もみがらの悪夢Part2

もみがら・・・イネの花弁にあたる器官。英語では husk 。
前回
産業廃棄物のレッテルを貼られてしまったもみがら。
果たして彼に生きる道は残されているのか?

ところがそんな偏見の目で彼らを見ると、思わぬ逆襲にあう。
1つ1つを見れば数ミリの粒にすぎない。指で挟めばプチっと音がして砕けてしまうか弱い存在だ。しかし彼らは集団となったとき、その牙を我々にむける。

その1 ほこり攻撃
彼らは肉眼では見えない無数の微粒子を表面に身にまとっている。なにもしないときはだまっているのだが、人間がちょっかいを出してかき混ぜたり、上から落としてしまったりすると飛散し、口、鼻、目に容赦なく進入してくる。

その2 チクチク攻撃
体内に進入した粒子は気管にとどまり、イガイガした不快な感触を我々に与える。ちょうど、ビックスヴェポラップにでてくるエヘン虫のように。それだけにとどまらず粒子は首からも進入し、首筋から背中までチクチクとした刺激を与え続ける。これはお風呂に入って洗い流そうとしてもなかなかとれない。
約半日にわたって彼らの逆襲は続く。

この攻撃を避けるには、長靴、長袖、長ズボン、それにマスク、ゴーグル、合羽上下、そして首にタオルを巻き、彼らにつけ入る隙を与えてはならない。中途半端な装備で望むと必ず泣きを見る。
引用文献 動物のお医者さん第?巻 第?話 (マウスを飼うときに使う木のチップを集める話し)

こんな攻撃を避けながら、なんとか彼らにも生きる道を与えなくては・・・

その1 くん炭
Part1でもみがらは焼却処分されていると書いたが、くん炭もこれに近い。ただし焼却処分の場合はまっさらの灰になるまで燃やすが、くん炭の場合は真っ黒な炭の状態までである。用途は土壌改良資材である。土と混ぜて空気が入りやすいようにする、酸性になりがちな土のpHをあげて生育に最適なpHに調整するなどの目的で使用する場合が多い。また、分解するときに多量の窒素を必要としないので、畑や田んぼに戻してあげても問題ない。産業廃棄物が一転して優等生になったぞ。
ところがこのくん炭、火を付けて放っておいてもなかなか中まで燃えないし、かと思えば表面は灰になってしまうしで作るのがめんどくさい。作るには特別な道具が必要だし(大それたもんじゃないけど)、労力をつぎ込んだ割には見返りが小さい。プランターでの家庭菜園程度だったらできるけど、10a、1haと面積が広くなったらとても無理だな。

その2 堆肥
牛や豚といった家畜の排泄物と混ぜて堆肥とする。
堆肥には生に近い未熟堆肥と、熟成がすすんでほとんど土と変わらない状態の完熟堆肥とがある。普通、畑や田んぼに入れる堆肥は完熟したもので、未熟は入れない。未熟堆肥には植物が吸収できないばかりか、生育に悪影響を及ぼす窒素が含まれているので、しばらく雨ざらしにしてこの「毒」を抜き、熟成を進める。

ではこの未熟堆肥にもみがらを入れるとどうなるか?

「毒」となる窒素がもみがらの分解に利用され、すばらしい堆肥ができるのだ。できた堆肥をまた田んぼに戻してやれば、土も肥えるし肥料を減らすこともできる。これを考え出した人は偉い!日本の先人たちを尊敬してしまうよ。
しかし悲しいかな、家畜を飼いながら米も作り、両方で儲けながら堆肥をまた田んぼに戻すことができる人は激減してしまった。畜産業は衰退し、稲作は機械化が進んだので家畜はいなくなり、堆肥を自分の家で作れなくなったのだ。それに肥料は化学肥料で事足りてしまうという風潮になっている。いま、この辺が見直されてきてはいるけど、全体としては微々たるものである。
やっぱり厄介者なのか?

その3 断熱材
もみがらは断熱効果が高い。これは江戸時代から知られているらしい。
冬にできた氷を富士山麓の洞窟に保存し、夏に江戸へ持ってきて将軍に涼を与えた(と記憶しているけど、知ってる人は教えてー)という話があったらしい。輸送中はわらともみがらで覆って溶けないようにしていたとのことだ。やっぱり先人は偉い!
実際もみがらの断熱効果は身を見張るものがある。
今年は暖冬といいながら、最近の天気で除雪した雪が山積みになっている。しかし4月にもなれば雪山も小さくなり、本格的な春を迎える。その雪山が10m×10m×3mだと仮定しよう。それに厚さ20cm程度になるようにもみがらをかけ、雨が入らないようにシートで覆ってみよう。すると・・・あーら不思議、真夏のお盆まで雪が残ってるよ。シートだけしかかけていないと6月には跡形もなくなるというのに。この断熱性は見逃せないな。
けどこのままいくと、雪が溶けたあとにはもみがらがそのまま残ってしまう。処分が先送りされただけで、根本的な解決にはなっていないぞ。どうする、どうする?

やっぱり産業廃棄物としての道を歩むしかないのか?
環境問題が取りざたされる中、焼却処分も禁止されてしまうかも・・・
そうすると昔に戻って、堆肥にするのが現実的か?

誰か、良いアイディアを教えてください。

もみがらの悪夢Part3はあるのか?