もみがらの悪夢

もみがら・・・イネの花弁にあたる器官。英語では husk 。
現代の稲作では稲を刈り取り、脱穀機で種子と茎葉とに分け、種子を収穫物としてタンクに貯める。残った茎葉はカッターで切断して田んぼに返し、次の作付けの栄養分とする。これら一連の作業はコンバインがやってくれる。
そしてイネの種子からもみがらを取り除いたものが玄米であり、玄米からぬかをとったものが白米となって我々の口にはいる。ぬかは漬け物をはじめとした加工食品によく使われるが、ではもみがらはどうなっているのだろうか?

このもみがら、取り扱いで分類すると産業廃棄物である。
八郎潟は周囲がすべて水田なので、秋に大量のもみがらがでる。しかしほとんど利用価値のないもみがらは、ほとんどが焼却処分されているようだ。八郎潟に秋に釣りに行ったことのある人は気が付いているだろう。あちこちから煙が立ち上っているのに。
田んぼのど真ん中だったらまだ気にならないかもしれない。しかし釣りをしているそばや、幹線道路のすぐそばでもみがら焼きをやられるとたまったものではない。煙くてのどが痛くなるわ、地吹雪のときのように吹き溜まりになって道路をふさぐわで、大変困りものである。しかも堆積したもみがらには空気のはいる隙間がほとんどないので、一気に燃え上がることなく、いつまでもくすぶって長期にわたり被害を及ぼす。

まったく困ったもんだ。

そんなんだったら、もみがらをわざわざ焼却しないで、田んぼにまき散らしちゃえばいいのにと考えるのは当然だろう。
ところがどっこい、世の中はそんなにうまくいかない。
もみがらは自然分解するのに時間がかかる。それだけでなく、分解の途中で、生育にダイレクトに影響する土壌中の窒素(N)を多量に消費するのだ。
ということはどうなるか?
次の年のイネの生育が悪くなってしまうのである。これは稲作農家には死活問題である。

足りなくなった分を化学肥料で追加するという方法で解決できそうな気もするが、これがまた難しい。

今までその田んぼの特徴、天気、生育に合わせて肥料を追加していた経験が全く役に立たなくなるため、どれぐらいの窒素を追加してやればいいのかわからないのだ。
生育が悪ければ収量が少なくなり、収入も落ちる。かといっておいしいお米が重視される昨今、窒素がわずかでも多いと食味がガタ落ちになり、品質や産地としての信頼を失って全国的評価が下がり、収入も落ちる。

そんなリスクを背負ってまで、田んぼにもみがらをばらまこうとする農家はいないだろう。

こんな厄介者のもみがらも、まだ役に立つことがある。
まず水田の暗渠(あんきょ)排水。無数の穴が開いたでっかい塩ビパイプにもみがらを充填し、水田に埋め込む。こうすることによって、排水がよく、かつ水持ちもよい田んぼとなるわけだ。よく基盤整備事業(面積の小さい田んぼをまとめて、同じ規格の大きな田んぼにしてしまう)が行われているところでは目にするだろう。

他には・・・うーん、あまり思いつかない。やっぱり産業廃棄物としての道を歩むしかないのか?
以前クルミ殻入りのスタッドレスタイヤが持てはやされたときがあったが、もみがら入りスタッドレスなんてどうだろうか?

誰か、良いアイディアがある人は教えてください。

もみがらの悪夢Part2につづく