着慣れない着物に戸惑うクラレットに綾が優しく答える。綾自身は何度か振袖を着たとこがあるのでその経験から答えている。 「さあ、そろそろ家を出ないと間に合いませんよ」 気がつけば、既に日の出の30分前になっていた。いそいそと家を出ると、勇人以外にもボーイッシュな同年代の女の子と勇人・綾の後輩であるエミとカツヤの姿もあった。 「お待たせしました」 毎年恒例とも言える綾の振袖姿に、友人の女の子とエミは簡単に褒める。一方のクラレットは… 「あの…どうでしょうか…?」 着慣れていない振袖であるため不安と気恥ずかしさがあるようで、自然と上目遣いで勇人をみる。 「う、うん。似合ってるよ」 一瞬クラレットの意外な表情にどきりとし、自分でも顔が赤くなっているのが分かる。 「それでは行きましょうか」 以外にも照れている勇人を横目に、クラレットは少し安心した表情を見せていた。 学校裏の神社につく頃、ゆっくりと夜が明け始めている。たどりついた頃には人で溢れだしているものの、クラレットには耐えられる範囲内だった。そこにいる人達は神社のほ うではなく、明けはじめている空を見ていた。 「何とか、初日の出には間に合いましたね」 そう綾が勇人たちに声をかけたとき、空の一点が強く輝きだす。それを見て勇人たちは願掛けをしているが、クラレットだけはその光をずっと見詰めていた。 (いつも見ている光のはずなのに、どうしてこう違って見えるのだろう…) 「不思議ですね」 誰に向けるでもなく、言葉が漏れる。その言葉は全員同じだった。だから誰も何も言えなかったのである。 「さあ、初詣をしましょうか。クラレットは何をお願いするか決めてますか?」 「ええ」 (私の願いはもう始めから決まっています) た。ハヤクラでお正月ネタをやるならアヤを絡ませると面白いかもと思っていましたが、うまく活かせなかったのが反省点です。ちなみにナツミもいるのですが、今回はハヤトの 学校の顔見知りなキャラだけと決めていました。ただでさえまとめられないのにそこまで喋らせる余裕がなかったのです。 そしてお正月といえば…というより1月といえば振袖姿の女性をよく見る時期のひとつですので普通に初詣に行くより白鳥ボイスの二人に着せちゃおうという理由です。現在 ネットでも放送されているあかほり氏のとある作品で白鳥さんのキャラは普通に着物を着ていたという単純な理由なんですが…(汗
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